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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
95/156

no.95

 沙耶と並んで歩く。

「はぁ~、着物着せてって思わず言ったものの、これって苦しいよねぇ」


「そう? でも綺麗だよ、アリス。なんだかすっごく大人っぽい」

「えっ?」


 ちょっとドキッとした。

 大人っぽいなんて言われると思い出してしまう。


「さ、沙耶も素敵。苦しくない?」

「私はお花のとき、いつも着るから」

「あっ、そうか」


 神社が近づくと沢山の人。

 紛れてしまいそうでちょっと怖い。


「こんな沢山の人が来るんだね」

「ほら、掴まってろよ。おまえ、迷子になりそうだから」


 なんかちょっと言い方が冷たいような……。

 でも私は宮川の腕にしっかりとしがみ付いた。


 後ろを振り返ると沙耶と沖野は手を繋いでる。

 4人で初詣して、おみくじ引いて、屋台のお汁粉食べて……とっても楽しい。


「アリス、私達、この辺で……」

「えっ? もう帰っちゃうの?」


「悪いね、アリス」

 沖野がすまなそうに言った。


「ごめんね、アリス。また電話するから」

「う、うん。それじゃね」


 沖野と沙耶は帰っていってしまった。

 朝まで一緒にいたかったんだけどなぁ。


「俺達も帰るか?」

「やだ、もっといたい」


 結局、屋台なんかを見て回ったりして随分時間が経ってしまった。

 でも気になるのは宮川の機嫌。

 どうも家を出たときから悪い感じ。


「先輩、なに、怒ってるの? お酒、取っちゃったから?」

「そんなこと怒ってねーよ」

「でも、不機嫌だよ」


 それにずっと私の方を見てくれない。

 せっかく先輩の為に着物着たのに……。


 手の中にあるくじで当てた小さなぬいぐるみ。

 見つめていたら、涙が出そうになった。


 頭を振って、我慢する。

 こんなところで泣いても仕方ない……。


 いきなり宮川が手を掴んで歩き出した。

「な、なに、先輩……」


 こぼれそうになっていた涙を拭いて、着いていく。

「先輩、痛いよ。どこに行くの?」


 神社の駐車場を抜けて、人気のない公園に入った。

 まだ暗くて怖い。


「先輩ってば!」

 引っ張られていた手に力を込めた。


「私、やだ、帰る!!」

 後ろを振りかえる。

 今度は後ろから抱きしめられた。


 なんなの?

「アリス……」

「先輩、どうしちゃったの?」


 さっき怒ってたかと思ったら、今度はいきなり抱きしめて。

 なんだかわからないよ。


「アリスがこんな色っぽい格好するから……」

 えっ?


「着物なんて着てくるから……まっすぐ見られなくなった。俺、ヘンになりそうで……」

 先輩……。

 首筋にキスされた。


「このまま帰りたくないんだ。どこか……二人で……入ろ……」

 それってホテルとかのこと?

 私が返事をしないでいると。


「アリス……ホテル、行こ」

「いやっ!」


「なんでだよ、俺、もう……」

「嫌だよ、ホテルなんて……」


「いいから、来い!」

 今度は腕を掴まれて引っ張られた。


 なに、そんなに強引になってるの?

 嫌だよ、そんなの。


「先輩のバカ! こんなの嫌だよ。離して!!」

 無理やり振りほどいたから、かなり痛かった。

 ハァハァ……。


「アリス……」

「いや!!」

 涙が溢れてきた。


「わりぃ、俺、やっぱりヘンだよ。ごめん……」

 暗くて宮川の表情は見えないけれど、声が震えてる。


「私……着物、自分で着れないの……着れないもん! 帰れなくなっちゃう……」

 そう、ホテルが嫌なんじゃなくて、着物だから……。


「ごめん、そうだよな。俺、ごめん」

「うん……」


「そこに座ろう。落ち着いてから帰ったほうがいいだろう……」

 涙がまだ止まらなかった。


 ベンチに腰掛けた。

 宮川は自分の来ていたコートを脱いで私の膝の上にかけてくれた。


「先輩、大丈夫だよ。先輩、風邪引いちゃうから着てて」

「いや、いい」


 しばらく黙ってふたり座っていた。

 遠くで初詣の人達の声が聞こえる。


 元旦にこういうのってちょっと寂しいかも。

 1年のスタートなのに……。


 落ち着いてきた涙がまた込み上げて落ちる。

 やだ、先輩のコートに落ちちゃった。

 慌てて拭く。


「アリス……ごめん。もう泣かなくていいから。アリス……」

「うん……」


 またしばらく二人なにも話さないまま、時間が流れた。

 東の空が明るくなりだした。

 いつの間にか公園の街灯が消えている。


「帰ろう。風邪引いちまう……」

「うん、これ、はい」


 コートを返す。

 肩に掛けてくれようとしたけれど、それを止めた。


「私、着物だから寒くないよ。先輩、風邪引いちゃ嫌だから、お願いだから着て」

「ああ、わかったよ」


 二人は何も話さず、家に着いてしまった。

「俺、部屋でちょっと頭冷やしてくるから」

 宮川はまっすぐ部屋に行ってしまった。

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