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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
94/156

no.94

 ******



 それから数日、なにも変わらない日々が続いた。

 ママたちも特に旅行中のことは触れなかった。

 私達も何もなかったかのように振舞うことに慣れていく。


 今年もあと残すところ2日となった。

 沙耶から電話があって、一緒に初詣に行こうと誘われた。


「先輩、明日、沙耶が一緒に初詣行こうって。いい?」

 部屋で本を読んでいた宮川に話す。


 本から視線も上げずにコクンコクンと首を縦に振った。

 ずっと本に夢中なの。

 ちょっとつまらない。


 でも明日は一緒に初詣行けるもんね。

 沙耶に感謝。


 私はパタパタと下に降りた。

「ママ~っ!」

「なぁに、騒がしいわね」


 ソファでやっぱり本を読んでいるパパ。

 でも大きな辞典のようなもので、小説とかじゃないみたい。


 ママがキッチンから出てきた。

「ね~っ、ママ、着物着せて」

「えっ?」


「沙耶が一緒に初詣行こうって。だから明日夜着せて!」

「ええっ、いいわよ。去年買った着物、まだ袖を通してなかったものね」


「きゃ~~~っ、楽しみ!」

「やっと着てくれる気になったのね。パパ~」


 と、ママは本を読んでいたパパの横に座った。

 な、なによ……。


「寂しいわよねぇ。やっと着物着てくれるって思ったら、もうママたちと一緒に過ごしてくれないのよぉ」

 う゛……。


「こら、止めなさい。ママ」

 腕に抱きついているママの腕を外してるパパ。

 顔、赤いよ。


「だって寂しいもの」

「いいじゃないか。若いものは若いもの同士で」


「じゃ、パパとママでふたりのお正月しましょ」

「旅行は嫌だよ、この前行ったばかりだ」


「わかってるわよ。アリス、初詣したら早く帰ってきてね。一緒にお雑煮食べましょ」

「はぁ~い」

 パタパタと自分の部屋に戻る。


 考えてみたらお正月に着物着るのって何年振りだろう。

 小学生のころはママに言いくるめられて着せられてた。


 でも中学になってからは嫌だって言って着なかったんだよね。

 せっかく買ってくれた着物も着られなくなっちゃったのもあるのかなぁ。

 ごめんね、パパ、ママ。



 ******



「ママ、く、苦しい……」

「でもこのくらいにしておかないと着崩れしちゃうから。あなた、自分で直せないでしょ」

 そりゃそうだけど胸の下が苦しい……。


「こっちに来てちょっと座って」

 言われるまま、鏡台の前に座る。


「髪、アップにしましょうね。そのほうが素敵だもの」

「え~、いいよ、面倒」


「だめよ、せっかく着物着たんだから」

 ママは言い出したら聞かない。

 言うこと聞いて髪のセットもおとなしくしてもらった。


 髪をアップにして、髪飾りを着ける。

「う~ん、お正月って感じ」


 ゲプッ。


「アリス!」

 早めに食べたおそば。

 ちょっと食べ過ぎちゃったかな……。


「もぅ、素敵に着飾ってるのになんですか、はしたない!」

「だってぇ~」

 苦しい……。


「もうそろそろ沙耶ちゃん達来るかしらね。下に行ってましょ。宮川君も待ってるから」

「うん」


 でも……これはちょっと歩きにくいなぁ。

 階段なんて特に……。


 リビングに行くとパパと宮川はなんとお酒を飲んでいた。

「あららっ、残されて寂しいからってパパに熱燗入れたら……」


「先輩!」

「少しだけだよ」

 宮川はおちょこを持って言った。


「少しだけもなにも今から出かけるんだから……」

「アリス、宮川君は結構強いな。大丈夫だよ。酔うほど飲ませないから」


 当たり前よ。

 高校生なんだからね。

 まったく……。


「もう、だめ!」

 私は宮川からおちょこを取った。


 ちょっとムスッとした顔を見せる宮川。

 怒ったってだめだも~ん。


 そのとき玄関のベルが鳴って、ママが出ていく。


「先輩、お水飲む?」

「いや、いいよ。ホントにそんなに飲んでないから」


 そう言ってそっぽを向いてしまった。

 なによ!


「まぁまぁ、沙耶ちゃん、素敵よ。かわいい」

 ママの声が聞こえる。


「沙耶、来たみたいだな。行くか」

「うん」


「じゃ、お父さん、行って来ます」

 宮川が立ち上がった。


「ああ、気をつけて」

 ぞうりが掃きにくいだの、なんだのと大騒ぎして家を出た。

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