no.87
「ほれ、こっちはあったかいからこれ、いらない!」
そう言って握り締めていたガウンを取られてしまった。
慌てて胸を隠す。
ブラしてないんだよ~~~。
襟が大きく開いてて、肩紐見えちゃうものだからつけてないんだよぉ。
「上隠しても下、透けてる……ぷっ」
きゃ~~~~~~~っ、パンティ透けてる!
慌ててしゃがみこんだ。
ふぇ~ん。
もう、もうこんなの着なきゃよかった。
恥ずかしいよぉ。
「隠すなよ。せっかく綺麗なのに」
綺麗って言われても……。
「こっち来て座れよ。コーヒーもう一杯入れといた」
マグカップから湯気が立ち上っていた。
私はハイハイの格好で宮川の横まで行くと隣に座った。
体の水分、目一杯蒸発しちゃった感じ。
コーヒーはもらおう……。
マグカップを両手で持ってフーフーッ。
あったかぁ~い。
コーヒーを半分くらい飲んだとき、髪に触れられた。
ドッキン。
「マ、ママたち、今頃どうしてるかな」
「温泉でも入ってんじゃねーか」
はぁー、髪、離してくれた。
「いいな、温泉。あのね、ママたちってあまり旅行とかしてないから、楽しんでると思うよ。私が出かけるの嫌がったから、ママたちも行かなくて。ママたちだけで行ってくればって言っても、私だけ一人になっちゃうからって行かなくて。別に旅行が嫌いだったわけじゃないけど、私ってひねくれてたのかな……」
「アリス……」
「えっ?」
「俺がこれからいろいろ連れてってやるよ」
ま、また髪に触れられて……もうドキドキとまんない。
マグカップ持ってる手が震えて……。
髪にキスされた。
神経通ってないよね。
で、でも……熱いよ。
すごく。
宮川は私の手からマグカップを取って、テーブルに置いた。
な、なんか……やっぱり、これはまずいかも……。
「アリス……」
半分閉じた目で見つめられた。
ど、どうしよう……。
「アリス……」
キスされて、ドキドキが激しくなって……。
抱きしめられて耳にもキスされた。
「先輩……」
「今夜はこっちでいいだろ……」
「えっ?」
「俺の部屋で一緒に寝たい」
……それってもしかして……。
私の部屋は一緒に寝るだけ……で、こっちは違うんだったよね。
ということは……もしかして……。
もう頭の中、パニック。
「まだだめなのか? 俺、もう限界なんだ……」
抱きしめられたまま、耳元で言われて、体中に電気が走るみたいで……。
「だめ?」
ダメじゃない。
ただ、少し怖い?
よくわからない。
頭を思いっきり振る。
「ダメなのか、わからないよ。アリス」
声が出ないよ。
胸の前にあった手を宮川の体に回した。
頬から伝わってくる宮川の鼓動。
とっても早いよ。
「アリス……いいの?」
「……うん……」
やっと声が出た。
ずっと怖かった。
今も怖いのかもしれない。
でも嫌じゃない。
そうなってもいいと思ってる。
抱きしめられたまま立って、宮川はベッドの掛け布団をよけてからそこに私を座らせた。
恥ずかしくて顔が上げられない。
パサッと足元に宮川のパジャマの上が落ちた。
きゃ~~~っ。
横に座わられて顎に手が触れる。
ビクッ。
体が勝手に反応しちゃう。
「アリス、愛してるよ」
愛してるって始めて言われた……。
好きとなんだか重さが違って思えるのは気のせいかな。
キスされてそのままベットに倒れた。
ゆっくりとひとつひとつ確かめるみたいなキス。
額に瞼に頬に唇に……。
あったかくて柔らかい唇。
触れられる毎に体は熱くなって……。
ネグリジェのボタンに手がかかって……。
「せ、先輩、消して、電気……」
「いやだ……」
でも、明るいと恥ずかしいよ。
ボタンが外されていって……。
「先輩、消して!」
「アリスを見てたい」
「でも……こんな……明るいの……やだ」
キスが続いて、苦しくなってきた。




