no.85
******
やっと家に戻って……。
「ママたちいないと静かだねぇ。もう向こうに着いたかな。途中で食事していくって言ってたけど」
「どうだろうな」
私はもらった花束を花瓶に入れた。
コポコポとコーヒーメーカーの音がする。
もうそろそろできるかな。
「あっ、先輩、疲れたでしょ。部屋に行ってていいよ。今、コーヒーできたら持っていってあげる」
「ああ」
私は花瓶をリビングのテーブルの上に置くと、コーヒーを持って宮川の部屋に行った。
「コーヒー持ってきたよ。どうぞ。私着替えてきちゃうね」
「もう少しそのままでいれば」
「えっ」
「めったにこんなカッコできねーだろ」
「う、うん。そうだね。私も先輩のかっこいい姿、もっと見てたいもん」
「ブァーカ」
えへへへっ。
宮川は棚に並んでいたCDの1枚を引っ張り出した。
「聴く?」
「うん」
始めてだなぁ。
こうして二人で音楽聴くのって。
たくさんCD持ってるんだ。
「これ、俺、好きなんだ」
静かに流れはじめた音楽。
なんだかクリスマスって感じの……。
「山下達郎のなんだけど、クリスマス用に作られててさ」
「あっ、英語なんだ」
「ああ」
うわぁ、素敵。
あんまり音楽とか聴かなくて知らなかったけど、いいなぁ、こういうの。
私が聞きほれていると隣に座った宮川はガサガサ。
「旅行券……」
「ああ、一年間有効だってよ。そのうち行ってみる?」
「……うん……」
「これはなんだろーな」
そう言って高田が渡してくれたプレゼントを開け始めた。
ワクワク。
でも途中で宮川の手が止まった。
「なぁに、それ?」
「いや……」
慌てて今破いた包みに隠したりするから、気になった。
「ね、なに? 私にも見せて」
「ダメ! あっ、いや、なんだ、これは……」
「えっ?」
「だからおまえは見なくていい」
そう言って背中を向けちゃったから、もっともっと気になって……宮川の後ろから手を伸ばした。
「見せてぇ~」
「こら、ダメだってば、おいっ」
「や~っ、私も見たい!!」
「アリス、やめろ」
「捕まえた!」
宮川の手を押さえて持っていた箱を取った。
後ろから宮川に抱きつくような格好になっちゃったけど、しっかり取れたもんね。
宮川の肩に頭を乗せて手にある箱を見る。
宮川がフッと下を向いたものだからさらっと髪が頬に触れる。
後ろからだから表情が見えない。
隠すようなものなの?
はて、これはなに?
薄っぺらな箱。
英字が並んでて……。
「なに、これ?」
後ろをひっくり返したり、表を見てみたり。
始めてみるものだ。
「おまえ知らないの?」
「始めてみた。これ、なに?」
箱を開けようとしていきなり手を掴まれた。
「ば、ばか、開けるな!」
「なんで……」
「……」
「手、離してよ」
「……だよ」
「え?」
「コンドームだよ、バカ!」
ひ、ひぇ~~~~~~っ!!
箱を放り投げてしりもちをついた。
は、始めて見た。
「ったく、あいつら、よくも……」
あ~っ、びっくりした。
や、やだなぁ、知らないとはいえ、持っちゃったじゃない。
慌ててコーヒーを飲んだ。
はぁー。
先輩たちってばとどめにこんなことしてくれて。
許さないんだから。
あー、ドキドキ収まらない。
ところでなんで先輩はわかったんだ?
「先輩、なんで箱でわかったの? 持ってたりして……」
しんとしちゃって気まずくて、変なこと言っちゃった。
「ああ」
「えっ? ええ~~~~~っ!!」
「お父さんにもらった」
「な、な、なんでそんなものっ。いつ、もらったのよぉ~~~っ!!」
「キャンプ帰って来た日……」
うん?
そういえば二人で飲んじゃって、パパがなにか先輩に……今の箱のようなものだった……。
パパってば、パパってば!!
まったく男ってば!!
……。




