no.80
私は思いきり頭を振った。
「先輩が話したいと思うこと、全部話して。私聞くことしかできない。でもこうしててあげるから」
「ありがとう、アリス。……ひとりになっても寂しいって感覚はなかったな。無償に自分の力のなさを感じるばかりで。学校に行かないでぶらぶらして悪い仲間とつるんでたって、俺の中の気持ちは消えなくて。そんなとき、沙耶が度々来るようになって、鬱陶しいくらい世話焼いてさ。俺より小さいくせにって。でも……沙耶に言われたんだ。死んだのは俺のお袋だけど、沙耶のお袋でもあるって。あいつが始めて泣いたんだ。いっつも汚いだの、ちゃんと食べろだの、うるさいことばかり言ってたあいつに泣かれて。こいつも母親をなくしたんだなって。俺はお袋を守ってやれなかった。その上、こいつも守ってやれなかったって」
「……違うよ。守れたよ。お母さんのこと守れたよ。先輩が嘘ついてたこと知ってて黙ってたのは先輩がお母さんを守ってくれてるってお母さん気付いてたから。沙耶だって先輩の前で泣けたのは先輩が沙耶を守ってくれるって知ってたから。ちゃんと受け止めてくれるって知ってたから……先輩が守ってくれてるって知ってたから……守ってもらってることに不安があったら絶対そんなことしないよ。絶対に……」
「アリスってすっげーこと言うのな」
「だってそうだもん。そうなんだもん」
涙が溢れて……。
「泣ける場所って一番安心できるところだから……」
「そっかぁ……」
「そうだよ」
「アリス、ありがとう……」
「ふぇ、ふぇ……うぇ……」
「なんでおまえが泣くんだよ」
「だってここが一番安心する場所だもん」
「バカだな……」
バカでいいもん。
一番安心するあったかい場所なんだから……。
「冷えたな。帰ろう。せっかくのパーティーに風邪で出られなくなったら困るしな」
「うん」
私は涙を拭いて、顔をあげた。
「ずっと私の一番安心する場所でいてねっ」
「ああ」
「私、ずっと先輩に守ってもらうの。ずっとずっと。だから私より先に死んじゃダメだからね。ずっと私を守ってて……」
「ああ」
******
「ねぇ、ママ。これ派手だよぉ」
「そんなことないわよ。パーティーなんだから」
「でも……」
「これにしましょ、ね」
結局ママに押し切られて決まったドレス。
襟が結構開いててちょっと恥ずかしいんだよねぇ。
渋いけれど赤のオーガンジーで襟くりと袖口、裾に白いファーがついている。
いかにもクリスマスって感じのドレス。
小さな真珠があちこちに結晶の形につけられていた。
なんだか恥ずかしいなぁ。
ドレスのあとはそれに合う靴とアクセサリー類を買った。
それと私は宮川にママはパパにクリスマスプレゼントも買ってしまった。
「じゃ、そろそろ待ち合わせの場所に行きましょ。パパ達、きっともう待ってるわよ」
3階にある喫茶店に行く。
もう随分待っていたって感じでパパと宮川がいた。
「ごめんなさいね。待たせちゃって」
「ママのことだから待つのは覚悟してたよ」
パパにさらりと言われてしまった。
「ねぇ、先輩。どんなのにしたの?」
「あら、ダメよ、アリス。当日のお楽しみ。ね」
「え~っ、早く知りたい!!」
「ダ~メ!」
「しかし高校生でダンスパーティーか。なかなかやるね。ところで皆踊れるの?」
パパが言った。
「一応各クラス体育の時間1時間もらってダンスの練習してもらうようになってます」
「それはそれは」
「ママも行きたいわぁ。二人が踊ってるとこ、見たい」
「ダメ、ママ。今回のは生徒会主催で先生方も参加しないの。すべて生徒だけでやりましょうって企画なんだから」
「じゃ、パパ、ふたりでイブ、どこか行きましょうよ、ね」
「そうだね。それもいいかも」




