no.76
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そしてお弁当。
久々だなぁ。
ママの手作りお弁当。
「ねぇ、アリス。このお弁当ってママさんの手作りでしょ」
「うん」
「じゃ、お兄ちゃんも同じもの持ってきてるの?」
「そう。最初遠慮してたんだけど、ママが作るもんだから持っていくことになっちゃって」
「へ~っ、お兄ちゃんも同じの食べてるんだぁ。ウィンナーのタコくん」
「あははっ、ほんとだね」
きゃはははっ。
いつもと変わらない学校に本当にほっとした。
ひとつだけ、違っていたのは教室にいて、後ろが見れないこと。
そこには池上がいるってわかってるから。
怒ってるとか、そういうんじゃないけど、まだ顔を合わせたくないなと思ってしまう。
「お~いっ、アリス! 飯、食い終わったか?」
宮川の声がした。
ドアのところから教室を覗いてる。
「うん、終わった!」
「じゃ、来いよ」
「あ~い」
慌てて、ジュースを飲み干して教室を出た。
「話ってなに?」
「うん。ちょっと生徒会室行こうぜ」
「うん」
なんだろなぁ~。
何かあったのかな。
私のほうはなにも変わりなかったけど、もしかしたら宮川のほうは変わってたのかもしれないし。
生徒会室には誰もいなかった。
さすがに昼休みまでは皆来ない。
「座れよ」
「うん……」
「どした?」
「えっ、だって話って……、何かあったの?」
「あっ、わりぃ。心配するな。俺のほうもなにも変わっちゃいないよ。楽しくやってる」
「ホント?」
「ほんと」
「じゃ、話って何?」
「うん。ちゃんと決着つけなくちゃな。本当に楽しく学校生活送るために」
?
コンコン。
「入れよ」
えっ、池上君?
慌てて宮川の顔を見た。
「沙耶に頼んでここに来るようにって書いたメモを渡してもらったんだ。みんなに気付かれないようにな」
「失礼します」
「座ってくれるか」
宮川が言ったけれど、池上はいきなり床に座りこんだ。
「すみません。アリスを傷つけるつもりじゃなかったんです。ただ、俺、自分の気持ち、止められなくなって……。本当にすみませんでした」
「おい、椅子に座れよ」
妙に冷静に話す宮川が少し怖かった。
何かしちゃうんじゃないかって、不安でいつのまにか宮川の腕を掴んでいた。
「大丈夫だよ、アリス。心配するな」
優しくゆっくり言われて私は手を離した。
「俺は楽しく学校生活を送りたいだけだ。おまえがいることで不愉快になるのは嫌なんでね」
先輩……。
「俺、なんでもします。どうしたらいいんですか?」
池上が俯いたまま、言った。
「好きになった相手にその気持ちを押し付けたって、相手を傷つけるだけだってわかったろ? これからは相手の気持ちもちゃんと見てから、押し付けるんじゃなくて、わかってもらう努力をしろよ。あっ、でもアリスはもうだめだからな。他の女、捜せよ」
明るく言う宮川。
「会長……」
「それと一応、アリスに謝ってもらったほうが気持ちいいな」
「えっ、私、いいよ、そんなの」
「よくないよ。男のけじめだ。おまえもそのほうがすっきりするだろう」
「はい。アリス……ごめん。俺、本当にひどいことしたと思ってる。本当にごめん」
「アリス?」
「……うん、もういい。人を好きって気持ちはよくわかるもん。だからもういい」
「よし、いい子だ。さて、それじゃ握手してもらおうか」
へっ?
「ほら、アリスも来い」
引っ張られて池上の前に来てしまった。
「これで俺達に溝はできたりしない。楽しくやってこうぜ」
宮川と池上が握手した。
「じゃ、次はアリス、ほら」
「うん、これからもよろしくね、池上君」
「ありがとう。ありがとうございます」
池上君の涙が見えた。
池上が部屋を出ていった。
「私達ももう戻らなくちゃ」
「まだいいよ。8分ある」
くすっ。
「よかったな。これでもう気にすんなよ」
やっぱり私のこと気遣ってくれたんだ。
私が池上君のこと気になっちゃうってわかってたんだよね。
だからわざわざこんなことしてくれたんだよね。
「ありがとう、先輩」
隣に座ってる宮川の腕にしがみ付いた。
「……いや、別に……」
前髪を掻きあげた。
また照れてる。
「ね、先輩。もうひとつ話さなくちゃならないことがあるんだけど、ついでに話しちゃっていいかな?」
キッとこちらを向いた。
くふふっ。
「……おまえ、まだなにかあったのか?」
怖い顔して見つめる宮川。
くふふふっ。
「おいっ、ふざけてんじゃねーぞ。何があったんだ」
「えっとね、もうひとり私のキスを奪った人がいるの」
「っんだとぉ~~~っ!」
怒ってるぅ。
「ニヤついてんじゃねー。そいつはどこのどいつだ」
言っちゃっていいよね。
ふふふっ。
「こらっ、誰なんだ!!」
「……川上先輩……」
「えっ?!」
「だから川上先輩」
「か、川上……って……」
「だからいつもここに座ってる川上先輩」
「な、な、……」
「きゃ~~~っ、先輩がどもってる!」
「おいっ、ふざけたこといってんじゃねーぞ」
「嘘じゃないも~ん」
「こら、アリス、おいっ」
私は部屋から飛び出した。
そろそろ教室戻らなくちゃね。
「先輩、また放課後ね~」
「こらっ、待て、アリス!!」
なんだかとっても楽しいな。
学校って楽しいな。
仲間って楽しいな。




