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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
75/156

no.75

 ******



「おはようございます」

「おはよう」

 パパが新聞から視線をあげて言った。


「二人とも早く食べちゃわないと遅れるわよ」

「はい」

「はいっ」


 ダイニングに行こうとして背中で新聞の音がした。

 振りかえって、パパを見る。

 視線がばっちりあっちゃった。

 慌てて下を向いた。


「パパ、心配かけちゃってごめんなさい。もう大丈夫です」

「ああ」


 ダイニングから顔を出したママにも。


「ママ、ごめんなさい。もう大丈夫だから」

「よかったわね、アリス」

「うん」


 コホンッ。


「一番に礼を言わなきゃならない相手はおまえが手を握ってる相手だぞっ」

 背中でボソッとパパが言った。


 そうでした。

 まだお礼も言ってない。


「いえ、俺は……」

 宮川は前髪を掻きあげた。


「確かに立ち直るきっかけは昨日来た友達なんだろうが一番の薬は君が側にいることなんだろうね」

「はぁ」


 宮川が照れまくっている。

 顔も赤いよ。


「先輩、ありがとうございました」

 しっかり頭を下げた。


「や、やめてくれよ。もういいよ」

「さっさぁ、早くしないと学校遅れちゃいますよ」


 ママに言われて慌てて私たちは朝食にした。



 ******



「先輩、前にもこんな風にしてドキドキしながら学校に行ったよね」

「ああ、俺が風邪引いて……」


「うん」

「あの時は随分怖いって顔してたけど、今日は怖くない?」


「平気。先輩がいてくれる。沙耶も生徒会の皆も。もしかしたら何か噂になってるかもしれないよね。でもがんばれそうな気がする」


「よし、じゃ笑って行こう」

「はぁ~い!!」


 本当は少し不安だった。

 私のことより、謹慎ってことになってた宮川のことのほうが。


 でも学校に行ってみるとなにひとつ変わってなかった。

 周りの皆のいつもの冷やかし。


「おーっ、夫婦同伴でご登校ですかぁ」

「朝からお熱いですねぇ~」


 なんて、皆楽しんでる。


「いーだろー」

 それに答えてる宮川が横にいる。


 変わってない。

 なにも変わってない。


「アリス、一人で大丈夫か」

 昇降口で別れ際に宮川に言われた。


「心配性。もう大丈夫。ね」


 髪をなでられてふっと気持ちが甘えたくなりそうになったけど、それでもくいっと顔を上げて微笑んで見せた。


「よしっ、行け!」

「うん!」


 先輩だって教室行くの不安でしょ。

 喧嘩で謹慎なんてことになってたんだから。

 それなのに私のことばっかり。

 もう心配いらないからね。


 教室に入るともう沙耶が来ていた。


「アリス!」

「おはよう、沙耶」

「よぉ、アリス。怪我大丈夫かぁ」


 ……。


「また大騒ぎしてたんだろうなぁ」

「病院でがきんちょと大合唱してきたんだろ?」


「な、なんなのよぉ」

「いやぁ、見たかったなぁ」


 男子の冷やかし。

 いつもと変わらない。


「アリス、大丈夫」


 席につくと沙耶が心配そうに覗きこんだ。


「うん」

「アリス、額の怪我、もう大丈夫なの?」


 ……。


「ほ、ほら、アリス。額の傷見せてあげなよ。もうすっかり大丈夫なんだから」


 沙耶が言って、私の前髪を上げた。


「ほらほら、ここ。アリスってほんっとドジなのよねぇ。こ~んなとこぶつけてさぁ」

「ほんと、傷が残ってるけど、もう大丈夫みたいね」


 和美がまじまじと傷跡を見て言った。


「これだもんなぁ。旦那も目が離せないよなぁ。地が出て、パーフェクトだったアリスの欠片、なくなっちまったんじゃねーの」


「そうそう、もうちょっと、あのパーフェクトのアリスが残ってたら、階段から落ちるなんてドジしないよねぇ」


 わははははっ。

 きゃははははっ。


「や、やだなぁ。地のアリスはいっつも笑われてばっかり……」


 なんだかわからないけど、照れてしまう。


 ホームルームが終わった後、沙耶が教えてくれた。


 私が休んでいた理由は、階段から落ちて額に怪我したからってことになってたらしい。


 宮川の謹慎についても教えてくれた。

 学校側から謹慎が一度出たものの、1日で取り下げられたこと。

 だから噂にもならなかったこと。

 

 取り下げられた理由は池上が校長に「自分が怒らせるようなことをした。そうなるように仕向けてこうなったから処分を取り消してくれ」って頼んだとのこと。

 

 このことは沙耶と沖野、生徒会のメンバーしか知らない。


「アリスが元気になって来てくれて本当によかった」

「うん。沙耶、昨日は来てくれてありがとうね」


「ううん。私、ごめんね。お兄ちゃんが処分取り消しになってるのに学校に来ないからお兄ちゃんに電話したの。でもアリスと一緒に行きたいって。でもまだ会える状態じゃないから、もうしばらく待ってくれって。それでしばらくってどのくらいかかるのかなって不安になっちゃって。それで生徒会の先輩たちに話しちゃったの」


「みんなが来てくれたお陰だよ。いろいろ勝手に考えすぎちゃって自分で自分を追い詰めてたんだもんね。本当にありがとう」


「うん、アリス」

「沙耶」


 教室なのをすっかり忘れて二人で抱き合ってしまった。


「ちょっとお二人さん。抱きつく相手が違ってますよ」


 背中から和美に言われて慌てて離れて、皆が大爆笑した。


 2時限目が終わった休み時間。


「アリス、旦那が来てるぞぉ」

「いや、沙耶に用があって。沙耶、悪い、ちょっと」

「なぁに、お兄ちゃん」


 なんだろうなぁ、先輩。

 気になる……。


 何かこそこそと話してる。

 すぐ済んだようで。


「アリス、あとでなぁ」

 そう、教室の私に宮川が声をかける。


 バイバイ。

 私は手を振った。


「おーっ、心配して様子見に来たんじゃねーの」

「そんなところよ。素直じゃないんだから、ねー」


 沙耶がそんなことを言いながら席に戻ってきた。


「お兄ちゃんがね、お弁当食べたら教室で待っててって」

「なんで?」


「うん、なにか話があるって」

「ふ~ん」


 なんだろうなぁ。

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