no.74
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朝、目が覚めると目の前に宮川がいた。
なんだかものすごく恥ずかしい。
また目を瞑っちゃった。
このまま、寝たふりしちゃおうかな……。
ふーっ。
耳に息を吹きかけられた。
きゃ~~~っ、きゃ~~~。
く、くすぐったいのにぃ。
身悶えて目が開いてしまった。
目の前に宮川の顔。
「ぷっ、なに、狸になってんだよっ」
やだなぁ、もう。
ばれてたのか……。
「おまえってほんとかわいい」
なんだか顔を見られるのがすご~く恥ずかしいんだよね。
こんなに近くにいるっていうのも、めちゃくちゃ恥ずかしいんだよね……。
私は枕に顔を押し当てた。
「おい、こらっ。こっち向け!」
「やっ!」
「なにしてんだよ、こぉ~らっ」
「やぁ~だぁ」
必死で枕にしがみ付く。
「じゃ、こ~んなことしちゃおう」
後ろの髪をすーっと頭のほうに上げると首筋にキスしてきた。
う゛~~~っ、くすぐったいよぉ。
何度も何度もキスされた。
ぎゅっと枕を抱きしめてがんばる。
うつぶせになっている私の脇の下から手が入ってきて襟元で動く。
な、なにしてんのよ!
手がだんだん下にいってパジャマのボタンを外されてることに気がついた。
や、やだ、やめてよ。
声を出したいけど、顔を枕に押し当ててるから声も出ない。
手がすーっと首に触れた。
それが少しずつ下にいって……。
胸に触れてるよ……。
体が熱くなって、ぼーっとしてきた。
枕にしがみ付く腕に力が入らなくなっちゃった。
パジャマの襟を後ろからぴっばられて背中にキスされた。
ちょっともうこれ以上は……。
肩まで脱がされてキスされる。
恥ずかしいよ。
もうだめだよ。
でも体が動かない。
「ん……う……」
息が乱れてきて、なんだか苦しい。
「アリス……」
息が苦しいよ、先輩。
もう……。
それでもキスが続く。
肩をぐいっと持ち上げられて体が宮川のほうに向いた。
肩から胸にキスされて……。
もう気がヘンになりそう。
先輩、もう、やめて……。
「……先輩……ヘンになり……そう……」
肩を掴んでいる宮川の手に力が入った。
痛いよ……。
胸の上にキスされてて、じりじり熱くて……。
「先輩……ん~……」
もうだめだってば!
そう思った瞬間、バサッと宮川が体ごと覆い被さってきた。
耳元で荒い息遣いをしている。
はぁ~。
なんかやっとキスの嵐から開放された。
体の力が抜けてて、動けないけど、熱いけど、ヘンになりそうだけど、それでもなんだか妙な気分で……。
スーッと離れそうになった宮川の体を抱きしめていた。
「離れちゃやだ……」
自分で言っといて、むちゃくちゃ恥ずかしい。
でもこのままいて欲しい。
今、離れていかないで欲しい。
「アリス……」
抱きしめられた。
痛いほど、力いっぱい抱きしめられた。
夢中でそんな宮川に抱き着いている自分もヘンだと思う。
でもそうしていたい。
「アリス、好きだ……」
耳元で囁かれるくすぐったさも気持ちのいいものだと気がついた。
くすぐったいけど、気持ちいいなんてヘン……。
「先輩、大好き……」
「基樹だよ、先輩じゃない」
えっ?
「なまえ……呼べよ……」
で、でも……ずっと先輩って言ってきたからなんだか……。
「……もとき……」
「聞こえないよ……」
「基樹……」
抱き着いている腕に力を込めて、思いきって言った。
もうヘンになってもいい。
自分が自分じゃなくなってもいい。
しばらくふたり抱き合っていた。
ふーっ。
宮川が大きく息を吐いた。
「アリス……そろそろ離れないと俺、とまらなくなる……やめられなくなる……」
えっ?
「嫌だって言われても、もう止められなくなる……」
だ、だめ~~~~~っ。
まだだめ!
「せ、先輩、ストップ、ね、ストップ……せ、先輩……」
慌てて抱きしめていた腕を離してバタバタじたばた。
「は、早く、は、は、はな、れて……」
宮川はバサッと隣に仰向けになった。
ふーっ。
大きな手を顔に当てて、また大きく息を吐いた。
私は慌ててパジャマの襟元を押さえた。
コンコン。
ドアをノックする音で慌てて二人で布団の中にもぐりこんだ。
「アリスちゃん、宮川君、起きてる? 朝食できてるんだけど。もし学校行くならそろそろお食事して……」
ドアの向こうでママの声が気まずそうにしてる。
気まずいのはこっちだったりして……。
「まだ寝てるの?」
「いや、起きてます。今、行きますから……」
宮川が答えた。
「起きてたのね。じゃ、待ってるから」
ママのスリッパの音が消えて。
はぁー。
ふぅー。
二人で大きく息を吐いた。
「やだ……」
「あはははっ」
笑えちゃった。
「もう平気だな」
「先輩こそ……」
「ったく、こいつは」
「えへへへっ」
「それじゃ、食事して、学校行くか?」
「うん!」
宮川に手を引っ張られてバタバタと下に下りていく。




