no.66
「ところでみなさん、私達は彼らの鍵を持っていません」
うっそ……。
「みなさんはその鍵のありかはどこだと思いますか?」
「愛のお守り~~~!」
目の前にいる生徒達が一斉に叫んだ。
「我々には、わかるのにどうしてこの二人にはわからなかったんでしょうねぇ」
高田までマイクを待って騒いでいる。
「そりゃ、二人が愛し合ってるからだぁ」
きゃ~~~~。
「なんだよ、愛のお守りって……」
「あ~~~~~~~っ!!」
ボソッと宮川に言われて思い出した。
ポケットをごそごそやって、あった!
手のひらには今朝、山内から渡されたお守り。
「なんだ、それ?」
「朝、山内先輩がくれたの。生徒会室で二人で可愛そうだからって。愛のお守り……」
「なんでそれを早く言わないんだよっ!!」
「そんなこと言ったって。あのあと、この手錠されて大騒ぎして、忘れちゃってたんだもん。そんなに怒んなくてもいいでしょ」
「それ、かせっ!」
宮川は私の手からお守りを取った。
「お~っとそうはいきません」
高田が宮川の手にあるお守りを奪う。
「こらっ、返せ! それがないと外せないだろーが!」
「時間切れなんですよ。お約束を果たしてからじゃないとね」
「ねっ、アリスに持たせて正解だったでしょ」
「ほんと、こううまくいくとは思わなかったわ」
川上と山内が横で言っていた。
ふぇっ、ふぇっ……。
まさか自分で鍵を持っていたなんて。
あんまりだよ、こんなのって。
「さぁ、では愛のくちづけを!!」
もう周りの声が耳に入らなかった。
涙が溢れて体が震えて……。
「仕方ないな。ったく」
私の顎に手が添えられた。
やだよ、恥ずかしいよ。
「安心しろ。キスしたあとはちゃんとおまえを隠しててやるから」
宮川はまっすぐ私を見て言った。
ふぇっ、ふぇっ……。
大歓声の中、キスされた。
そしてすぐに頭を抱きしめられた。
宮川の鼓動が聞こえてくる。
早いよ。
先輩も恥ずかしいんだよね。
「安心しろ。キスしたあとはちゃんとおまえを隠しててやるから、だそうです。さすがベストカップル!!」
きゃ~~~~~~っ。
みんなの嬌声が聞こえた。
「やってろ、ったく」
大騒ぎの中、ペアコンも終わった。
足ががくがくしてステージから下りられなかった私を宮川が抱いて降りたものだから、もう大騒ぎ。
先生方まで……。
「こんなの学校始まって以来のバカ騒ぎですよ。まったく」
生活指導の坂田の声が聞こえた。
「まぁ、いいじゃないですか。彼らは彼らなりに青春してるんですよ。影でこそこそするより、いいじゃないですか。なぁ、教頭先生」
校長先生の声。
私はずっと宮川の胸の中に顔を隠していた。
耳に入ってくる冷やかしの声にドキドキ。
とにかくこの騒ぎの中から早く連れ出してよ。
「あとはやっとくから、ふたりは先、生徒会室行ってていいぜ」
高田の声がした。
「あったりまえだ」
宮川のぶっきらぼうな言葉が降ってきた。
ざわめきが少しずつ遠ざかり、気がつくと生徒会室にいた。
外からざわめきがまだ少し聞こえる。
「……それじゃ、片付けが終わっていないところは片付けをお願いします。それからペアコンに触発されないようにくれぐれも作業が済んだら、ちゃんと家に帰るよーにお願いしま~す」
どっわはははっ。
******
「アリス、もう誰もいないぞ。大丈夫か」
そう言って、そっと椅子に座らせてくれた。
涙も止まったし、体の震えも止まっていた。
「ほれ、大里からの差し入れ。開けてやるから少し飲め。落ち着くぞ」
缶ジュースを受け取った。
ピーチジュース、甘そう。
でも喉渇いちゃった。
甘くとろけるようなピースが喉を通っていく。
ふーっ。
宮川が大きく息を吐いた。
「アリス……」
缶ジュースを取られた。
なに?
えっ、目が半分閉じてる。
これは……。
宮川の顔が近づいた。
涙の流れたあとをやさしいくキスしてくれた。
そしてくちびるにくちびるが重なる。
先輩とのキス、もうたくさんしてるよね。
でもやっぱり優しく、こうしてキスしてもらうのは気持ちいい。
「やっぱり人に見せるもんじゃねーよな。はーっ、落ち着いた」
先輩……くすくすっ。
「うん、ふたりきりの時がいい」
「そうだよな」
外のざわめきが消えて静かになった生徒会室で二人きりのキスを味わった。




