no.65
「さて、マジで探さなきゃな」
「先輩、今までまじめに探してなかったんですか?」
「そんなこと言ってねーだろ。ったく、あいつら、こんなこと企んでるとはな。なにかやってるとは思ったけど」
「えっ、先輩、気がついてたの?」
「バレバレだろ。いつも俺らが帰るの最後だったのに。ここ数日、あいつら4人でこそこそ残ってたしよ」
そう言われればそうだ。
楽しもうね、なんて川上がいつもより張り切ってて、1週間くらい前から4人で残ってたよね。
「おまえ、気付かなかったの?」
「気付かなかった……」
「クラスのみんなも変だったからなぁ。まだ何かありそうだ」
うそでしょー、これ以上の何があるっていうの。
私達は校内くまなく、ほんとうにくまなく探し歩いた。
ピンポンピンポ~ン。
『お知らせします。4時になりました。現時点で手錠をはめているペアの皆さんは、グラウンドのカラオケ特設会場にお集まりください。ほかの皆さんはそれぞれの会場の片づけをして4時半までに集合してください。ペアコンテストを始めます』
あ゛~~~~~っ、時間切れ、信じられない。
「あいつら、隠したなんて言って持ってたりしてな、鍵。まさかとは思うけど、こんだけ探してないってのもなぁ」
「あっ、会長、手錠したままですねぇ。ほらぁ、今の放送聞いたでしょ。早く行かないとだめですよぉ」
「逃げちゃだめですよぉ」
周りから冷やかされて私達はグラウンドに向かった。
「先輩、やだよぉ、こんなの」
「仕方ねーだろ。企画した俺らが逃げるわけにいかねーしよ」
特設会場には他にもペアがいた。
結構、見つからないものなのね。
簡単なところに隠したつもりなのに。
「あれっ、おまえらも?」
「沙耶?」
沙耶と沖野も手錠をかけたままだった。
「だって先輩たち、結局離してくれなかったんだもん。探す時間なんてないよ」
沙耶が涙ぐんで言った。
「まっ、いいんじゃないの。これでアリス達みたいに学校公認のカップルになれるみたいだし」
「もぅ、沖野君ったら、さらし者にされるんだよ」
はーっ、そうだった。
キス、しなくちゃならないんだよね。
みんなの前で。
「やだ、やだ、そんなの恥ずかしくてやだぁ~」
なんだかどんどん怖くなって叫んでしまった。
「別にい~んじゃない。キスならいいんだろ。おでこにキスでもキスはキス!」
宮川が言った。
あーっ、それもそうだ。
おでこでもいいんだぁ。
「あれ、やっぱり二人には入ってなかったんだ」
えっ?!
沖野がなにを言いたいのかわからなかった。
「最初キスってことだったんだけど、後から訂正が回って、マウスツーマウスじゃないと認めないって決まったんですよ」
ガ~ンッ。
「なんなんだよ、それ」
「あっ、一応お二人には内緒にってことだったけど、もう耳に入ってると思いましたけどね」
沖野も居たたまれないって感じで言った。
「さぁ、ではそろそろ愛の逃避行をしていたペアの皆様にはステージに上がっていただきましょう」
いつのまにか生徒達が集まり始めていた。
「まずは愛の逃避行をしていたペア20組の紹介です」
川上が司会をしていた。
ほんとうにはりきってますね。
とほほっ。
「さて、紹介が終わったところで、今回のペアコンテスト優勝者の発表です。大里さん、お願いします」
「はい、これは予想通りといいますか、生徒会としてはちょっと皆さんに申し訳ない結果でして……今回のベストカップルは宮川・桐原ペアです」
げーっ。
「では、冠をつけていただきましょう」
みんなの大歓声の中、冠までつけられた。
いい加減にしてほしい……。
「では、早速お約束のくちづけを順番にお願いしましょう。くちづけが終わりましたら、こちらにある今探してきた鍵で釈放してあげますからね」
きゃ~~~~、わぁ~~~~~っ。
歓声が一段と高くなって……。
どうしよう。
全校生徒の前でなんて嫌だよ。
絶対嫌だよ。
涙が込み上げてきた。
でも逃げられないよね。
どうしよう。
宮川が手錠で繋がれた手を握ってくれた。
「覚悟決めようぜ」
ぼそっと言う。
でも覚悟なんて決められない。
やっぱり嫌だよ。
ちらっと上げた視線の中に沙耶と沖野がいた。
キスしてる。
以前見てしまったキスシーンが重なる。
二人とも勇気あるなぁ。
やっぱり大人になっちゃうとこういうことできちゃったりするのかな。
「では、最後のベストカップルに行きましょう」
気がつくと最後に残ったのは私と宮川だけだった。




