no.62
シュッシュボッ。
「ふ~ん……」
えっ、今の音……。
窓の外をなんとなく眺めていた私は振りかえった。
げっ、やっぱり。
「ちょっと先輩!!」
宮川がくわえていたタバコをとった。
あちちっ。
「ばか、何すんだ。火傷するぞっ」
「ここは生徒会室です。会長がこんなことしちゃダメなの!」
「ったく、いいじゃねーか。ここが一番安全な場所なんだから。家でもあんま吸えなくなったしよ」
そう言って、私の手から煙草をとるとまた吸い始めた。
「……それ、全部入れちまえ」
川上に向かって宮川がいきなり言った。
「はっ?」
話の流れに着いて行けなくて川上も驚いている。
もちろん他の皆も。
「だからそれ全部ひっくるめてやっちまおうっての」
「どーやってですか?」
大里が言った。
「そーだな。まずペア……体育祭みたいに好きなのってのはもうつまんねーからな。そうだ、今度は羨ましいカップルを逮捕しちまえ」
た、逮捕???
「なんだよ、それ」
高田が素っ頓狂な声を上げた。
「つまりだな、こいつらは羨ましい。悔しいくらいうまくいってるって奴らに手錠をかけてきちまうわけ。で、その手錠に番号つけて、それに合う鍵をどこかに隠しとく。ヒントをもらってそれを手がかりに鍵を探せ~。見つけないと手錠は取れない」
お茶目にウィンクして見せた。
「な~るほど。体育祭でできたカップルもいるわけだし、羨ましいと思ってるやつはいくらでもいる。そういう奴らの気持ちを今度は楽しませようって魂胆!」
楽しそうに高田が言った。
「そのとーり!! で、手錠を掛けられたカップルはずっと一緒にいて、鍵探ししなくちゃならねーわけ」
「でも見つからなかったらどうするんですか?」
「まぁ、緊急自体に備えて工具は用意するとして、そうだな、高田と山内、川上と大里は愛の救護班だ。工具持って校内回れ」
「はぁ~」
川上が気の抜けたような返事をした。
すでに呆れてる様子。
「手錠を持ってカップルを追いかけるからこれで鬼ごっこも入ってるようなもんだろ。捕まえれば逮捕ってわけで。鍵探しで宝捜し。しっかりペアは要素に入ってる。カラオケは……グラウンドに特設会場作ってやれ。あとはなんだ。ミスコンだぁ、それはペアコンにでもしとけ。最後まで鍵を探せなかった奴は皆の前でキス! カラオケの特設会場使えるだろ」
げーっ、なんて企画。
めちゃくちゃだよぉ。
「おもしれ~、俺それ乗った!」
「私もぉ~」
当然のごとく高田と山内は大喜び。
「おまえら、愛の救護班だって!」
「いいも~ん。それでも手錠して走るもんね、俊平」
「もっちろんだとも、由美」
勝手にやっててよ。
「仕方ないわね。これもみんなの意見から出た企画なんだから」
「じゃ、明日は実行委員も決まるし、この企画の説明して、それぞれの仕事の割り振りな」
「OK!」
ほぇ~~~~~っ、流れが速い。
「ところで愛の救護班が私達と高田君たちの2組で、宮川君達は?」
「手錠を貸し出したり、やっぱ統括。ここに誰かいなかったら困るだろ。俺とアリスはここの番」
またかぁ。
まっ、いいけどさ。
ここからなら皆がきゃーきゃーわーわーやってるの見えそうだし。
「またですか。一番羨ましがられるカップルだと思うけどな」
「そうそう、一番手錠たくさんつけられそうだわ」
高田と山内が言った。
「そんなもん、俺らはしねーよ」
「ずるくないですか、それって」
大里まで言う。
「いいじゃないの。さっ、決まったら準備。私、親類におもちゃ屋さんあるから手錠頼みます。いくつくらい入りますか?」
いつの間にか乗り気な川上だった。




