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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
58/156

no.58

 ******



 あっという間に夏休みももう残り1週間になっていた。

 宮川はキャンプから帰ってきて、毎日バイトに行っている。


 リビングのソファでゴロゴロしていると……。

「ねぇ、アリスちゃん。そうゴロゴロしてないで何かないの。なにか!」

 なにかと言われてもなにもないから、こうしてゴロゴロしているわけで……。


「宮川君は毎日バイトだしぃ。そうだ、沙耶ちゃんは? ね、ショッピングなんてしてきたらどうかしら?」

「沙耶はバスケのマネージャーやってて毎日部活なの!」


「アリスは部活入らないの?」

「やりたいもの、ないんだもん」

「もぅ、ねぇ、ちょっとだらだらしてないで、なにかしなさいよ。あっ、勉強以外のことよ」


 うるさいなぁ、ママってば。

 背中でママの声を聞きながら自分の部屋に入った。


 沙耶に電話してみようかなぁ。

 でも今日も部活だろうなぁ。

 まっ、一応かけるだけかけて……。


 電話をするとやっぱり部活だった。

 でも沖野君のバスケ姿見においでよと言われて、家にいるよりはいいかなぁと出かけた。


 

 ******



「いらっしゃ~い、アリス。こっちこっち」

 そう言って、沙耶が迎えてくれた。


 体育館の隅にふたり座る。

 2面あるコートの向こう側で沖野君がシュートを決めていた。


「ほょ、ほんとかっこいいね」

「うん。1年なのにレギュラーなんだよ」


「すごい!」

「でしょ?」


「あ~、幸せ者ぉ~」

「なに言ってるの。アリスほどじゃないって。ところでどうしたの、お兄ちゃんは?」


「う~ん、キャンプのあとはずっとバイトなんだよね。お休みないんだもん」

「え~~~っ、じゃ、8月に入ってずっと?」

「うん」


 別にバイトが嫌だってことじゃない。

 昼間はいなくても帰ってくれば一緒にいられる時間はあるし。


 でも疲れてるような気もするし、なんだかちょっと寂しいかな。

 せっかく一緒に暮らせるようになったのに。


「一緒に暮らしてるからかえって寂しいってのもあるのかぁもねぇ」

「うん。ねっ、沙耶。沖野君と仲良くやってる?」


「もちろんよ」

「そうだよね、こうして毎日会ってるんだもん」

 

 はーっ。

 汗を流して、本当にかっこいいね、沙耶の沖野君。


「で、どこまでいったの?」

「えっ?!」


 沙耶が一瞬固まった。

 まずいこと聞いちゃったかな?


「あ、アリスからそういうこと聞かれると思わなかった」

「そ、そうだよね。あははっ」


 やっぱ、まずかったかなぁ。

 ちらっと沙耶の方を見た。

 頬がうっすらと上気して、まっすぐ沖野を見つめてる。


「最後までいっちゃった」

「えっ……」

「私達もう最後までいっちゃったよ。夏休み入ってすぐ……」


 恥ずかしそうに俯いて話す沙耶。

 そっ、そうなのかぁ。


「もしかして気にしてるの? キャンプでお兄ちゃんとなにもなかったこと」

「ううん。そういうんじゃないけど、いいのかなぁって」


「いいんじゃないかな、アリスたちは」

「う~ん」


 なんだか皆がどんどん先に進んでいくのに私だけ取り残されていく。

 ついこの間までは中学生だったのに、高校に入った途端、大人の中にポンッと入れられてしまったような気がして、戸惑ってる。


「ねぇ、アリス。たとえばね、私と沖野君の心はこんな風に繋がっているとするでしょ?」

 そういって人差し指と人差し指を組んで見せた。


「そしたらね、アリスとお兄ちゃんはこんな感じだと思うの。5本しっかりとね。繋がってるのよ」

 指をすべて組み合わせて見せた。


「どうして、おんなじように好きで繋がってるんだよ」

「言葉で表すとね。確かに同じだわ。でもやっぱり違うの」

「どうして?」


「私と沖野君、そして付き合ってる人皆そうだけど、赤の他人の男と女でしょ。その二人がそれぞれの思いを確認するのに言葉だけじゃ、怖いのよ。人ってヘンね。目に見えないものにはとても不安になる。だから……」


「それだったら、私たちだって同じだよ」


「ううん、違うんだなぁ。今まで平凡に生きてきた私達とはやっぱり違うんだよね。アリスはずっと自分の感情を閉じ込めて生きてきてた。お兄ちゃんもある意味で同じなのよ、アリスと」


 先輩が私と同じ?


「お母さんと二人で生きてきたでしょ。二人力を合わせてきた。だけどお母さんが体を壊して入院したときね。お兄ちゃん、うちに来たの。お母さんが退院するまで置いてくれって。置いてくれるだけでいいって」


 沙耶が涙ぐんでそれを首にかかるタオルで隠した。


「周りの大人から中学生がひとりじゃ、お母さんも安心して入院していられないっていうようなことを言われたらしいよ。お母さんのほうの親類っていなくて、本当に天蓋孤独って感じだったし、かなり考えて出した答えだと思う。あのお兄ちゃんがパパに頭下げるなんてきっと相当考えた末だよね。なのにパパは全然話を聞かなかった。追い返したのよ」


 なんだかひどい話。

 沙耶のパパだけど、そういうのちょっと辛いなぁ。


「それで、お母さんが亡くなってから、お兄ちゃん荒れちゃって。学校にも行かないで悪い仲間とつるんで。だから私、時々お兄ちゃんのところに行くようになったの」


「そうだったんだ……」


「お兄ちゃんに言ったの。亡くなったのはお兄ちゃんのお母さんだけど、私のお母さんでもあるって。それでなんだか悲しくて、お兄ちゃんの前で思いっきり泣いちゃった。そしたらそれ以来、お兄ちゃんまじめになってくれて」


 そうだよね。

 沙耶のお母さんでもあるんだもんね。


「こんなこと私が話しちゃってよかったのかな。お兄ちゃんの過去」

「うん。私、先輩に言ったりしないよ。きっといつか先輩が自分で話してくれるまで」


「ありがとう。……多分アリスを見たとき、なんでこんなに自分を隠しちゃうんだろうって思ったんじゃないかな。そういうの鋭いからお兄ちゃん」


「沙耶もだよね。完全に最初から私のことわかってたでしょ」

「うん。だから本当のアリスと仲良くなりたかった。私達兄妹、似てるのかもね」


「とっても」

 あははっ。

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