no.56
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「すみませんでした!」
コンビニで買ったお弁当で途中のんびりお昼して、家に着いたのは夕方だった。
そして玄関を入るなり、宮川は迎えに出てきたパパとママに頭を下げた。
「どうしたの、宮川君」
「アリスが背中に怪我して」
「まぁ」
「なんでそんなことに?」
パパが聞いた。
「いや、あの風呂場で……」
「じゃ、君が謝る必要はない」
「そうよ。お風呂場まで宮川君の監視は届かないもの」
そ、そりゃそうだ。
……事実は言えない。
「君は荷物、置いてきなさい。アリスはリビング」
パパはムスッとして言ってリビングに入っていってしまった。
「いやぁね、パパったら。怒ってるように見えるけど、本当はほっとしてるのよ。もうキャンプって聞いてから大変だったんだから。女の子なのに危ないって。早くリビングいって安心させてあげなさい」
「うん」
「じゃ、俺、荷物置いてきます」
「すぐいらっしゃいよ。食事用意してあるから」
リビングに入るとなぜかテーブルの上に救急箱。
「アリス、傷、見せなさい」
「えっ、大丈夫だよ。ちゃんと手当てしてあるし、もう痛くないもん。たいしたことないし……」
「ブツブツ言ってないで見せる!」
逃げ出そうとして後ろから服を掴まれた。
な、なに。
もう大丈夫だって言ってるのにぃ~~~。
「アリスちゃん、パパにちゃんと見てもらったほうがいいわよ、ね」
「や、やぁ~」
長袖のジャケットが脱げて、逃げられると思ったけど、Tシャツをしっかり掴まれてしまった。
「もう、アリスちゃんったら怖がりなんだから。パパは元お医者さんなんだから、ね」
「だって、だって、もう大丈夫だってばぁ~」
痛いのは嫌だ……!
「こら、ふざけてるんじゃない」
「やだっやだぁ~~~~~!! 先輩、助けて、先輩!!」
「おまえな……っ」
パパがグイッと服を引っ張った。
「先輩がいい。パパじゃやだ。先輩がい~、せんぱ~い!!」
階段をダダダッと降りてくる音が聞こえた。
「どうしたんですか?!」
リビングに入ってきた先輩、目を白黒させている。
げっ、胸ぎりぎりのところまでTシャツが持ちあがっていた。
しかもノーブラだし。
で、でもそれどころじゃない。
痛いとこ、触られたくない。
逃げなくちゃ!!
「先輩、助けて、痛いのいやだよ。いやだぁ~~~」
宮川は顔に手を当てて、困った顔していた。
「いい加減にしなさい、アリス!!」
パパのマジで怒った声が響いた。
「ふぇ~ん、だって痛いのやだぁ。パパじゃやだぁ。先輩がいい……」
うぇっ、うぇっ……。
涙が出て、止まらない。
こんなに騒いでる自分がバカみたいだけど、でも先輩がいい。
「仕方ない。宮川君。こいつを押さえてろ。とりあえず傷の状態だけ見せてもらう」
「……はい……」
結局ソファーに座った宮川に抱きつく形で傷をパパに見せた。
ペチンッ。
背中を叩かれた。
「こんな子供でも舐めときゃ治るような傷で大騒ぎするんじゃない! まったくばかばかしい。もう薬もつけなくても大丈夫だよ」
パパがドサッとソファーに座るのがわかった。
もう触られないですむ。
「さっさと服を着なさい。嫁入り前の娘が!!」
「えっ?!」
げっ、上、片方の腕抜いて、体半分丸だし……!!
「ほら、アリスちゃん、着て」
ママに袖を通してもらった。
「着替えてきましょう、アリスちゃん」
「うん」
部屋に行って、ママに着替えを手伝ってもらう。
「前開きのほうが着替えやすいでしょ。それにしてもさっきのはパパ、傷ついちゃったわよ」
「うん……」
「パパはいや、先輩がいいだなんて」
「うん……」
思わず叫んじゃったけど、パパには悪かったと思ってる。
「それにしてもアリスちゃんは本当に怖がりね。まぁ、ママにも責任はあるんだけどね」
「えっ?!」
「小さいときにね、あなたがちょっと怪我したっていえば大騒ぎして。熱がちょっと出たって言えば慌ててパパのところに連れていって。いつも怒られてたわ。母親がそんなにおろおろしたら子供はもっと怖がるって。元看護婦なのにダメよねぇ。あなたのことになると全然しっかりできなくて」
「ママ……」
「だからママにも責任はあるの。でももう少し大人になろうね」
「うん。ごめんなさい」
「さぁ、食事にしましょう」
「うん」
ところがリビングに行くとなんとパパと宮川はブランデーを飲んでいた。
「な、なにしてるの、先輩!!」
「いや、お父さんが一緒にやろうって」
「いーじゃないか。あはははっ」
「だって先輩は未成年なんだよ。お酒なんて飲ませちゃだめ!」
「少しはいけるっていうんだから、いいさ、な、宮川君!」
「はい」
な、なんなのよー。
「アリスちゃん、いいからこっちいらっしゃい。先に食事しましょう」
「でもママ……」
「さっきのショックだったのよ。パパなりに……」
私が言ったこと?
でも先輩にまでお酒、飲ませなくったっていいじゃない。
私はママに促されて食事をはじめた。




