no.55
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「あっという間だったな。2泊」
「うん」
荷物の整理もできて、帰り支度はOK。
私の荷物は結局、ファスナーひとつで大きくなる宮川のリュックの中に収まってしまった。
ブラができなくて長袖のジャケットまで着せられた。
「基樹~! そろそろ行こうぜ!」
テントの外で高田の声がした。
「じゃ、行くか」
「うん」
外に出ると皆がもうリュックを背負って待っていた。
「叔父さんに挨拶してきたら、テントはこのままでいいってよ。だからもう出発しようぜ」
「ねっ、アリス、大丈夫。歩ける?」
「うん。大丈夫」
心配顔で覗く川上に答えた。
「ふ~ん、川上さんなんてちょっとぎこちない歩き方してんのにあれだけ騒いだアリスは平気なの」
山内がにやりとして言った。
えっ、川上がぎこちない歩き方?
「余計なこと言わなくていいのよ、由美さん」
「それにしてもあれだけ騒いじゃうと旦那も大変ね~」
あぁ、また昨夜も叫んじゃったもんね~。
でももう傷も痛くないし、大丈夫。
「すみません。騒いじゃって。私、痛がりで」
「だけどなかなかやるじゃない。お盛んなのはいいけど、最初は痛いから無理しちゃだめって旦那に忠告しといたのにねぇ」
「えっ、なんのことですか?」
「やっだぁ、最初のHは痛いじゃない。男はわかんないでしょ、そういうの」
えっ?!
「由美さん、そういう話題はもうちょっと先にしたほうがいいんじゃない。アリス、また固まっちゃったわよ」
「やぁだ~。あれだけ騒いどいて、今更って感じじゃない。ね~、バレバレだもん」
バシッ。
ぎゃ~~~~~~っ、痛い、痛い。
傷、叩かないでぇ、山内先輩!!
半泣き状態で固まってしまった私に宮川が気付いた。
「おまえら、なにやってんだ」
「だってぇ、アリスったら今更恥ずかしがっちゃって、もぉ~」
バシッバシッ!
も~っ、だめ。
そのまま体がくず折れて跪いた。
「先輩、そこ、痛いのにぃ~~~」
「えっ、なに、アリス。どうしたの?」
「バァーカ。ほら、立てるか、アリス」
「ふぇ~ん、痛いよぉ。山内先輩がぁ~。痛いのに、痛いのにぃ~」
「わかった、わかった」
「えっ、私何かいけないことした?」
「怪我してんだよ、こいつ」
「えっ?」
皆が一斉に私を見た。
「最初の晩、怪我したんだ。だからそこ、触んなよ」
「先輩、みんなに怪我したこと話してなかったの?」
「言えねーだろ。あの状況どーせつめーするんだよ」
そりゃそうだけど、私、昨日ずっとテントの中にいたんだよ。
皆、ヘンに思ったんじゃない?
「じゃ、もしかしてあの絶叫って包丁で指切ったときの騒ぎと同じ?」
大里が目を丸くしていた。
「そーだよ!」
「ええ~~~~~っ、じゃ、昨夜のも?」
川上が言った。
「そーだよ!!」
「じゃ、何もなかったの?」
「だから何度も言ってんだろ。違うって。なのにおまえらが勝手に勘違いしてたんじゃねーかよ!」
「うっそ、うっそー。やだー。もうすっかりあれの痛みで絶叫してるんだと思ったぁ~、きゃははははっ」
山内が大笑いした。
「勝手に想像すんなよ、バァーカ」
誤解ってこーゆーことだったんだ。
とんでもない。
「いやぁ、アリスだけには優しい基樹がやけに強引にって思ったけど、そーゆーことね」
高田が苦笑してる。
「ほら、行くぞ。アリス。こんなやつら、かまってられねーよ」
宮川が私の頭を抱きかかえて歩き出した。
「あれ、アリス、リュック?」
「あれ、ほら、倍の大きさになってる」
「ああ、ホントだ。いいなぁ~、いいなぁ~、俊平、私のもぉ」
「おまえは怪我してないからいいの」
「え~っ!!」
後ろで皆が騒いでる。
心地いい笑い声が背中から届いて、気持ちいい。
「先輩、楽しかったね、キャンプ」
「ああ、まぁな」




