no.51
そっとうつぶせに寝かされて視界が開けた。
薄暗いけど、さっき服を脱いだ脱衣所だよね。
「これ、おまえのだな」
そう言って私の背中にタオルをかける。
そこ、痛いんだよ、先輩。
なんで痛いの?
ね?
「ちょっと待ってろ。今、俺の服、持ってくっから」
なに、どうしちゃったの?
みんなは?
いっ、痛い!!
背中の激痛にやっとしっかり目が覚めた。
お風呂でキスされて、力抜けて岩から滑り落ちて……そう、お湯の中にドボンだったんだ。
でも背中が痛いのってなんで?
動こうとするとひどく痛い。
怪我してるの?
宮川が走りこんできた。
「アリス、大丈夫か?」
上半身裸のままの宮川が立っていた。
「先輩、痛いの。背中が……すごく痛いの……」
涙か溢れた。
「ああ、切れてるんだ。ちょうど滑ったところにガラス片があった。すまない、アリス」
「ううん。先輩のせいじゃない。でも痛いよ~」
「動けるか。服、着ないと……」
「う、痛い……」
宮川は私の洋服を棚から下ろして……。
「ごめん、ちょっとじっとしてろ。今、着せちまうから」
「いいよ、自分で……うっ」
動こうとして痛みを堪えられなくなった。
「動くな、我慢しろ」
恥ずかしいよ。
下着まで着せてもらうのなんて……でも動けない。
う~~~~っ、痛いよ。
ブラをしてもらうのに腕を動かしたらズキズキする。
「ごめんな、でもこれで傷口タオル当ててるの外れないようにできるから、少し我慢してくれ」
どうもブラの紐の下にタオルを当てているらしい。
Tシャツを着せられてショートパンツもはかせてくれた。
「よし、さて、どうやったら痛みなく抱けるかな……アリス、俺の首にしがみ付けるか?」
「うん……」
腕を動かすと痛い。
でもこのままじゃどうにもならないよね。
先輩の言うこと聞かなくちゃ。
私は宮川の首に抱きついた。
でも腕に力なんて入らない。
「よし、持ち上げるぞっ」
そう言って私の体ごと持ち上げた。
一瞬激痛が走って、宮川の首に回した腕に力が入る。
「ごめん、痛かったか。とにかくテントに戻ろう」
「先輩、みんなは?」
「もういねーよ。ったく。そっと歩いてやるから少し我慢しろよ」
脱衣所を出て、歩き出した。
頭の上にタオルが掛けられた。
「髪、拭いてやるの忘れたな。冷たくないか」
「うん」
「しかし参ったな。手当てするにも何もない。管理棟はもう締ってるだろうし……」
「私のリュックの中に救急箱入ってる」
「えっ?」
「ママが何かあったら困るからって入れたの。だから……」
「よし、じゃそれ使うか」
ママに感謝。
出かけるまで大騒ぎだったんだよね。
山だなんて危ないだの、テントなんて危険だの。
絶対料理には手を出さないで他の人にやってもらいなさいだのと。
「入るから、かがむぞ」
あっ、もうテントに着いたんだ。
ゆっくり下に降ろされた。
痛い……!!
宮川は手際よく寝袋を広げた。
「ここに横になれるか? うつ伏せになって」
「う゛~~~~~」
痛みを堪えてうつぶせになる。
右肩の下のほうがものすごく痛い。
そこに傷があるんだってわかった。
ガサガサと宮川が私のリュックから救急箱を取り出した。
「すっげーな、しっかり入ってんの」
家にある救急箱ほどではないにしても、かなりのものだ。
「アリス、それ、脱げるか?」
着てしまったTシャツ。
でも腕動かせない。
私は首を振った。
「でも、このままじゃ手当てができないんだよ。上のほうだから脱かなくちゃ」
「いやっ、痛いんだもん。動くと痛いんだもん」
また涙が込み上げてきた。
ガチャガチャとなにかやってる。
「悪い、アリス。このTシャツ切ってもいいか。それならおまえが動かなくてもいい」
「う、うん」
痛いのがないならそのほうがいい。
ジョキッ、ジョキジョキ。
背中側を切っているのがわかった。




