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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
5/156

no.5

 ******



「まぁまぁ、お客様なの」


 家に友達が来ることなんてなかったから、ママは大喜び。

 この反応はもう想像ついていたけれど……。


「突然お邪魔します。宮川基樹です。生徒会の仕事ですみません」

 意外だったのはしっかり挨拶した宮川だった。


「いいえ、それじゃ、アリスちゃんのお部屋にどうぞ。あとでお茶の用意していきますね」


 な、なんで私の部屋なのよ。

 リビングでいいじゃない。

 と私が焦っている間にママは、宮川を私の部屋がある二階へと連れていってしまった。

 

 あの部屋、見られたくない。

 やっぱり家にしようなんて言わなきゃよかった。


「なにやってるの、アリスちゃん。早く」

 階段の上からママが満面の笑みで言った。

 返す言葉もない。


「それじゃ、私はお茶の用意……」

「あっ、お母さん、お構いなく」


 バタバタと下りていくママに声をかける宮川。

 この辺はそつなくこなすんだなぁ。

 

 しかし、ここからの反応が怖い。

 宮川なんて言うかな。


「入っていいか?」

「あっ、どうぞ」


 もうここまで来たら仕方ない。

 笑われて元々だ!


 ガチャッ。


 窓にはフリルが幾重にも重なったカーテンがかかり、なんと今時天蓋付きのベッド。

 花柄のクッションがあちこちに。

 テディベアーや人形が飾られて、部屋はパステルピンクで統一されていた。


 一瞬、宮川の足が止まったのに気が付いた。

 笑われる……!


「へぇ、結構かわいい部屋なんだな。なんにもないさっぱりしたの、想像してたけどさ。そんじゃ、やるか」

 えっ、笑わないの?


「これ、ちょっと借りるぞ」

「あっ、は、はい」


 宮川はコーナーテーブルを引っ張って部屋の中央に置くと、そこに封筒をポンッと置いて座る。

 そして入り口に突っ立ったままの私を見上げた。


「あっ、おまえ着替えるか? 俺、出ててやるぞ」

「い、いいです。このままやりますから」


「そっか。じゃ、早くやっちまおうぜ」

「は、はい」

 私はカバンを机の上に置くと、宮川の向かい側に座った。


「名簿、先生にもらってきたんだ。これにどんどん希望を書きこんで後から組み合わせようぜ。おまえ女子のほうやれ」

「はい」


 宮川はてきぱきと男子の封筒からアンケート用紙を出して、それぞれを広げながら揃えていく。

 私も封筒を開けた。

 なんだか手が震える。

 この紙にみんな思いを書いてるんだよね。


 いたっ!


 封筒の口がさっと私の人差し指をかすって、痛みを感じた。

「どした?」


「あ、あの、封筒で……」

「どれ、見せてみろよ」

 右手を取られて、私は心臓が止まるかと思った。


「いい、いいです。大丈夫」

「おっ、血がにじんでる。でもこれくらいなら大丈夫か。舐めときゃ治る」


 そう言って、傷口をペロリと舐めた。

 ひゃ~~~~~~~っ、なんってことすんのよ~~~~~~!!


「痛いか?」

 私は必死で頭を振った。

 お願いだから早く手を離して。


「気をつけろよ」

 そう言って、やっと手を離してくれた。


 顔が上げられない。

 こんなこと平気でやる宮川なんて大嫌い!


 私は唇をかみ締めて、動揺している自分を隠すように封筒の中のアンケート用紙を出した。

 でも四つ折りにされたそれを広げる手が震える。

 傷が熱くて……。


 コンコン。


「冷たいお茶、持ってきたわよ。どうぞ」

「すみません、お母さん。本当にお構いなく」


「いえいえ。それ、なんですの?」

「あ、生徒会の仕事なんです」


「生徒会のお仕事って……なんでアリスちゃんがやってるの?」

 や、やばい。

 言ってなかったんだ。


「いやぁ、ちょっと公表できない内容なんで、会長と副会長だけで作業しなくちゃならなくて」

 

 え~~~っ、言っちゃだめ!

 と慌てて振り返っても遅かった。

 ママの視線が痛い~っ。


「会長と副会長って……」

「は? 俺が会長でアリスくんが副なんですよ」


「副って……」

 あ~っ、もうだめ。

 ママの怒りが込み上げてるのがわかる。


「あれ、アリス、言ってなかったの? 生徒会に入ったこと」

 あっけらかんと言ってくれちゃったわね。

 むっか~っ。


「アリスちゃん、生徒会入ったの? どうしてそんなものに。いつも言ってるでしょ。お勉強はしなくていいって。女の子はそんなものできないくらいがかわいいのよ。どうしてこう可愛げのないことばかりするの。ママ、悲しいわ」


宮川がどうしたんだって顔をして見ている。


「ママ、悪いけど、仕事終わらなくなるから話は後にしてくれる?」

「えっ、あっ、ごめんなさい。お客様なのよね。えっとまぁ、いいわ。今回は許してあげる。こんな素敵な会長さんの側にいられるんだし」


「ママ!」

「あっ、ご、ごめんなさい。じゃ、がんばってね」


 パタン。


「あのさ、俺、余計なこと言っちゃったかな」

 前髪を掻きあげて宮川が言った。


「いいです」

「ほんとわりぃ」


「いいですってば。いつもならもっと小言言われるんですけど、先輩がいるからあまり言われずにすんだし」

「でもおもしろいお母さんだな。女の子はできないくらいがかわいいっか」


 あははっ。

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