no.45
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「ほら、早くしろ、アリス」
ドアのところでイライラしながら待ってる宮川。
みんなが見てる。
だから余計焦っちゃう。
「わかってるよ、あ~~~~~っ、筆箱、落ちたぁ~~~」
しかも中身散乱状態。
「アリスってばなにやってるの」
沙耶が一緒にペンを拾ってくれた。
「ね、どうなってるの。昨日の今日でなんだか訳わかんないよ。なんだか必死で勉強ばかりしてて何も話してくれないし」
「ごめんね、沙耶。今は1分でもおしいの。試験が終わったらちゃんと話すから」
「うん……」
それだけ話すと私はカバンを抱えて教室を飛び出した。
「もたもたやってんなよ」
「はい!!」
私は昨夜作った英単語表を片手に歩き出した。
ブツブツブツ……。
学校の帰り道で英単語完璧にしちゃわなきゃ。
「ほら、昇降口。靴、履き替えろ」
「はい!」
靴を履き替えてまた視線は英単語表。
ブツブツブツ……。
「おい、そのまま行くと痛い目見るぞ」
えっ?!
視線を上げると目の前に木。
あ、あれ、なんでこんなとこに木があるんだ。
「どこ行ってんだよ。こっちだぞ」
「はい!!」
進行方向を軌道修正して、また英単語表に視線を落とした。
ブツブツブツ……。
「おまえ、家につくまでそれやってるつもり?」
「うん。だから先輩周り見ててね」
「はいはい。ったく、なにもそこまでやらなくても」
「だめっ! 絶対満点なの、絶対!!」
「わーったよ。そんじゃ、俺の腕にしがみ付いてろ。家まで連れていく」
「うん」
私は宮川の腕にしがみ付いた。
手元は英単語表。
ブツブツブツ……。
周りから冷やかしの言葉が聞こえた。
「これじゃ、全然冷やかされても嬉しかねーよ。見ろ、こいつは勉強中だ!!」
頭上で宮川が叫んでる。
私はかまわずブツブツブツ……。
周りから笑い声。
「ったく」
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「ほら、着いたぞ」
「はぁ~い。こっちも英単語完璧よぉ。ただいまっ!」
「お帰りなさ~い」
ママが明るい声で出てきた。
「あら、なんか宮川君、疲れてるように見えるけど、またアリスちゃん、なにかやったの?」
「いえ、満点とるんだそうです。今度の試験」
「えーっ、アリスちゃん、そんなに勉強しなくていいんだってばぁ。女の子はあんまりできるとかわいくないんだからぁ」
階段を上がっていく後でママが叫んでいた。
宮川があとから部屋に入ってくる。
いつものようにテーブルを用意して、勉強が始まった。
もうがむしゃらに勉強した。
食事中もテーブルに教科書置いていて、ママに叱られた。
「俺、そろそろ帰るからな」
「えっ?」
「もう10時過ぎたしよ」
時計を見ると確かに15分過ぎてる。
そういえば帰ってきてから宮川と全然口聞いてない。
「待って、少しだけ休憩するから、ね」
立ちあがった宮川を見上げて言った。
「俺なんか目に入ってなかったくせに。全部自分でできんじゃねーかよ。明日から自分でやれ」
「やだ、一緒じゃなきゃ、や!」
私は宮川に抱きついた。
もう一杯わがまま言っちゃうんだから。
じゃなきゃ、気持ちが体の中に一杯になりすぎて後で困っちゃうから。
我慢しないで言っちゃうもんね。
「ったく、なんなんだよ」
「ごめんなさい。でも先輩が一緒のほうががんばれるから」
「わかったよ。じゃ、ちょっと休め。帰ってきてからずっとやってて、おまえの目、三角になってるぞ」
二人並んで座りながら私は目をごしごし。
「丸になったかな」
「丸でも気持ちわりーと思うぞ」
……それもそうかも……きゃははははっ。
「少しずつ息抜きしろよ」
「うん」
宮川の胸に頭を持たせかけて、頷いた。
「でも前はそうやって勉強ばっかりしてたのかよ」
「う~ん、こんなに必死じゃなかったけどね。あんまり必死になってるとこ、見られるのも嫌だったから、家でだけかな。でも今は人の目気にしている余裕ないでしょ」
「まっ、何にしてもあと数日だからな」
「うん。早く終わって欲しい」
「同感! 早くアリスを一人占めしたい」
えっ?
「嫉妬する相手が勉強じゃ情けない……」
前髪を掻きあげて宮川は言った。
「先輩……」
宮川の顔が近づく。
唇と唇が重なる感触。
すっかり覚えてしまった。
でも未だにすぐ苦しくなっちゃう。
先輩、ストップ、もう苦しい、くるし~~~~~っ。
「おい、なんですぐその色気のないジタバタをはじめんだよっ」
「だって……はぁはぁ……息が苦しい……」
「俺は鼻まで塞いでねーぞ」
「えっ、そ、そりゃそうだけど……」
「力みすぎなの。もっと体の力抜けよ」
うっ……。
「おしおき……」
そう言って宮川は耳をペロリと舐めた。
ひぃ~~~~~~~~っ。
体がしびれたぁ~~~~~。
「うまくいくまでおしおきつきだからなっ!」
「えっえ~~~~。そんなのないよぉ」
「そんじゃ、俺、帰る」
ブチブチッ。
玄関まで来るとママがリビングから出てきた。
「あら、帰るの? 気をつけてね」
「はい。ごちそうさまでした」
「あっ、じゃ、お邪魔虫は消えるわね。こうしてさよならするのはあと数日なんだから、今のうちに楽しんでね」
な、なに言ってんだか……ママってばっ。
「じゃ、楽しませてもらっちゃおっ」
宮川はキスしてきた。
ここじゃだめ~~~~っ。
頭を押さえられて逃げられない。
ちょっ、ちょっといつまでしてるのよ。
そろそろ離して、また息がぁ~~~~~。
「はい、失敗。おしおき付きっ」
で、耳をぺろりっ。
ぎゃ~~~~~っ。
と、手を離されて私はそこにぺたりと座りこんでしまった。
も~っ、も~っ、いやぁ~~~。
「おやすみ、アリス」
なにがおやすみ、アリスよぉ。
力入らなくなっちゃったじゃない。




