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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
41/156

no.41

 ******



 作戦3日目。


「どした、今日は元気ないな」

「なんでもないよ。ね、ここは……」


「それは……」

 説明されているのが頭に入らない。


 沙耶にも今日は元気ないって言われちゃったんだよね。

 でもこんな計画立てたなんて言えなかった。

 ちょっと後ろめたいし。


「……わかったか?」

「えっ、あ、うん」


「聞いてなかったろ。なに、考えてるんだよ」

「あっ、なんでもないの。ちょっとボーッとしちゃって」


「じゃ、も一回説明してやるからちゃんと聞けよ」

「はい!」


 しっかりしなくちゃ。

 今日はちゃんと計画進めるんだから。


 時々顔を出す押しつぶされそうな不安を払いのけて、勉強した。

「じゃ、今日はここまで」


 はーっ。


「疲れたのか?」

「う、ううん」


 でも実はちょっと疲れた。

 集中しちゃうと結構平気なんだけど、なんだか気持ちが切り替えられなくて疲れちゃった。


「無理するなよ。トップじゃなくなったって、誰も文句なんか言わないぞ」

「そうだね。でもやれるだけやらなきゃ」

 

 話しながら下に下りた。

 気にしていたのかすぐにリビングからママが出てきた。


「なんだか毎日家庭教師してもらってるみたいでごめんなさいね」

「いえ、俺のほうこそ、毎日食事させてもらってすみません」


 そう。

 誰も遠慮することない。

 私の為、なんだから。

 わがままな私のため……。


「それじゃ」

 そう言って玄関を出ていく宮川。

 ドアが締りそうになって、私は駆け出していた。


「アリスちゃん……!」


 気がつくとまた宮川のシャツの裾を握り締めていた。

 玄関のドアが背後で開いたままなのがわかる。

 中の明かりがはだしの足元照らしてて……。


「アリス……」

 宮川の困ったような声が降ってきた。


 私、なにやってるんだろう。

 私の中に寂しいって言葉が一杯になって、ぐるぐる回ってて、いくら払いのけても、消えなくなって……。

 演じるだけのはずだったのに、いつのまにか一杯になっちゃった思いに押しつぶされそう。


「アリス……」


 ごめんね、先輩。

 先輩を困らせるつもりじゃなかったのに……。

 見上げて先輩の目が悲しそうだった。


 私は家の中に飛び込んだ。

 ママに声を掛けられたけど、溢れ出した涙見られたくなくて、部屋に飛びこんだ。

 後ろから追ってくる宮川にも気付いた。


「アリス、おい、アリス、ここを開けろ」

 一瞬鍵をかけるほうが早かった。

 ドアの向こうで宮川が叫んでる。


「宮川君……」

「あっ、すみません。俺、もう少しいいですか。今日アリス、なんだかヘンだったし、ちゃんと話してみますから」


「迷惑ばかり掛けてごめんなさいね」

「いえ……」


「じゃ、アリスちゃんのことお願いね」

「はい」

 ママが降りていくスリッパの音がした。


「アリス、ここを開けてくれないか……」

 静かに宮川の声がした。


 私は鍵を開けてドアに背を向けた。

 まだ涙が止まらない。


 後ろで宮川が部屋に入ってきたのがわかる。

 バサッとカバンが置かれて後ろから抱きしめられた。


「アリス……」


 私ってばバカだ。

 寂しがるアリスを演じればよかっただけなのに、私自身がそのまんま寂しくなっていくなんて。

 こんなことになるなんて……。


 うっうっ……。

 寂しくて、寂しくて、ひとりおいて行かれるのがたまらなく辛くて……結局自分のことばかりになってる。


 ふぇっ、ふぇっ。

 これ以上、私ばかり泣いててもいけないのに、本当に泣いちゃだめなのに……。


「アリス!」

 ぐいっと正面を向かされた。


 やだ、見ないで、見ないでよ。

 また強く抱きしめられた。


「我慢するなよ。泣いていいから……」

「うっ、あっ、うっあ~~~」


 声を上げて泣いた。

 思いっきり、泣いた。

 もう止められなかった。


 私の頭を抱え込んでいる宮川の腕の温かさ、胸の熱さが伝わってくる。

 しばらく声を上げて泣いたら、なんとなく落ち着いてきた。

 宮川はそんな私を抱きしめたまま、ベッドにもたれて座った。


「なにがあったんだ、アリス。こんなに泣きたくなるまでひとりで抱え込むなよ」

 宮川の暖かい言葉に自分か情けなくなった。

 こんな計画立てて、みんなを振りまわして、本当に私ってバカだ。


「話せないこと?」

「……そうじゃないけど……」


 でも情けなさ過ぎて、こんな計画立てたなんて言えなかった。

 今はただ一緒にいたかった。


「もう少し一緒にいて。ただそれだけでいい」

「アリス……」


 私が言った言葉がどんなにわがままで自分中心かってわかってる。

 でも今は押しつぶされそうな寂しさをなんとかしたかった。


「甘えんぼっ。わかったよ。一緒にいてやる。ほんとうにかわいい奴」

 そんなんじゃないよ。

 かわいくなんて全然……。


 抱きしめられたまま、静かに時間が流れていく。

 遠くでどこかの犬が吠えてる。


「ずっと一緒にいてやりたい。ずっと一緒にいたいよ。だけどそうもいかないだろ。お母さんに心配かけるから、少し我慢しないとな」


「ごめんなさい……」


「謝るなよ。こんな気持ちにさせたのは俺だもんな。俺がもっと大人だったらずっと一緒にいてやれるのかもしれない。でも俺はまだ……これからいろいろやって、おまえをしっかり支えられる大人にならないと……。そうなるまで待っててほしいんだ」


「……なんだかプロポーズされてるみたい」

 くすぐったくなるような言葉にそんなことを言ってしまった。


「そのつもりで言ってるんだけど」

 前髪を掻きあげてた。

 言ってて照れてる。


 クスッ。

「やっと笑ったな」


 一緒にいるから笑える。

 ひとりじゃないから。


「さて、こうしててお母さん下で心配してるし、そろそろ帰るから。おまえは見送らなくていい。また泣かれたら困る。俺、お母さんに挨拶してくから。今日はもう寝ろ」


「うん」


 宮川は帰っていった。

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