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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
36/156

no.36

 ******



 窓から気持ちいい風が吹き込んでくる。

 グラウンドではサッカー部の練習が始まっていた。


 私は生徒会室にいた。

 なんとなく放課後はここで過ごすことが多くなった。


 部活に入っていないって理由もあるけど、ここは校庭とグラウンド、その間を正門に向かう道が見えて一番いい風景が楽しめる。


 ガラッ。


「あら、今日はアリスだけしかまだ来てないのね」

 川上が入ってきた。

「あっ、はい」


「ヘンよねぇ、私達。別に仕事があるわけじゃないのに皆なんとなくここに集まっちゃうのよね」


 校内が大騒ぎの渦だったあれ以来、生徒会の6人はいつもここでワイワイしてる。

 1学期はもう特に行事はないし、やることもないんだけれど。


「穏やかだよね。ここから見える風景って。帰っていく人や部活してる人達が見えて学校にいるんだなぁって感じ。アリスもそう思って眺めてたんでしょ」


「はい」

「そうそう、アリスに教えてあげる。私ね、大里くんと付き合うことになったの」


「えっ、え~~~~~っ!」

「やだ、そんなに驚かないでよ」

 だってやっぱり驚きだ。


 大里の気持ちは最初からわかっていた。

 だけど川上は宮川と一日お付き合いをした仲なのだ。

 それなのにどうしてこうなっちゃうのかなぁ。


「私ね、知ってたの。大里君の気持ち。体育祭の時かなぁ。はっきりそうだってわかったのは」

 ここにも体育祭の余波が……。


「でね、昨日、帰りに告白されちゃった。私の気持ちがどのくらい大里君を好きか、まだわからないけど、でも大里君といると自然でいられるの。そういう気持ちちゃんと伝えた上で、それでも付き合って欲しいって」


 川上の長い髪が風にさらりと揺れた。

「そういうのもいいかなぁって。あなたたち見てて思ったの」


 なんだか本当に校内がカップルで溢れそう。

 これで生徒会のみんなカップルになっちゃったんだ。


「やっほー、今日もラブラブの俊平と由美で~す」

 明るい声で入ってきたのは高田と山内。


「あなたたちねぇ、ちゃんと会計報告できてるんでしょうね」

 川上が言った。

「もっちろんよね、俊平」


「そうそう。ちゃんと仕事はやってますよ。期末考査が終わったら総会やって今学期の会計報告するんだろ。もうなんも行事ないからやっちゃったもんね」


「そっ、それならいいんだけど」

「あ~ん、でももうすぐ鬱陶しい期末考査」


「みんなあったまいいから焦らなくてもいいんだろうけど、俺達は結構必死なんだよな」

 高田が情けなさそうに言った。


「いつもそんな風にべたべたしてて勉強もしないからでしょ」

 川上が突っ込んだ。


「だって俺達ラブラブだもんなぁ~」

「そっうよぉ、俊平」


「も~、勝手にやってなさい」

 呆れたようにいいながら、それでもなんか微笑んでる川上の表情が優しく見えた。


 しかし、そっかぁ、期末考査忘れてた。

 あんまり穏やか過ぎて。

 ちょっと焦ってしまった。

 勉強もしなくちゃ。


 ガラッ。


「よっ」

 ドアが開いて、顔を出したのは宮川。

 その後ろから入ってきたのは大里だった。


「あっちいなぁ。べとべとしてきもちわりぃし。早く梅雨あけねーかな」

 どさっと椅子に腰掛けるとシャツのボタンを外してノートをパタパタさせて宮川が言った。


「あっ、じゃ、私みんなの分、飲み物買ってきますね」

「私も行くわ。一人じゃ持てないでしょ」

 川上が一緒に来てくれた。


 ピッ、ガラガラ~ン。

 購買部の前にある自動販売機でジュースを買う。


「大里君はこっちのコーヒー」

「あれ、先輩。大里先輩の好み知ってるんですね」


「えっとねー、まっ、なんとなく見てたしね」

「宮川君はブラックだっけ?」


「はい」

 なんだぁ、結局ふたりともお互い気になってたってことなんだぁ。


「あれっ、アリスの友達じゃない。いつも一緒にいる子」

「えっ?」


 最後の缶を取り出して川上が指差した方を見た。

 購買部の横は庭園になっていて、その木の間に人影が見えた。


 目を細めた。

 この距離だとちょっとわかりづらい。


 肩の上で綺麗に切りそろえられたストレートの髪。

 横顔も確かに沙耶。

 一緒にいるのは沖野だった。


 あっ!


「あの子、彼氏いたんだ」

 

 私は勢いよく背中を向けた。

 すたすたと歩き出したあとから川上が着いてくる。


「なによ、友達のキスシーン見ただけでしょ。ショックだったとか? それとも彼氏いるの知らなかったの?」

 話しかけてくる川上に言葉を返す気持ちの余裕がなかった。


 別にショックだったとかじゃない。

 二人が付き合ってることも知ってたわけだし。

 でもなんだろう、このもやもやは。


 生徒会室の前まで来て、足が止まった。

「気にすることないよ。彼女だって子供じゃないんだからさ」


「気になんかしてません!」

「ヘンなアリス」


 そう言いながらドアを開けて入っていった。

 私も慌てて部屋に入った。


「はい、コーヒー」

「おーっ、サンキュ」


 私は自分のコーヒーを握り締めたまま、宮川の隣に座った。

 隣では音を立てて、コーヒーを飲んでいる宮川。


 正面にいつものようにはしゃいでいる高田と山内。

 右手に川上と大里が座っていた。

 視線をぐるっと回して、また手元に戻す。


「川上もOKだろ。じゃ、早速俺、叔父さんに頼んどくからさ」

「頼むな、高田」


「まっかせなさ~い」

「楽しみだなぁ」

「ほんとに!」


 みんな楽しそうに話してる。

 なんだか気持ちが浮かない。


 さっき見てしまったシーンが頭に蘇る。

 やだな、こんなの。

 沙耶の幸せそうな顔、本当なら喜んでいいのに。


「どした?」

 ボソッと横で宮川が言った。


 私は頭を振るだけで精一杯だった。

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