no.35
抱きしめられてそのまま体重かけられて、すーっと倒された。
ま、ま、待ってぇ~~~。
「俺、アリスが好きだからおまえが欲しい」
目の前に先輩の顔があった。
なんだかちょっといつもと違うよ。
ね、ちょっと……。
「おまえが欲しい」
唇が重なる。
長い前髪が瞼のあたりでさらさら触れててくすぐったい。
せ、先輩。
そろそろ苦しい。
ね、息継ぎ、息継ぎ……。
腕をバタバタさせた。
な、なんで先輩は苦しくないんだ。
私、窒息死しちゃうよ、ね、ね~~~。
ハァハァ。
やっと離してくれて必死で息吸って。
でも熱い息が耳元にかかって、今度は耳にキスされた。
だから、耳はくすぐったい~~~っ。
「おまえの弱点、耳……だよな」
何度も何度もキスされて、もう気が遠くなりそう。
お願い、もう、やめて……。
思いきって先輩の胸を押したつもりだけど、びくともしない。
「そんなことしてもだめだよ。もう熱ないんだから」
今度は反対側の耳。
何度も何度も……。
「せ、せんぱい……もう、や、やめて。気が変になっちゃ……」
最後まで言わないうちに唇で塞がれてしまった。
うそ~~~っ、また熱出ちゃったんじゃないの~~~。
そのとき、いきなりパッと離れてくれた。
「これ以上してると本気にとまんなくなりそーだからやめっ」
前髪をかきあげて、そっぽ向いて言った。
私は慌てて起きあがって座りなおす。
でも、今度はちょっと先輩から離れて。
「怖いか?」
「う、うん」
「じゃ、もうしない」
「えっ、しないの?」
って思わず口走ってしまった。
や、や~~~~~っ。
抱えた膝に顔を隠した。
「ブァーカ。今より先のは、あとのお楽しみにとっとくってことだよ。こっち来いよ」
「やだっ」
自分で言っといてものすごく恥ずかしかった。
「んじゃ、俺が行く」
丸まってる私をまるで包み込むように後ろに座った。
「おまえが好きだから大事にしたい。俺はそう思う。安心しろ」
「うん」
今はね、抱きしめられてるのが一番安心する。
これが一番落ち着く。
「あせっちゃだめだよぅ。アリスはやっと本当の自分になって歩き出したばかりなんだからぁ。まだやっと子供の作り方、知ったばかりってくらいなんだからぁ。アリスを泣かせたら許さないわよ、お兄ちゃん!」
えっ?
先輩?
「ってね、今日の昼休み、沙耶に呼び出されて言われたわけよ。んなこと言われたらかえって欲情しちゃうんだけどねぇ。でもアリスに泣かれるのは俺も困るから、さ」
や、やだ。
沙耶ってば、だからお弁当食べたあといなくなっちゃったんだ。
「で、でも、なに、それ」
「ん?」
「子供の作り方知ったばかりって……」
「要するにアリス自身がまだお子ちゃまってこと」
「え~~~~~っ、ひっど~い」
「じゃ、それ以上のこと知ってる?」
「えっ、それ以上のことって? な、なにかあるの?」
「おいおい、マジかよ」
げっ、私、ホントにお子ちゃまなわけ?!
「それ以上のことはお兄ちゃんがちゃんと少しずつ教えてあげなくちゃだめなんだからね、わかったぁ。と沙耶は申しておりました。チャンチャン。はー、ホントかよぉ」
うっ、うっそ。
なんなの、なんなのぉ~~~っ。
「はぅ」
きゃっ。
首筋にかじりつくなぁ~~~。
「はぅ、はぅ、はぅ」
や、やめてぇ~~~。
「はぅはぅはぅはぅ~~~~」
ぞくぞくしちゃうよぉ~~~~。
あははははははっ。
私で遊ぶなぁ~~~。
もうショック受けてるのに。
ぐすん。
明日、沙耶に聞こう。
絶対聞こう。
知らないなんて絶対いやだぁ~~~~~。
「ふたりともぉ、ご飯できたわよ~、降りてらっしゃ~い」
「ほ~い!!」
明るく返事なんかして、く、くやしい。
「ほら、膨れっ面さげてないで、行くぞ」
プンッ。
も~知らないもん。
「お姫様。ちゃんと俺が教えてあげるから怒らないでくださいな」
「ほんと?! 教えて、ね、教えて」
「ゆっくりと、ね~」
「だめぇ、今、教えてぇ」
「そうはいかないよぉ」
「やだ、やだぁ、今ぁ」
「ねえ、ご飯だってば」
ドアを開けてママが立っていた。
「なに、鬼ごっこしてんのよ」
ボッ!
「すみません。いや、楽しかった。じゃ、おいしいご飯、いただきます。いこ、アリス」
ぐぴぴ。
はぐらかされちゃったぁ~~~。
やっぱり絶対沙耶に聞くもんね、絶対!!




