no.34
「私、そんな風に見られてたなんて思いもしなかった。ただなんだか自分が変わっていくのはちょっと怖かったし、一番、恥ずかしかった。自分で変わろうとか思ったんじゃなくて、私の場合、変えようとしてくれた人がいたから」
「会長だろ」
「そ、そうだけど、でも沙耶もそうだったよ。友達になってくれて、私を好きだって言ってくれた。かわいいって。そしてかわいい私をみんなに見せたいって。それで沙耶と一緒にいたら、それまでずっと力入ってたとこ、楽になれそうって思った」
「アリス……」
「沙耶、ありがとうね。だから私、踏み切れたんだもん。最初ペースを乱されるから会長のこと、嫌いだったの」
えーっ?!
みんながざわついた。
「でもね、振りまわされてて、なんだか楽しいって気付いて、沙耶の言葉もあって……だから私変われたの。っていうか地がでちゃったっていうか……」
わっははははっ!!
「かなり恥ずかしかったんだよ。地の私をさらけ出すの、はじめてだったもん。でもね、恥ずかしいと思いながら、でもすっごく楽しかった。だってそんな私をみんないろんな形で受け止めてくれてたんだよね。嬉しかったんだ」
また涙が溢れてきちゃった。
「そーだよ。地が一番だってぇ」
「おまえがゆーなよ」
あはははっ。
「楽しいの。みんなといるのが楽しいの。学校に来るのがこんなに楽しいのってはじめてなの。だからお礼を言わなきゃいけないのは私のほう。本当にありがとう」
「アリス、よかったね」
「うん」
涙、止まんないよ。
「は~い。お兄ちゃんのかわりに私の肩をかしてあげよう。存分に泣いていいよぉ~」
沙耶に抱きしめられた。
きゃ~~~っ。
わはははっ。
嬌声やら笑い声やらごちゃ混ぜの騒ぎの中、とても大切なものを知った一日だった。
******
「そっか、よかったな、アリス」
「うん、最高の一日だった」
「俺も……」
「学校っていいね」
「ああ。これからいろんなこと一杯やって、みんなにお返ししなくちゃな」
「うん。がんばる」
コンコン。
「入るわよぉ」
ママが部屋に入ってきた。
「どうだった。学校は」
「ママってば内緒にしててずるいんだから」
「だって、沙耶ちゃんに言わないでって口止めされてたんだものぉ。それにそのほうがあなた達にインパクトありそうでちょっとワクワクしちゃったの」
「まいったな」
「うふふっ、私のほうが一枚上手ね。じゃ、ごゆっくり。食事ができたら呼ぶわね」
パタン。
「なんか、今日はまっすぐ家に帰るはずだったんだけど、な。こっち来ちまったよな」
「いいんじゃないですか。こんな最高な一日だったんだもん。先輩だけひとりになんてできないです」
こんなこと言いながら抱き着いちゃった私って。
えへへへっ。
「アリス……」
「うん?」
「おまえ、ホント、こんだけのもん、よく中に隠してこれたよな」
「な、なによ、それ」
「いや、今まで出会った奴ら、損したよなぁ、つーか、俺ってすっごい得したよなぁってさ」
「あ~っ、お調子者!」
「こらっ、先輩に向かってそれはないだろう」
ブーッ。
「こういうときだけ先輩ってゆーのずるい」
ははははっ。
きゃははははっ。
本当にお腹の底から笑えるね。
「……な、アリス」
「うん?」
「俺さ、熱に浮かされておまえの部屋に行きたいって言ったよな」
な、なにいきなり。
「う、うん、言った。3回も……」
「あの時、期待した?」
「……な、なにを……」
「とぼけるな」
えへへへっ。
「えっとね、最初はわかんなかった」
「やっぱなぁ、おまえって結構ニブイ……」
「なんでよー」
「んで、2回目は?」
「えっとえっと……すっごくいろいろ考えた、と思う。なんだか先輩、すっごくわかんない顔してて、なに考えてんのかなぁって。なんかちょっと危ないっぽかったし」
「ドキドキした?」
「そーゆーこと聞かないでよ」
「んじゃ、3回目は」
「もう考えるのよした。だって先輩がそうしたいって言ってるんだもん」
「なるほどね。じゃ、覚悟は決まってたわけだ」
「えっ、なに?」
「だからHする覚悟」
耳元でそういうこと言わないでぇ~~~っ。
「覚悟、できてたら、熱ある先輩突き飛ばしたりしなかったもん」
「そっか。じゃ、今は」
耳元ってくすぐったいよ。
先輩っ。
「今は?」
「や、や、や~~~~っ」
フガッ。
口を押さえられちゃった。
「こら、そんな大声だすんじゃない。お母さんに聞こえるだろ」
「だって、先輩がやらしいことばっか言うからだもん」
「でもさ、好きなもの同士、欲しくなるのって当たり前なんじゃない?」
「そ、そんなこと、言ったって……」
やっぱ、恥ずかしいもん。




