no.31
学校のフェンスが見えてきた。
フェンス越しに仰々しく生徒達が立っているのが見えた。
何事?
正門の前に立っている沙耶が早くと手招きしていた。
その隣で沖野も優しい笑顔。
沙耶、沖野君とうまくいってるんだね。
よかった。
1歩1歩近づくにつれてドキドキが激しくなった。
カバンを持つ手も震えてる。
宮川が握る手に力を入れてきた。
大丈夫だって言ってくれてるみたいに……。
「ささっ、どうぞ、中へ」
昇降口までずらっと並んだ生徒達。
まるで高級ホテルで、お客様をお招きしたときみたいに、みんな綺麗に並んでる。
なんだか、手を握っているだけじゃ押しつぶされそうで思わず、宮川の腕にしがみ付いてしまった。
せぇ~のぉっ!!
いきなり掛け声がして、正面の校舎の屋上から、なにか垂れ幕のようなものが勢いよく落ちた。
きゃっ。
怖くて目を瞑る。
わぁ~~~~~。
一斉に歓声が上がって、それにかぶさるようにパンパンッと破裂音がたくさんした。
「や、や、怖い、先輩、怖いっ」
「おい、アリス、ゆっくり目を開けてみろ」
「やだ、なに、これ。怖いもん」
「ほら、しっかり抱いててやるから」
宮川は肩を抱きしめて、頬にもう片方の手をあてた。
「あけてみろよ」
一度ぎゅっと瞼に力を入れてから、ゆっくり開けてみた。
正面には3階建ての校舎があって、その屋上から地上すれすれまである大きな垂れ幕が下がっていた。
『お帰り!! 学校公認カップル。
生徒会長 宮川基樹
副会長 桐原亜李栖 』
二人の名前が相合傘の下に書かれていた。
歓声が一段と大きくなる。
屋上から色とりどりの紙ふぶきまで飛んでくる。
や、やだ。
なに、これ……。
「よかったな、アリス。みんな大歓迎してくれてるぞ」
溢れてくる涙で、大きな垂れ幕の字まで見えなくなっちゃった。
ふぇ、ふぇっ……。
「こんな、こんなの、幸せ、すぎちゃって、やだよぉ~~~」
張り詰めていた気持ちが音をたててはじけてしまって、体から力が抜けていった。
「おいおいっ」
宮川の腕にしっかり頭を抱えられて、泣いちゃった。
周りの冷やかしの声まで、なんだかあったかく感じちゃった。
キィ~~~ン。
「こっらー。おまえらぁ、もう始業ベルはとっくになってるぞ、さっさと片付けて教室に入れぇ~」
思いっきり大きな声で放送が入った。
「やっだぁ、これ、生活指導の坂田の声だぁ」
わはははっ、きゃはははっ……。
笑いの渦に紙ふぶきが舞う。
信じられない光景に涙溢れて止まらない。
こんなことしちゃう、みんなって本当にすごいよ。
本当に……。
「こらー、教室に入れぇ」
「こら、そっちもだぞ」
先生方が出てきて、みんなは明るく返事して、それぞれ持てるだけのごみを拾いながら教室に向かう。
そんな中をゆっくり歩いて昇降口に着いた。
医務の先生がくわえタバコで立っていた。
「おめでと」
「なんか、すっげー騒ぎになってんのな」
「あなた達がみんなを引きつけたんだよ。これからもがんばれって」
「ああ」
「ほら、弱虫お姫様もだよ」
私はしっかり頷いた。
「アリス、教室行こう。お兄ちゃん、ここからは私がアリスを預かるからね」
沙耶が私のカバンを持ってくれた。
「アリス、大丈夫か」
「うん、だいじょぶっ!」
「沙耶、頼むな」
「うん。アリスってほんとかっわいい」
沙耶に抱きつかれて、思わずポッ。
がやがやとみんながそれぞれ教室に戻っていく。
すれ違いながら、みんなが「おめでとう」って声を掛けていく。
私も沙耶と一緒に教室に行った。
「おーっ、この、幸せ者~」
「アリス、おめでとぉー」
なんだかわかんないけど、「ありがとう」を繰り返しちゃった。
「はい。席に座って」
机の上に花束まであったりして。
でも一体どうなってるのかな。
こんなに大騒ぎして。




