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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
3/156

no.3

 ******



 私が通う聖桜高校は1学期の中間考査と期末考査の間に体育祭をやる。

 今回はそれが議題。

 そこで、宮川はとんでもないことを言い出した。


「だから毎年、おんなじじゃおもしろくねえって言ってんだよ。赤・青・白で戦うなんて中学までで沢山だ」

「だけど先生方がどう思うかしら」


 開けた窓から吹き込んできた風に揺れる艶のるストレートの長い髪。

 川上が言った。


「ここはひとつ、頼んでみるさ」

「で、なにがやりたいんです。会長は」

 大里が言った。


「ペア対抗ってのはどうだ」


 えっ?!

 なに、それ……。

 私はもちろん他の4人も固まったまま、宮川を見つめた。


「だからな、男女ペアを組むんだ。好きな奴と。そんで競技に参加して、たくさん勝った奴らが優勝ってな。おもしれーだろ」

 

 ど、どこがおもしろいんだ。

 そんなこと先生方に却下されるに決まってる。

 バカじゃないだろうか。


「まぁ、間違ってそういう体育祭をやるとして、どうやってペア決めるんだよ、会長。俺らみたいに付き合ってるならまだしも、な、由美」


 高田がポニーテールにしている山内の肩に腕を回しながら言った。

 生徒会室でそんなことしないでほしい。

 けじめくらいつけてよ~~~。


「そうだな。みんなくじ引きってわけにいかないしな。そんなんじゃ、みんなやりたかねーだろうし」

「大体、男女の数、合うんですか?」


「そりゃもう調べた。都合よく男女同じ数。だからあぶれる者もいないってわけだ」

 いつ調べたんだ、そんなこと。


「アンケートってのはどうだ。全員に……そうだな……」

 宮川は言いながら破いたノートになにか殴り書きした。

「こんなのはどうだ」


 その紙には学年クラス・名前を書く欄があって、その下に付き合っている相手がいるものはその名前を書く・付き合っていないがペアを組みたい相手がいる場合はその名前を書くという2つの項目が並んでいた。


「これを出してもらって俺達が組み合わせる。これなら付き合ってる奴らは最高のペアが組めるし、好きな奴がいるって奴もこれがきっかけでーなんてことになるかもしれないだろ」


 やっぱりものすごいバカだ。

 誰がこんなもの書くんだ。

 私は我慢できなくなった。


「すみません、会長。それって学校中に告白しているのと同じです。みんな書けませんよ」

 私が意見を言っている横で、なにやらさっきの紙に書いていた宮川が紙をひらりと私の目の前に出した。


 それには『これを元にペアを組む。不正なし。なお、これを見るのは生徒会長・宮川基樹、副会長・桐原亜李栖の2名。ここに誓約する』と書き足してあった。


「これならどうだ」

 もう呆れて言葉が出ない。


「まぁ、ペアを組みたい奴がいない者は出さなくてもいいってことで、そっちは俺らが自由に組んでもいいだろ」

「それ、多分先生方に却下されちゃいますよ」

 大里が言った。


「んじゃ、待ってろ。OKとって来るから」

 そう言って宮川は生徒会室を出ていった。

 

 は~っ、本気かしらね。


「ねえ、桐原さん、OK出ると思う?」

「いいえ、川上先輩。私、無理だと思います」


「そうよね。まったく宮川くんはとんでもないこと言い出して。この調子で1年振り回されるのかしらね。まいっちゃう」

 川上が大きくため息を漏らした。


「いいじゃない。行事は楽しいほうがいいわ。ね、俊平」

 山内が高田の腕に抱きつきながら言った。


「そうだよな。だいたい基樹が会長になったってことで、みんなが期待してるのはこういうことだと思うぜ。なにかやらかしてくれるってね」

 高田は、山内のポニーテールを弄びながら言った。。


 そうかもしれない。

 ただ勉強ができる、スポーツができるってだけの宮川じゃない。

 どちらかというとあの調子の良さが獲得票数の理由だと思う。


 私達が待たされたのは、たった5分だった。


「おーっ、OKとってきたぞ!!」

 ドアを勢いよく開けるなり、宮川は叫んだ。


 うそっ?!

 たった5分でどうやって……。


「いやぁ、俺っていいこと考えるよなぁ。うんうん」

 自分で自分を誉めてる……。


「ちなみにどう説明したんです。この案」

 川上が訊ねた。


「そのままさ。男女ペアでやりたい。明るく健全に体育祭をやりたい。高校生の恋愛は健全でありたい!!ってね」


 あほっ。

 立ちあがって握りこぶしまで作ってみせて、そんなこと叫んできたんだ、こいつは。

 待っていた私と川上、大里は頭を抱え、高田と山内は抱き合って喜んでいた。


「そんでな、せっかくの高校生活、たくさんの思い出を作るべきだって。もしこれでペアができたら大学にこのままあがりたいって奴も増える。やっぱ離れるのはやだしなぁ。そうだろってな」


 なんか半分脅迫のような……。

 聖桜高校は大学の付属。

 でもここ数年頭のいい人ほど別のいい大学受けちゃって、ここの大学を受ける人が減っているって話を聞いた。


 もちろん先生方は自分の教え子が有名一流大学に入ればそりゃ鼻高々だけど、ここの大学に入る人間が減るってのも困るんだろうな。

 こいつはそういう弱みに付け込んでいるってこと?


「まっ、先生方のOKが出ちゃったんじゃ、仕方ないわね」

 不満そうにしていた川上が笑顔を見せて、宮川を見た。


「それ、貸して。アンケート用紙作るわ」

「よっしゃー。行動開始!! 明日には全クラスから実行委員を選出してもらうように先生には頼んどいたから、あとはそいつら集めて、その用紙配らせて……」


 話はどんどん進んでいってしまった。

 本当に振り回されそう。

 いいえ、すでに振り回されている。

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