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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
25/156

no.25

 な、なんだか熱い。

 ドキドキがまた始まった。


 抱え込んだ私の頭に乗せてる額。

 ちょっと荒くて熱い息が耳まで届く。

 少し怖い……。


 部屋に入ってドアを閉めた途端、宮川が私を抱きしめた。

 い、痛いよ、先輩。

 どうしたの?


「先輩……」

 宮川の重みで二人して床に倒れた。


 咄嗟に宮川が私の頭をかばったから、どこも床に打ちつけずにすんだ。

 けれど宮川はどこかぶつけたんじゃないだろうか。


「せ、先輩。どこもぶつけなかった。ね、大丈夫?!」

「いいから黙ってろ」


 えっ、先輩……。

 唇が首筋に触れる。

 熱い吐息が降りかかる。

 怖い……。


「せ、せん、ぱ、い……」


 どうしちゃったの。

 こんなこといきなりして、先輩!!


 唇がゆっくりと移動する。

 しっかり両肩を掴まれて動けない。

 でも怖い。


「や、やだ……先輩……やっ!!」

 思いっきり宮川の胸を両手で突いた。


 やっと離れた宮川は、私の目の前で仰向けになったまま、荒い息をしている。

 ヘンだよ、先輩……。


「ア、リ……ス……」

 ハァハァ。


「先輩、ね、先輩!!」

 宮川の体に触って、改めてその熱さに気付く。


 なに、もしかして熱があるんじゃっ!!

 慌てて額に手を置いた。

 ものすごく熱い。


「やだ、先輩。しっかりして、ね!」

 ど、どうしよう。


 と、とにかくこのままじゃダメだよね。

 寝かせなくちゃ。


「先輩、お願い、立って。ベッド、ここにあるからそっちに動いて、お願い」

 腕を引っ張って上半身を起こすと、ふらついた宮川をなんとかベッドに登らせた。


「先輩、ちょっと布団……」


 体の下になってしまっている布団を引っ張り抜く。

 宮川の体をごろんとやって中央に仰向けにした。


「やった、寝られた。えっとあとは……」


「わりぃ、アリス……。昨日、帰りに雨に濡れて……すぐシャワーあび、て……着替えればよかったん、だけど……のまま……」

 苦しそうに息を繰り返す宮川。


「苦しいの、先輩。あっ、制服のままじゃ、苦しいよね。……で、でも……えっととりあえずベルトだけ外すね」


 震える指でなんとかベルトを抜き取った。


「あとは私じゃ、できないよ。どうしよう。ごめんね、先輩」


 とりあえず布団を掛ける。

 そして下に駆け下りた。


 まず凍り枕、タオルに包んで。

 それから体温計。

 テーブルの上に出したままになっていた救急箱から、それをとると走りあがる。


「先輩、ちょっとごめんね」

 そう言って頭をあげて凍り枕を頭の下に置いた。


 えっと熱測らなくちゃ。

 震える手を叩いてから宮川のシャツのボタンを外した。

 なんとか脇の下に挟んで、また階段を駆け下りる。

 洗面器に水を入れてタオルも持って今度は静かにあがる。


「これで冷やすからね。ちょっと待ってて」

 ぎゅっと絞ったタオルを額にそっと置いた。


 ピピッピピッ。

 電子音がして、脇の下からそっと体温計を引き抜く。


 39度8分。

 どうしよう、すごい熱。


 汗もすごいよ。

 このままじゃ、濡れててだめなんだよね。

 でも着替えは……。


 パパ、ママ、早く帰ってきてよ。

 祈るようにして、ベッドに着いていた。



 ******



 長い長い時間だった。

 玄関のドアが開く音がして、私は駆け出した。


「ママ、パパ、助けて。先輩が死んじゃう!!」

「なに、言ってるんだ」


「先輩が死んじゃうよぉ~~~っ」

「おいっ、しっかりしなさい。どうしたんだ!」


「宮川君がどうしたの、アリスちゃん!!」

「すごい熱で……どうしよう、ねぇ、どうしよう」


「二階かっ」

「うん」

 駆け上がっていくパパの足音が背中に響いた。


「アリスちゃん、いらっしゃい」

「うん」

 私はママに支えられて部屋に入った。


「こりゃ、またすごいな。アリス、熱は測ったのか」

「うん。39度8分だった。でもそれからもっと上がったような気がする。苦しそうなんだもん」


「落ち着け。ママ、このままじゃダメだ。僕の新しいパジャマと下着。アリスは洗面器にあったかいお湯とタオル!」


「はい! ほら、アリスちゃん、しっかりして。パパももとはお医者さんなんだから、大丈夫よ。パパの言うとおりにしましょう」


「うん」

 下に下りて、洗面器をお風呂場から持ってきた。

 タオルも出した。

 だけどあったかいお湯って、どのくらいあったかければいいの?


「ママ、ママぁ~~~」

「なに?」

 パジャマを抱えたママが飛んできた。


「お湯ってどのくらいあったかければいいの? わかんないよ」

「貸して」

 お湯の加減をしてから、ママはパジャマを持って走り出した。


「半分よりちょっと上くらいになったら止めて持っていらっしゃい」

「うん」


 さすがにもと看護婦。

 いつもオロオロしてるママでもこういうときは違う。


 そして……。

 なんて頼りない私。

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