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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
24/156

no.24

「はい。コーヒー入り……入ったよ」

 さっきからずっとそうして外眺めて、なに考えてるの?

 どうしちゃったの?


「サンキュ。救急箱持って来いよ」


 ドッキ~ン!!

 やっぱりやるの?

 やだなぁ、と救急箱を持ってきても、まだ往生際の悪い私。


「コーヒー、ちょっとそっちにやっといたほうがいい」

「えっ、やだ、もうあんなに暴れないよ」


 じーっと見つめてる疑いの目。


「はい。じゃ一度、キッチンに戻しま~す」

 私はひとつずつカップを持って、キッチンを往復した。


「ここに座れ」

 宮川の正面に座る。


「あの、夜でもいいかなと思うんだけど、ダメですか」

「ダメ! 早く済ませちまわないとおまえを押さえきれなくなりそうだ」


 へっ?


「ほら、手!」

「は、はい!!」

 あっ、叱られる、と思ったけど、返事に気付いてないみたい。


 差し出した手が震え出した。

 やっぱり結構怖い。

 思いっきり目をつぶって、膝の上に握りこぶし。


「怖いのか?」

 私は頭を思いっきり振った。


「怖いなら怖いって言っていいんだぞ。もう誰も見てないんだ」

 大きな手が頭にポンと乗せられた。


 我慢してたのに涙溢れちゃったじゃないよ。

 優しい言葉なんか掛けるから。


「それじゃ辛いだろ。ほらっ」

 顔を上げると大きな背中が目の前にあった。


「俺にしがみ付け」

「え?」


「右腕でしっかりしがみ付け。どれだけ力入れたっていいし、叫んでもいいぞ。ただし、左手だけはいいと言うまで動かすな」


「……うん」

 宮川は私の左腕を脇の下から前に出した。


「いいか?」

「……うん」

 私は右腕を精一杯広げて、宮川の背中に抱きついた。


 そっと包帯が外されていくのが感触でわかる。

 痛くない、痛くない。

 先輩がやってくれてるんだから、痛くない。


「い~~~~~っ!!」

「我慢しろ、早く終わらせるから」

「う゛~~~~~っ」


 歯を食いしばって右腕に力を込める。

 痛くない、痛くない。

 繰り返しおまじないのように言い聞かせて。


「く~~~~~~っ!!」

「よし、薬つけ終わったからあとは包帯巻くだけだからな。よくがんばったな」


「でもまだ痛いよ~~~~っ」

「ああ、すぐ巻き終わるから、ちょっと待ってろ」


 もう終わる。

 もう終わる。


「ほら、終わったぞ。よくがんばった。ご褒美」


 顎にすーっと手が差し伸べられて、ゆっくり顔を上げられる。

 クスッ。

 うっ、また泣き虫の顔、見られた……。


「ご褒美の痛くなくなるおまじない……」

 そういってそっとキスをくれた。


 うっうっ……。

 今頃になって涙がどわっと溢れてきた。


「今頃、泣く奴があるかよ」

「だって痛かったもん。本当は怖かったもん。嫌だったもん」

「わかったわかった」


 そう言って抱きしめてくれた。

 なんだかこの心地良さに味をしめちゃったみたい。


 泣くと抱きしめてもらえるって、それでほっとできるって思えちゃう。

 なんだか今日の先輩はすっごく優しいね。

 そしてなんだか熱い……。


「あっ、コーヒー冷めちゃったかな」

「いいよ、それで」

「うん」


 さっき入れたコーヒーを持ってくる。

 テーブルの上に置いて手を引っ込めようとしたらいきなり掴まれた。


 なに?

 後ろに立っている私を、振り仰ぎながら宮川が呟いた。


「おまえの部屋に行きたい」


 えっ?!


「おまえの部屋に行きたい」


 どうしちゃったの?

 先輩。

 振り仰いでる表情がなんだか虚ろで妙な感じ。


「おまえの部屋に行きたい」

「う、うん。いいけど……」

 立ちあがった宮川がふらついた。


「大丈夫ですか、先輩。どこか具合でも……」

「なんでもねーよ。いいから……」

「う、うん」


 宮川は左腕でしっかり私の頭を抱え込むようにして階段を上った。

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