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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
23/156

no.23

 ******



「桐原~、ご主人がお迎えだぞぉ」

 クラスの男子が叫んだ。


 見ると出入り口に寄りかかるようにしてこちらを見ている宮川がいた。

 なんだか様子がいつもとちょっと違うみたい。

 どうしたのかな?


「お兄ちゃん、はい。これアリスのカバン持ってね。ちゃんと送り届けてね」

「なんだよ、まだ膨れっ面さげてんのか」

「だって、ずっとみんなに笑われてて……」


「ははっ、まぁ2・3日我慢するんだな」

「あっ、沙耶も来る?」

「えっ?」

「ママたち、帰り遅いし……」


 朝晩消毒したほうがいいといった医務の先生の言葉が頭を掠めていた。

 沙耶がいてくれたら、まだ怖くないかも。

 そんなずるいことを考えていた。


「えっ、ごめん。私はちょっと……」

 と言って視線を教室の後ろに移した。

 そこには沖野の姿があった。


「あっ、一緒に帰るの?」

「う、うん。ごめんね。それに私だって二人のお邪魔虫はやだしぃ」

「生意気いってんじゃねーよ」


「そ、そっか」

「じゃ、お兄ちゃん、アリスのことよろしくね」

「ああ。ほら、帰るぞ」


 ついて帰るしかないよねー。

 外は雨。


「傘、させるか?」

「うん、大丈夫です」

「ほら、開いてやるから」


 ポンッ。

 開いた傘を手渡された。

 一瞬触れた宮川の手の熱さにドキッとする。


「買い物していくか。今夜はなに食いたい?」

「う~ん、なんでもいいです。食べやすいもの……」


「そんじゃ、パスタにでもするか」

「うんっ」


「おっ、食いもんにつられて現金な奴」

「もー、やっと学校から出られてほっとしてるんだから、言わないでください!」


「な、おまえの話し方、ヘンだと思うんだけど」

「えっ?」


「ため口と敬語がごちゃまぜ。そろそろ敬語なしにしろよ。沙耶と話すように話せばいいんだ」

「う、うん……」


 別に意識してたわけじゃないけど、やっぱり先輩だしぃ。

 でも普通に話したほうがいいのか……。


 スーパーによって買い物をして家に帰った。

 傘を閉じて、玄関に入ってきた宮川が大きなため息をついた。


 なんだか今日はすごく疲れてるみたい。

 朝、私があんな大騒ぎしちゃったからかな。


「あの、朝、本当にごめんなさい。みっともないことして」

 宮川は、驚いた顔をしたかと思うと、吹き出した。


「あははっ、いや、さすがに驚いたけど。あそこまで騒がれるとはね。おまえ注射も大っ嫌いだろ。小さい頃、まだしてもいないのに騒ぎまくってるって奴だったんじゃないの?」


図星だ……。


「まっ、いいんじゃないか。みんな親近感持っただろ、あれで。でも親近感通り越してたりしてな……」


 真面目な顔して言わないで!


「それよりこれ冷蔵庫入れとくぞ。まだ早いしよ」

「うん。私コーヒー入れますね」


 ぎろっと睨まれた。

 なに?

 コーヒー入れるだけなら、私だって怪我しないでできるよ。


「おまえ、沙耶にもそういう言い方すんのかよ」

「あっ、……」


「言いなおし」

「コーヒー入れるね」

「よし、頼む」


 やっと返事ができるようになったかと思ったら、今度は話し言葉もなのぉ。

 自然に直るまで待ってよぉ。


 コポコポコポッ。

 コーヒーメーカーの音がする。


 冷蔵庫にさっさと入れるもの入れてしまうと宮川はリビングに行って、ソファーを背に床に座り込んだ。

 どうしたんだろう。

 やっぱりいつもと違う。


 コーヒーはまだもうちょっとかかるかな。

「あ、あの、テレビでもつけ……ようか?」


「いや、いい。それより先に指消毒しちまおう」

「え~っ! あっ、今コーヒー入れてるから、それ終わったらね」


 慌ててキッチンに飛びこんだ。

 うぇ~、またあの痛い思いしなくちゃならないなんて嫌だ。

 でも、嫌だ嫌だと思っていてもコーヒーはできて、結局持っていくんだよね。

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