no.21
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RRRRRR……。
電話、なってる。
起きなきゃ……。
ベッドから転げ落ちて、机の上にある子機を掴んだ。
「は、はい、桐原です」
『あ、アリスちゃん。寝てたの? ね、一人よね?』
はぁーあ???
『アリスちゃん? ね、一人なんでしょ?』
「ママ、なに言ってるの? 一人だよ。ママ達いないじゃない」
『だってだってパパったらヘンなこと言うんだもの。ね、宮川君、食事作ってくれて食べて帰ったの?』
「そうだよ。一緒に食べた」
ふぁ~あ。
ねむ……。
『そ、そう。じゃ、今夜も遅くなっちゃうけど帰るからね。大丈夫?』
「大丈夫だってばぁ。先輩、またご飯作りに来てくれるって言ってたもん」
『なんだかちょっと情けないわね。そういうのも。でも大丈夫なのね。じゃ、学校遅れないように行ってね』
「ふぁ~い」
あくびと一緒に返事して、電話を切った。
時計を見て……。
なんだぁ、いつもよりずっと早いんじゃない。
もうちょっと寝かせておいてくれればよかったのに。
昨夜もなかなか寝つけなくて、またまた寝不足じゃないよぉ。
……ボッ!
いきなり宮川のドアップを思い出して、しっかり目が覚めた。
あっ、朝からなに考えてんだろ、私ってば。
頭をフルフルして下に下りた。
わぁ、今日は雨か。
やだなぁ。
そう言えば昨日、先輩が帰った後すぐに結構強い雨、降ってきちゃったんだよね。
濡れないで帰れたかな。
傘、持っていってもらったらよかった。
歯磨きしながら鏡に映っている自分の顔を見て、ボッ。
うっ、ゴックン。
がぁ~~~、歯磨き粉飲んじゃったぁ。
げげ~っ。
歯磨き粉ってまっず~い。
喉がひりひりする。
口直しに何か飲もう。
冷蔵庫を開けて、あれ?
サラダなんてある。
出してみて、まじまじ。
ダイニングテーブルに紙が置いてあった。
『アリスへ
朝食にサラダ作っといたから、ちゃんと食べて来るように
基樹』
やだぁ、先輩。
サラダまで作っていってくれたんだ。
えへへぇ~。
食べよっと。
パリパリっとしたレタスの食感がなんだか新鮮に感じられた。
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それから鏡台に向かって四苦八苦。
髪を後ろでちょっと結びたいけど、どうもうまくいかない。
やっぱり指が1本でも使えないと不便だなぁ。
それでもなんとかなって、家を出た。
学校に着くと、すでに来ていた沙耶に指をどうしたんだと問い詰められた。
「えっ、えっと昨夜ちょっと包丁で切っちゃってさ」
「やだぁ、アリスらしくな~い。なにボーッとしてたのよ」
あははっ。
料理が苦手って知らないのよね。
「う、うん。両親出掛けていなくて、ちょっとね」
「そっか、今夜は帰ってくるんでしょ?」
「うん。遅くなるって言ってたけどね」
「おーい、アリス来てるか?」
「あっ、お兄ちゃん。アリス、いるよ。こっち!」
ボッ!
まだ体から熱が逃げないみたい。
「よし。今日は遅刻しなかったな。おい、指、消毒してきたか?」
「ううん」
「ったく。そんなことだろうと思ったよ。おら、保健室行くぞ」
「なんで」
引っ張られて、体中が熱帯!!
「なんでじゃねーよ。ちゃんと消毒しなかったら、あとでひどいんだからな」
やだよぉ。
触られたくない。
また痛いのやだよ。
宮川は、椅子にしがみついている私をひょいっと肩に担ぎ上げた。
わぁ~!
教室中から声があがった。
は、はずかしいよ。
降ろして!
もう頭の中、パニックになっていた。
「ほら、じたばたするな。行くぞ」
「ぎゃ~~~っ、やだ。痛いからやだ。もう治っちゃったよ。だからぁ~~~」
ガッシッ。
私は出入り口に右手で必死にしがみついた。
自分でもう何してるのか、わからなくなっていた。
「てっめえ、いい加減にしろ!!」
おぉー。
は、はずかしい。
い、痛いのやだ。
でも恥ずかしい……。
「おい、そこの奴。こいつの手、はがしてくれ」
「で、でも……」
「ぎゃ~~~っ、だめ、やめて」
「さっさとはがせ!!」
「は、はい!!」
うわっ、外れちゃった。
「おまえの負けだ。諦めろ」
私は思いっきりじたばたした。
けれどびくともしない。
負けなのぉ~。
「そうそう、おとなしくしてろ」




