表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
20/156

no.20

「く、苦しい」

「わ、わりぃ」


 前髪を掻きあげる宮川の顔が真上にあった。

 なんか真っ赤だよ。


「そんなに見てんなよ。わかったか、俺の言ったこと」

「へっ?」

「ったく。そんな顔して見上げんじゃねーよ」

 

 宮川の膝についていた切ったほうの手が今になって痛くなった。

「い、いちゃ……」


 フーフー。

 息吹きかけて治るものでもないかな。

 でも無意識にそうしてた。


「痛いのか?」

 そっぽを向いていた宮川が振り返って手を押さえた。


「上にあげてろ、すぐ楽になる」

「う、うん」


 痛いのと訳のわかんない気持ちとなんだか、めちゃくちゃだ。

 ぐすん。


「すぐ収まる……」

「うん」


 切った左手を上に押さえられて、宮川の体が私の目の前にあった。

 それがすーっと近づいて、そっと頭を抱え込まれた。


 後ろにソファの背があって身動きが取れない。

 ドキドキが苦しくなって、手の痛みを忘れられる。


 ホントにすぐに痛くなくなっちゃったよ。

 でも今度は胸が苦しいよ。


「アリス……」

「うん?」


 顔を上げると目の前に宮川の顔。

 ドキドキがどんどん激しくなって……。


 近づいてくる顔に……。

 うわぁ~~~っ、先輩の前髪、触れてるよ。せ、せんぱい~~~。


 唇が触れた。

 キっ、キスしてる!

 しちゃってる!

 うわぁ、うわぁ。


 焦ってる心とは裏腹で体はなんだかとろけてしまいそう……。

 で、でももう離して。

 息ができない。

 く、苦しい~~~っ。


「うっ」

 やっと離れて抱きしめられた。


「アリス……好きだから側にいたいんだよ……わかったか」

 耳元で囁かれた。

 くすぐったい。


「わかったか?」

「うん、うん」


 抱きしめられてなんだか壊れそう。

 でも涙が出てきた。

 わぁわぁ出てきて止まらなくなった。


「私も先輩が好き。好き……」

 頭の中で考えるより先に言葉が口から出ていた。


 好きだからドキドキが苦しくて辛かった。

 二人きりだったのが苦しかった。


 恥ずかしいことがたくさんあった。

 知られたくないことがたくさんあった。


 でも側にいたかった。

 いつも声を聞いていたかった。


 いつの間に好きになったのか、自分でもわからない。

 でもいつからか一緒にいたいって思うようになった。


 ドキドキして苦しくなるのに一緒にいたいって思ってた。

 先輩が好きだから……。

 

 溢れて止まらなかった涙が、いつのまにか止まっていた。

 宮川の鼓動を感じて、静かな時間が流れていた。


「そろそろ離してくれるか。遅くなったし、帰らないとな」


 きゃ~~~っ、いつのまにかしっかり抱き着いてたりして。

 は、恥ずかしい~~~!!

 慌てて離れて顔を覆った。


 ふう~~~~~っ。

 宮川は大きく息を吐きながら、前髪を掻きあげた。


「あっち~。その分ならもう痛くないな。俺、帰るから。大丈夫だろ?」

 なんだか随分暑そう。


「うん」

「じゃ、明日も来るから。俺が出たら玄関の鍵かけろ。いいな。もう余計なことしないで寝ろよ」

「うん」


 靴を掃いている後ろに立って頷くばかり。

 言うこときかなくちゃ。

 もう迷惑かけたくない。


 立ちあがった宮川が振り返る。

 玄関と廊下の段差がかなりあるのに、まだ宮川のほうが背が高い。


 上目で宮川を見つめて

「大丈夫です」

 その一言を言うのが精一杯だった。


「アリス……」


 ドキン。

 なんだか名前を呼ばれるだけでもドキドキ。


「おやすみ」

 耳元で聞こえたかと思うとそっと耳にキスされた。

 きゃっ、くすぐったい。


 パタン。


 やだ、おやすみ言えなかった。

 あっ、鍵、鍵。


 ガチャッ。


 これでいいんだよね。

 えっとあとは余計なことしないで寝るっと。


 じゃ、シャワー浴びて寝よう。

 うん。

 シャワーだ。


 ……と歩き出そうとして、がくがくした足がもつれた。

 頭の中を必死で別のことに集中させようと思っても、やっぱりダメみたい。


 嬉しいよぉ~、でも力入んないよぉ~。

 ふぇ、ふぇ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ