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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
16/156

no.16

 教室まで走って、キンコンカンコーン。

 ぎりぎりセーフ。

 結局遅刻すれすれで走りこむって姿を、みんなに見られてしまった。


「よぉ、夫婦登校、見せ付けてくれますなぁ」


 ヒューヒュー。

 男子が冷やかす。


「そんなんじゃありません。誤解しないでください」


「冷やかすの、やめなさいよね。いいじゃない。会長と副会長が仲良くやってくれれば、体育祭みたいに楽しいことやってくれるんだから」


 普段あまり話したりしないクラスの女子。

 意外なことを言ってくれる。


「そうよ。沖野だっていい思いしてんでしょ。感謝しなさいよっ!」


 えっ、沖野君って沙耶とペア組んだんじゃない。

 いい思いってなに?


「ほら、始業ベルなったぞ。静かにしろっ!」

 担任が入ってきて、私は慌てて席についた。


 どういうことだろう。

 沖野君がいい思いしたって……。

 気になる。


 そっと隣の沙耶の様子を窺う。

 なんだか俯いてて、よくわからないなぁ。


 ホームルームが終わった後、私はくるっと向き直って沙耶に聞いた。


「沙耶、さっきのこと、気になるんだけど」

「うん。あのね、今朝なんだけど、沖野君が付き合ってくれって。教室で言うもんだから、みんなに知られちゃって」


 沙耶は恥ずかしそうに顔を隠した。


「やったじゃない、沙耶。おめでとう」

「やだ、そんな大きな声、出さないでよ」


 思わず立ち上がって言ってしまい、周りを見れば視線集中。

 でもなんだか柔らかい視線。

 みんな言葉では言わないけど、ふたりを祝福してる。


 前の席の女子が振り返って言った。


「沙耶だけじゃないんだよ。結構あの体育祭でカップル誕生してるの。かく言う私もそう。だからね、みんな感謝してるんだよ。最初、話しにくいなってちょっと敬遠しちゃったけど、ごめんね。最近、アリス、とっても変わって話してみたかったの。これから友達になって」


「私も」

 いつの間にか来ていたほかの女子まで。

 

 そう言って握手を求められてしまった。

 戸惑ってる私の手を沙耶が握った。


「アリスがアリスに戻ってきたからだよ。お兄ちゃんのお陰だよね。たくさん、かわいいアリス、みんなに見てもらおうよ」


「えっ、う、うん」

「じゃ、友達ね」

 握手しちゃった。


 なんだか事の成り行きについて行けない私だった。

 でもとにかく沙耶が好きだった沖野君と付き合えるようになってよかった。


「あーっ、忘れてた」


 沙耶のことですっかり忘れてたけど、私と宮川先輩は別に付き合ってるわけじゃない。

 それは否定しとかなくちゃ。


「なに?」

 きょとんとして沙耶が見つめた。


「私、別に宮川先輩と付き合ってるわけじゃないよ」

「やっだぁ、朝っからあんなアツアツなのに付き合ってないわけないでしょ」


 今さっき握手したばかりの久保田和美が大笑いして言った。


「で、でも、付き合うとかって別に、ホントだよ」

「きゃ~~~っ、アリスってかっわいいの。なんか全然最初のイメージと違う」


 またまた大笑いされた。

 でもなんだか心地良い。

 こういう雰囲気。


「ね、アリス。お兄ちゃん、アリスになにも言ってないの。付き合おうとか好きとか」

「す、す……」


 どもってしまった。

 真顔で沙耶がヘンなこと言うから。

 顔、赤くなってるよね。

 恥ずかしいなぁ。


「ま~ったくお兄ちゃんったらダメなんだからぁ。ちゃんと今度言っとくからね」

「えっ、やだ。なに言うのよ」


「だからちゃんと好きって言うように。あれだけ行動に出しといて、言うこと言わなくちゃだめじゃない、ね」


 ねって言われても困るけど。

 ……今までのことが思い出されて、ますますのぼせてきちゃった。


「アリスもお兄ちゃんのこと好きなんでしょ。だから変わったんでしょ?」


 ボボッ。


「だから、あの、沙耶、……」

 何が言いたいのかもわからなくなってしまった。


「お兄ちゃんって女子に迫られるのは慣れてるくせに、自分から迫るのはヘタだったんだぁ」

「ちょ、ちょっと迫るって、な、なによ」


「ま、ま、落ち着いて。私がこれからフォローしてあげるからね」

「あっ、私も会長と副会長の応援しちゃう。みんなもだよねぇ~」

「もっちろ~ん」


 こんなんでクラス団結しないでほしい。

 あぅ~~~、なんだかとんでもない話になってきちゃったよぉ。


 でも、なんだろ。

 すごくすっごく嬉しい。

 くすぐったい。

 みんなが……みんなが……。


「ちょっ、ちょっとどうしたのよ、アリス。もう先生来てるよ。ね、気分でも悪いの?」

「どうしたんです、桐原さん」

「あっ、なんだか気分悪いそうなんで保健室連れていきます」


 なに、言ってるの沙耶。

 私、気分なんて悪くない。

 でもなんだか涙がとまんない。


「ほら、立てる?」

「う、うん」

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