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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
154/156

no.154

 その夜、夕食の席で基樹に話を切り出してみた。


「私、結婚してること、話そうかなと思うんだけど」

「えっ?」


 唐突な話で、基樹が箸を止めた。

 私は、まっすぐ基樹を見つめて話す。


「金倉さんに話して、大道寺先生にも話そうかなと思って」

「それでいいのか?」


「うん。高校生で結婚なんてって思われちゃうかな?」

「どうかな。まぁ、早いとは思われるだろうけど、何時までも内緒にしておけないし、話すタイミングもあるしなぁ」


 基樹は、箸をおいて、腕組をした。

 私は、大道寺にモデルを頼まれたことも話そうと決意した。


「あのね、大道寺先生に絵のモデルになってほしいって頼まれたの」

「はぁ?」


「個展を開くのに、私をモデルに描きたいって」

「それで?」


「うん、えっと、断りずらくて……」

「OKしたわけか」


 私は頷いた。

 上目づかいで基樹を見ると、不機嫌な表情。


 基樹は、大道寺が私に好意を持っていることに気付いている。

 だから大道寺との接点があることに少なからず不満を持っているようだった。


 それでも童話を書く上で、どうしても大道寺とのつながりは消えないことも理解していてくれた。


「モデルねぇ~」

 基樹は、溜め息を着きながら、私を見つめる。


「あのね、服、脱いだりするのとは違うからね! そんなのだったら、私だって、引き受けないんだから!!」

 なんだか妙な視線に慌ててしまった。


「そりゃ、当たり前だ。そんなモデルなら、俺も許さねーよ。まぁ、大道寺も大人だしな。紳士的でもあるしな」

「うんうん」


「まあ、いいんじゃねーか。お前がやると思ったんなら」

「大道寺先生のことは尊敬してる。本当に素敵な絵を描くし。だから力にはなりたいと思ってる」


「じゃ、モデルの件は、引き受けるってことでいいけど。結婚のことは?」

「話したい。話した上で、結婚してる私を見てもらいたい。金倉さんにも大道寺先生にも、それに童話を読んでくれる人にも」


「そーだな。いずれ話さなくちゃならないことだし、早めに話した方がいいかもしれないな」

 というわけで、早速、金倉に電話をした。


 話があるので時間を作ってほしいと話すと、明日の夕方以降ならいいという返事だった。

 基樹と一緒に行きたかったので、塾が終わったら、落ち合って、金倉さんに会いに行くことになった



 ******



「えっ、ええーーーーーーっ!!」

 オフィスにいた全員の視線が集まるくらい、金倉が大声を張り上げた。


「うっそ! ほんとなの?」

 私と基樹は頷いた。


「高校生で……。う、うらやましい! あっ、いや、今のは聞かなかったことにして。でもほんとびっくり」


「すみませんでした。最初に話しておくべきだったんですが」

 基樹が頭を下げながら言う横で、私も頭を下げた。


「いやいや、これはなかなかのセンセーショナルな話題にはなるわね」

「騒がれたりしますか?」


「う~ん、いや、いいんじゃないかな。今更、結婚してますって宣伝する必要はないし、本の売れ行きもまあまあだし。あえて公表して、宣伝に使うこともないと思うわよ」


 宣伝に使うって……。

 よかった、使われなくて。


「あと大道寺先生にも話してもらいたいんですよ。アリス、絵のモデルにって頼まれてて」

「あら、そうだったの?」


 私は頷いた。


「俺としては、まあ、アリスがいいのなら、構わないんですけど。童話だけでの付き合い以上になるわけだし、ある程度の距離は取ってもらわないと」


「そうね。あなたの気持ちもわかるわ。奥さんだものね。大道寺先生の入れ込みもちょっとどこかでセーブしたほうがいいかもしれないわね。妙なことになる前に」


「お願いします」

 基樹と私で頭を下げた。


「明日にでも連絡を入れておくわ。早めのほうがいいでしょう」

 金倉は、そう言って、笑顔を見せた。


 それから一週間は、大道寺からの連絡もなく、少し不安な気持ちを抱えたまま、過ごした。


「大道寺先生から、連絡がないの。嫌われちゃったかな」

「結婚してること話したから?」


「う~ん、わかんないけど」

「話すってことは、決めたことだろう。それを知って大道寺先生がどうするかは、彼自身のことだかにな。アリスが結婚してて、それでも受け入れてくれるって思えなければ、それは、アリスが思い悩むことじゃないと思うぞ」


「そうだけど……」

「結婚していることも理解して、それでも描いてくれるって思って貰えた方が、いいだろう。隠して、後で傷つけるより、俺はそのほうがいいと思う」


 基樹が言うことは正論だった。

 大道寺の気持ちを考えれば、内緒にしたまま、後で話すよりは、早めに話しておいた方がよかったのだろう。

 それでも連絡がないことに不安は拭えなかった。

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