no.143
そして気がつくと……ベッドの中だった。
なんかムカムカする。
頭痛い……。
「気がついたか、アリス。気分はどうだ」
ベッドの横で基樹が聞いた。
「あ~、うん。なんか最悪……」
「ほら、これ飲めよ」
上半身を起こしてもらって渡された薬を飲む。
ヘンな味……。
で、なんの薬?
基樹の手にあった薬の箱を取ってみると。
飲みすぎ。
二日酔いだぁ~!!
「な、なに、これ?」
「おまえ、覚えてないの?」
「なにを?」
「なにをじゃねーよ。散々騒ぎやがって」
「なんで? 私……」
あれ、えっと……。
必死で思い出そうとする。
沙耶とコーションに行って、基樹が怖いお兄さんになってて、沙耶も怖い人になってて、で……。
「あ、茜がいた!」
「もう二度と顔も見せねーよ。おまえの恐ろしさを知っただろうし」
「なんで私の恐ろしさなのよ」
「ホントに覚えてねーの?」
だから、茜がいて……基樹が怖いこと言ってたような……あれ?
その辺から記憶がない。
まったくない。
全然覚えてない!!
血の気が引いた。
「茜が来た後のこと覚えてない。ぜんっぜん!」
「うそだろっ、おい」
「頭……痛い……」
「もういいから、寝てろ!」
何かしたのかな、私……。
ちょっと自分で恐ろしくなったりして。
何かすごいことしたような気がするのはするんだけれど、思い出せなかった。
「ところでアリス。おまえ、大道寺の奴んとこで何もなかったんだろーな」
「へっ?」
「へ、じゃねーよ。男一人んとこに泊まる奴あるかよ」
あ、そのことか……。
「何かあったのか、おい!」
「べ、別に何もないよ。先生の友達も泊まったし、先生は徹夜でアトリエ入ってたし。私は疲れて寝てた」
「ホントだな」
「ほんとだってば! いちちっ、頭に響く」
「よし、もう二度と外泊なんかすんなよ。男のとこなんかっ」
基樹は前髪を掻き上げてそっぽ向いた。
「先生は……」
「あいつも男だ!」
「わ、わかったよ」
「アリスは俺のもんだ。誰にも渡さない」
「だ、だからわかったってば」
「アリスは……アリス……」
えっ?
いきなりキス?
ことの成り行きにまだ頭の回転が着いていきませんよぉ。
抱きしめられる。
なんなの?
「どこにも行くな……」
「は、はい」
あ、あの、早くどいて欲しい。
き、気持ち悪い……。
ムカムカが段々上に……。
う゛~~~~~っ。
基樹を突き飛ばして走り出す。
トイレに飛び込んだ。
うげ~っ。
き、気持ち悪い。
頭、痛っい~~~っ。
なんで私、こんなに苦しいのぉ~~~っ。
「アリス、大丈夫か、おい!」
「基樹君、どうしたの? アリス、一体どうしちゃったの?」
ママの声がした。
「い、いや、あの、なんでも……」
なんでもなくないよぉ~~~。
サイッアク!!
この日、一日、気分悪くてげっそりして寝ていた私だった。
******
夕方になって沙耶が来てくれた。
「アリス、大丈夫? これ、買ってきてみたんだけど、飲むと少しすっきりするかも」
「なに?」
ドリンクのビンを受け取って……二日酔いに……ってまた?
「二日酔いって私、昨日、一体何飲んだの?」
「ロック……」
「ロック? お、お酒じゃないよ、それ!」
「だから二日酔いなんじゃない。やだ、なにも覚えてないの?」
「覚えてねーんだと。信じらんねーだろ」
沙耶の顔から血の気が引いた。
一体私、何してきたのかしら。
自分で自分が怖い。
「まっ、二度と飲まないことね。あそこにも行かないほうがいいわ。みんな、怖がるし」
「だろうな」
ちょっとあそこにいた人達って皆、怖いお兄さん達だったじゃない。
なんで怖がられなくちゃならないのよ。
もう、考えるのよそう。
沙耶がマジで恐ろしげな顔してる。