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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
142/156

no.142

 周りを見まわす。

 薄暗いからはっきりわからないけれど、丸いテーブルが置かれたフロア。

 その奥にステージがある。


 ライブハウスっていってたから、そこでライブとかするのかな。

 カウンターもあって、その後ろの壁にはたくさんのお酒のビンが並んでいた。


 結構人もいる。

 でも皆、怖い人達に見えた。


 髪が真っ赤になってる人や、派手な服装。

 怖い雰囲気だぁ……タラタラ。


「なんか飲むか?」

「私、ロック!」


 へっ?

 沙耶の一言に固まる。


 ロックってお酒よね。

 沙耶も飲んじゃうわけ?


「そんなジュースはねーぞ」

「ロック!!」


「おまえは?」

 と聞かれても……。


「沙耶と同じの」

「バカか、おまえ。飲めもしねーくせに」


 むっかぁ~っ。


「同じのって言ってるでしょ!!」

「勝手にしろ。マスター、こっちロック二つ頼む!」


 すぐにグラスが届いた。


「よっ、基樹。珍しく来たかと思えば両手に花だな」

 チンピラみたいなお兄さんがグラスを私と沙耶の前に置いて言った。


「ほっとけよ。うざってー」

「おー、ご機嫌斜めかよ。邪魔者は消えますよ。ごゆっくり」


 なんだか、ものすごーく私だけ、場違いな気がする。

 基樹も沙耶もしっかり馴染んじゃってるんだもん。


 しかも隣で沙耶ってばゴクッと飲んでるよ。

 それってお酒でしょってばぁ。


 もう心臓バクバクなのに血の気が引いてきた。


「お待たせ。まぁ、かわいらしいお子様連れて」

 背中から声がした。


 ぞーっ。

 この声って……。


 基樹の後ろを通って、私の前の椅子に座ったのは茜だった。

 やっぱりぃ……。


「お兄ちゃん、これ、どーゆーことよ」

「おまえは部外者だ。黙ってろ。それができなきゃ帰れっ」


 もう血の気が引いちゃって思考能力消えそうよ。


「やっと基樹から誘ってくれたと思ったら、これはなに?」

 茜は基樹のタバコを持った手を掴んだ。


 それをくるっと外して、なんとタバコを茜の腕に押し当てた。


「な、なにすんのよ、火傷するじゃない!」

 慌てて、ダスターを当てている。


「俺に触るな!」


 なんなの、これ。

 基樹じゃない。

 ここにいるのは基樹じゃない……。


 私は気が変になりそうで、思わずテーブルにあるグラスを掴むとグイッと飲んだ。

 思いっきり勢いよくゴクゴクッと。


「お、おい、アリス、やめろ、おま……飲めねーのに」

 慌ててグラスを握られたけど、結局一気に飲んでしまった。


 ゲホゲホッ。

 喉がひりひりする。


 げ~~~~~っ。

 まずい。


「アリス、なにやってるの……」

 沙耶が背中をさすってくれた。


 私はグラスの氷をひとつ口に入れてがりがり。

 喉、いたっ。


「な~に、お子様がバカなことしてんのかしら?」


 バカにした笑いが響く。

 ムカツク、こいつ!!


「茜、これが最後だ。よく聞いとけ。俺はこいつと一緒になったんだ。おまえとはもうかんけーねえ。俺に近づくなっ。こいつにも手出しすんじゃねーっ」


「な、なによ。そんなすごんだって、全然怖くないわよ」

「聞けねーなら、おまえをぶっ殺すっ。今、ここで」


 ムカツク、ムカツク、え~~~ぃ、ムカツク!!

「うるさ~~~い!!」


 私は立ちあがっていた。

 おっ、なんか体が熱い。


 この目の前の女が無償に嫌いだ!!

 目障りだ!!


「あんた、邪魔!! とっとと消えて!! 二度と見たくない。そのブス面!」

「な、なによ、この子」


「アリス……?」

 沙耶が腕を掴んだ。


 止めないでよ、沙耶。

 私は沙耶の腕を振り切った。


「こいつ、すっごーくムカツク。だから目障り! なにが基樹の最初の女だぁ~~~っ! 今は私のもんなんだからねぇ。見向きもしてもらえないくせに、な~にチョロチョロしてんのよ。あ~っ、みっともな~い!!」


 茜が立ちあがった。


「へっ、さっさと出てけーーーっ!! 邪魔だぁーーーーーっ!! 昔の女なんてさっさと消えろーーーーっ!!」

 私が私でなくなっていた。


「煩いわね、この子!」

「煩いのは、あんただよ!」


 テーブル越しに私の髪を掴んだ茜を私は思いっきり、ブッ叩いていた。


「なんなのよ、このお子様!」

「お子様、ゆーな! もう大人だし。へっ、誰にも構ってもらえないからって、昔の男にすがるなんて、みっともないったらありゃし、あい……」


 なんだかロケつが回らなくなってきた。


「ふん、ばかばかしいっ!」

 そう言って茜は飛び出していった。


「わぁ~い、勝った勝った。べーっだ。うひゃひゃひゃひゃ」

 頭もくらくらするぅ~。


「おい、沙耶。こいつ、酒入るとあぶねーな」

「お兄ちゃん、もう絶対飲ませないほうがいいよ」


「なーに、ごちゃごちゃ言ってんのよ、二人して。喉、渇いら。なんかちょーらい」


 ドザッと椅子に座った。

 じーっと両側から視線。


「あーっ、もう喉渇いらっららぁ」

 私は基樹の前にあるグラスに手を伸ばした。


「あ゛ーーっ、もうダメだっつーの。マスター、水!! 早く」


 そんなの待ってられない。

 沙耶の前にあるグラスに手を伸ばそうとしたら沙耶がサッと取ってしまった。


「ケチッ」

「け、け、ケチじゃないよぉ、もう。アリスったら、なんなのよぉ」


「へっ、らにがよぉ?」

「何がじゃない。こんなのアリスじゃないぃぃ」


「あん? らに言ってんのぉ?」

「ほら、いいから、アリス、水だ、飲め」


「ほぉ~い。喉渇いらぁ」


 ゴクゴクッ。

 はぁ~。


「冷らくてきもちい~」

「もう信じられない、アリスったら」


「ほら、帰るぞ、アリス」

 腕を引っ張られて立とうとしたけれど、思いっきり尻もちをついた。


 なんだか回りの男達が遠巻きに恐ろしげな顔をしてる。

「ら、らに見てんのよ!」


「ダメだな、こりゃ。ほれ、負ぶされ、アリス。沙耶、引っ張り上げてくれ」

「はいはい。ほら、アリス。ちゃんと掴まって」


「お尻、いらかっらぉ~」

「わかった、わかった。あっ、マスター、金、ここ置くから。騒いで悪かったな」


「気をつけてな」

「あーい」

 基樹の背中から手を振る。


 外に出る。

 空気が違うなぁ。


 うひゃひゃひゃ。

 なんだか楽しい。

 きゃはははっ、楽しい。


「今度は笑ってやんの。なんなんだ、こいつは……」

「やっぱ飲ませないほうがいいよ、お兄ちゃん」


「ああ」

「うわぁ~ん、なんら地球が回っれるぅ。ぐらぐら回っれるぅ~~~」


 目が回る……真っ暗になるぅ~~~。

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