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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
14/156

no.14

「お母さんさぁ、おまえのことかわいくて仕方ねーんじゃない? だからかわいいカッコさせたいし、誰からもかわいいって思われたいし、苦手なもんも食えるようになったらとか思うわけだろ?」


「そんなことわかってます。私がはじめて可愛い服は絶対に着ないって言った時、ママは泣いたんだもん。嫌な思いさせてごめんねって泣いたんだもん」


 大きな手が私の頭に置かれた。


「それ、やめてください」

「なんで」


「だって子供みたいな気がする」

「へっ?!」

「大人が子供にしてるみたいな感じで嫌です!!」


 自分で言ってて、なに言ってんだろって思えた。

 でももう止まらない。

 勢いついて、なに言い出すかわからない。


「そんなことないと思うけど、嫌か? 俺、おまえの髪、触るの気持ちいい……」


 きゃ~~~っ。


「あっ、いや、なんか言い方、ヘンだったか」

 宮川は慌てて手を上げた。

 

 ヘンだよ。

 ヘン! 


「わりぃ」


 私は頭をぶんぶん振った。

 嫌なんじゃない。

 でもなんだかよくわからない。


「じゃ、これならいいか」


 そっと手が伸びて、ふわっと頭の後ろに触れた。

 すーっと力が入って、私の顔は宮川の胸にあたった。


 や、やだ……は、恥ずかしいよ、こんなの。


「これならいいだろ」


 いいわけない。

 だってこんなこと、恋人同士がすることだよ。


 ……心が必死に叫んでるのに体は動かなかった。


 両腕で頭を抱え込まれるような格好になってる。

 心臓が壊れそうなくらいドキドキして、どうしていいのかわからなくなった。

 

 もう頭の中もまっしろ。

 どのくらい経ったのか、時間の感覚もなくなっていた。


「落ち着いた?」


 そっと解かれていく腕。

 あったかかった胸が離れていく。

 私、ヘンだ。


「大丈夫か?」

 体から力が抜けて、ふらっとするのを宮川が腕を掴んだ。


「お、おい」

「だ、だ、……」


 大丈夫って言いたいだけ、なのに。

 体にも力入いんない。


「よっと」


 ひゃ~~~っ、なにすんの。

 抱き上げられて、焦っても言葉がでない。


「ほら、今日は疲れたんだよ。俺ももう帰るから、このまま寝ろ」

 ベッドにそっと置かれた。


「じゃな、ゆっくり休めよ」

 顔にかかった髪をよけてくれて、

「お母さんにちゃんと謝るんだぞ。おやすみ」

 そう言ってリュックを持つと部屋を出ていった。


 下で慌ててるママの声がして、玄関のドアが締る音がした。

 私は震えがとまらない体を動かして、布団の中にもぐりこんだ。


 コンコン。

 部屋のドアが静かに開いた。


「ごめんね、アリスちゃん。あの、ママ、ちょっとはしゃぎすぎだったと思うの。ごめんなさい」


 ベッドの横にママが立っている気配がした。

 私の返事を待ってるのもわかっていた。

 だけど言葉がでない。


「ごめんなさい。おやすみ」

 出て行っちゃう。


「ママ……ありがとう。ごめんね」

 やっと搾り出した言葉。

「ううん、おやすみなさい」


 パタン。


 ママのスリッパの音が遠ざかっていった。


 またママを傷つけてしまったんだよね。

 少女趣味でかわいいママ。

 そんなかわいいママが好きだと言っているパパ。


 私だってママが嫌いなんじゃない。

 でも自分が傷つけられたことをママのせいにしたりして、逃げていただけ。

 ごめんね、ママ。


 ドキドキがやっと収まってきた。

 体の熱が少しずつ引いていくような感覚。


 でも、ふっと思い出した宮川のぬくもりがまた体を熱くした。


 なんであんなことするんだろう。

 沙耶は優しいって言ってた。

 こういうことかな。


 それともたくさんの女の子と付き合ったから、こんなこと平気でできるのかな。

 嫌だ、なんだかとっても嫌だ。

 そんなこと考えたくない。


 もう忘れて寝よう。

 訳のわからないことなんて大嫌い。

 だから……。

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