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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
136/156

no.136

「困ります、鹿島さん。今、旦那様はとりこみ中で……」

 赤城さんの声が廊下からした。


 バタンッ。

 ドアがいきなり開いた。


「おいおい、ホントに取り込み中ってかぁ~」

 サングラスをした男性がドアに寄りかかりながら言った。


 うっ……。

 立膝になったままの大道寺の手は、私のウエストにあるスカーフの結び目にかかっているし、私はシャツを持ち上げてるし……。


 カーッ。


「あっ、いや、こ、これは……」

 大道寺は慌てて手を引っ込めて、立ちあがった。


 手で目を隠している。

 私も慌ててシャツをグイッと引き降ろした。


「そ、それよりなんだい。いきなり……」

 大道寺が訊ねた。


「なんだじゃないだろう。俺の個展、忘れてただろう。今日までだったんだぞ。来いって言っといたろうが。あ~?」


 な、なんかこの人、酔ってるみたい。

 サングラスを取って見えた目がなんだかそんな雰囲気。


「あっ、そうだった」

「へっ、俺のことはすっかりお忘れかい。んで、このお嬢ちゃんに夢中になってたってか?」


「いや、それは……」

「珍しいな。おまえが女を連れこむなんてさ。上はプライベートゾーンだったんだよなぁ。絶対他人を入れたりしなかった。なのになぁ~」


 私をじろじろ見てる。


「竜司、下に行こう。アリスくん、ちょっと待っていてもらえるかな」

「えっ、あの、私帰ります」


「いや、待っててくれないか……」

「は、はい……」


 なんでだろう。

 先生に言われちゃうと断れなくなっちゃうんだよね。

 とほほっ。


 でも本当にいていいのかなぁ。

 なんだかまずい気もする。


 ベッドに腰掛けた。

 家に帰りたくないな。


 でもママ心配してるかも。

 ローリエ買いに出かけただけなのに……。


 コンコン。


「失礼します」

 入ってきたのは赤城さんだった。


「濡れたお洋服、乾かしますね」

 そう言ってワゴンの横に置いてあった袋を掴む。


「あ、あの、そんな……」

「旦那様に言われましたので」


「えっ、あ、あの……」

「洗って乾かしておかないと、お帰りになるとき困りますよ」


「あ、あ、そう……ですね。すみません」

「かわいらしい方ですね。最初、お会いしたときにもそう思いました。旦那様もとてもお気に入りのようで」


「えっ、あの、そんな……」

 もう言葉が繋がらない。

 上がりっぱなし。


「それじゃ、お預かりします」

 きゃ~~~っ、ちょっと……。


 結局、濡れた洋服を持っていかれてしまった。

 それから30分くらいして、大道寺が戻ってきた。


「一人にしてしまって悪かったね」

「いいえ、あのお客様は?」


「ああ、下の客間で寝てしまいました。彼は僕の友人です。ああ見えても結構いい奴なんですよ。僕が彼の個展に顔を出さなかったものだから、拗ねてしまったようです」


 拗ねた……。

 子供みたい。


「あ、あの、私そろそろ帰らないと」

 いつまでもいては迷惑になる。


「電話をしておきましたよ」

「えっ?」


「お家の方、心配していると思って。勝手にすみません。金倉さんに番号聞きました」


 そ、そうか。


「今夜はこちらにお泊まりなさい。明日は学校代休だそうだし」

 あっ、体育祭の代休だった。


「で、でもご迷惑に……」

「服もまだ乾きませんよ。何があったのかは知りませんが、あんな風に来た君をこのまま返したりできませんよ。少し気持ちが落ち着くまでいてください」


 髪を優しくなでられた。

「でも、これ以上甘えて……」


「言ったでしょう。君が笑顔になれるような力が僕にほんの少しでもあるなら、僕達が出会った意味があると。先ほどかなり楽しく笑ってしまいましたけれど」


 や、やだ。

 思い出しちゃった。

 恥ずかしい。


「どちらかというと君が僕に笑顔をくれたと言うべきかな」

「あははっ、そんな……」

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