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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
134/156

no.134

 ******



 あっという間に体育祭。

 なんだかもやもやしたままで、すっきりしなかったけれど、それでも汗を流すと気分は少し軽くなる。


「参加するのもけっこー楽しいもんだ。なっ、アリス」

「そうだね」


「アリス、私達、また1位よぉ、ブイッ」

 なんて言いながら沙耶が沖野を引っ張ってくる。


 汗がきらきらしてる。


「おまえら、試合があるからってセーブするはずじゃなかったのかよ」

「いーえ、お兄ちゃん達には負けられないもんね。やるからには全力で、よ!」


「沙耶らしい」

「俺達も負けてらんねーな。ほらっ、アリス行くぞ」


「うん」

 私達は思いっきり汗を流して楽しい1日を過ごした。


 こうしていると嫌だった自分を吹き飛ばせそうだった。

 体育祭が終わる頃には雲行きが怪しくなってきた。


「アリス、今日さ、俺、ちょっと担任に話しあるから、先帰ってろ。雨、来そうだしよ」

「うん」


 私は先に家に帰った。

 汗を掻いたからシャワーを浴びてさっぱりする。


 台所に行くとママがもう食事の用意をしていた。


「今日は疲れたでしょ。スタミナつけなくちゃね」

「うん」


「腕を振るってがんばって作っちゃうわね。楽しみにしてて」

「ママってお料理好きだね」


「あなたたちが喜んで食べてくれるからよ。楽しいの」

 本当に嬉しそうに微笑んで、ママはお料理の続きをした。


 私は部屋に戻る。

 本を読んでいるとママに呼ばれた。


「ごめ~ん。アリスちゃん、ちょっと買い物行ってもらえない?」

「なに?」


「ローリエ買ってきてほしいの。あると思ってたら切れてて。どうしても使いたいのよ。でも今、オーブン使ってるし、出られないから」


「いいよ。いつものお店のじゃなきゃダメなんでしょ」

「遠いけどいい?」


「いいよ。ママがせっかく作ってくれてるんだもんね。じゃ、行ってくる」


 外は雨が降り出していた。

 お天気のせいか、もう随分暗くなっていた。


「う~ん、天気が悪いときに出かけるのは嫌だなぁ。でもママもがんばってくれてるし。おいしいもの食べられるんだから」


 ママがハーブ類を買うのは学校の近くの小さなお店。

 専門店らしくいろいろ品揃えがいい。

 もちろん物もいいらしい。


 いつものローリエを買って、店を出た。

 雨脚が随分強くなっていた。

 風も出てきて傘を持つ手に力が入る。


 近道して帰ろうと公園を横切ることにした。

 街灯の下に人がいるのが目に入る。


 こんな雨の中、何してるのかなと通りすぎようとして、凍りついた。


「あんたじゃなきゃだめなのよ!」

 茜の声だった。


 横に立っているのが基樹なんだとすぐにわかる。

 後姿でも。


「またあの頃みたいに私を抱いてよ。今だって忘れてない。あんただってそうでしょ。忘れられるわけないんだから。愛してるのよ、今も!!」


 ……!!

 茜は基樹の首に抱きつくようにしてキスした。


 頭が真っ白になる。

 喉の奥のほうが閉めつけられて痛い。


 すーっと基樹から離れた茜が私に気付いた。

 冷たい笑いを浮かべる。


 そんな顔で見ないで、嫌だ。


「あんたにとって私は始めての女でしょ。私はそうじゃないけど、でもあんたほどの男にも出会えなかった。あんたを誰にも渡したくない!」


 基樹を見て言っているのに、でも視線がチラッと私のほうに向くのがわかる。

 基樹に言ってるんじゃない。

 私に言ってるんだ。


「あんなお子様じゃ、物足りないはずよ。そうでしょ?」


 基樹はなんで何も言わないの?

 どうしてそこに立っているだけなの?


 嫌だよ、こんなの!!

 私が走り出した後ろで声がした。


「アリス!」

 私がいたこと気付かれた。


「行かないで!!」

 茜の声が耳に届いた。


 私は走って走って……。

 追いかけてくる茜の冷たい笑いから逃げたかった。

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