no.13
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できたものからテーブルに並べて用意。
私は並べるだけなんだけどね。
お料理はしたことないのだ。
ははっ。
「すみません。シャワーまで使わせてもらっちゃって。これもありがとうございました」
ほぇ?!
Tシャツとショートパンツ姿の宮川。
体育着はどうしたんでしょ……。
「いえいえ、パパにって買っておいたんだけど、派手で嫌だって言って着てくれないのよね。よかったわ、着られて」
……こんなシャツあったっけ?
ママに視線を送る。
「いいじゃない。こういうときにってちょっと買ってみたのよ。それ買うのと一緒に」
ママは私のワンピースを指差しながらこっそり耳打ちした。
も~~~っ、なに考えてんだぁ~~~。
「さっさ、食事にしましょ。お腹空いたでしょ」
「じゃ、俺、これ置いてきますから」
部屋に行った宮川を追って、私も部屋に行った。
「ごめんなさい。ママってば本当に……」
「いや、いいよ。なんだか嬉しいや。ずっと一人だっただろ。こうしてかまってもらえるのって気持ちいいもんだなって。おふくろが生きてた頃は結構鬱陶しかったし、いなくなってからも平気だと思ってた。でもさ、こうしていろいろ言ってもらったり、やってもらったりしてるとすごく心地いいもんだったんだって気がついたっていうかさ。わ、わりぃ、辛気臭い話だな」
「ううん、そんなことないです」
「ふたりともご飯、食べてぇー」
下からママの声がした。
「さて、おいしいご飯をいただこうぜ、なっ」
「うん!」
部屋を出ようとして、宮川が私の髪に触れた。
「これ、お母さんにしてもらったんだろ。リボンがいっぱい……ぷっ、かわいいんでやんの」
えっ、どこに、と振り返りしなに姿見に映った髪が……髪がぁ~~~。
なにこれ?!
前からは全然気がつかなかったけど、後ろに小さな赤いリボンが一杯ついてる。
ひぇ~~~っ、なんてことしてくれたの!
「いいんじゃないか、服と合ってて、かわいいって」
笑いを堪えながら、こっちを見ている宮川が手を伸ばした。
「ほら、待ってるぜ、早くいこっ」
ひどいよ、ひどいよ、ママも先輩も。
二人して私をおもちゃにしてるでしょ!
ふくれっつらで食事をしている私にママが言った。
「どうしたの、アリスちゃん。あなたの好きなものばかりよ。嫌いなピーマンやにんじんは使ってないのよ。ね、どうしたの?」
プッ!
隣で宮川が吹き出した。
「そんなことまで言わないでよ、ママ」
「あら、だって、アリスちゃんがとっても不機嫌なんだもの。ママ、なにか悪いことしちゃったのかしら?」
「悪いことばっか!」
「やだぁ、怒らないでよ。ね、アリスちゃん」
猫なで声で言ったって、許してやんない。
「いい加減許してあげろよ、アリス。お母さんだって悪気があったわけじゃなくて、かわいくしたかっただけだろ。それにしてもピーマンとにんじんが苦手って、そのまんまお子様じゃないか、ぶっはははっ」
「でしょ? 未だに食べられないのよ。あとね、ちょっと辛いものなんかだと辛~いって大騒ぎして、わさびやからしも苦手なの」
「ほんとですか?」
ばか~~~っ!!
私は恥ずかしくて居たたまれなくなった。
二人で笑ってればいいのよ。
「あ、アリスちゃん……」
「もういらない!」
「ご、ごめんなさい、ね、アリスちゃん」
私はダイニングを飛び出した。
「アリス!」
「アリスちゃん!」
「あっ、お母さん、俺が。大丈夫ですよ」
「お願いね」
後ろでふたりの会話が聞こえた。
二階に駆け上がり、ドアを閉めて鍵をかけようとしたけど、寸前でドアを開けられてしまった。
「こら、逃げる奴があるか!」
宮川の後ろでパタリとドアが閉まる音がした。
「ごめん。ちょっとふざけ過ぎたよ。怒るなよ」
「ひどいんだから。どうせ私はお子様ですよ。パーフェクトなんかじゃない。苦手なものだってたくさんあるんです!」
「当たり前だろ。俺だってピーマンは嫌いだ」
へっ?
一瞬、顔を見てしまった。
前髪を掻きあげてから、宮川は頬をぽりぽりとやってる。
なんかかわいい。




