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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
128/156

no.128

 ******



 数日が過ぎて、なんとなくぎこちないままの二人の間だった。


「ねぇ、アリス。なんだかこのところ元気ないみたいだけど、どうしたの?」

 沙耶に言われて、お箸でつまんだミートボールを取り落とした。


「な、なんでもないよ」

 とは言ったものの、バレバレだったようだった。


「話しするまでお預けよっ!」

 いきなりお弁当を取られてしまった。


 こんなことされても……。

 大体、基樹が昔付き合ってた女性に会ったってだけのことだし。

 それをこんなに気にしてる私もバカだと思うし。


「私にはなんでも話してよ。アリスが悩んでるんなら私も一緒に悩みたい。そんな顔されてるのに平気でいられないよ。たまらないじゃないっ」


 じわっ。

「ご、ごめんね……」

 涙にじんできちゃったよ。


「アリス……お兄ちゃん、なにかしたの?」

 私は大きく首を振った。


「じゃ、どうしたの?」

 私はポツリポツリと話をした。


「昔の女かぁ……確かに付き合ってた女がいたって不思議じゃないけどね」

「昔のことだし、忘れようって思うんだけど、気になって……」


「お兄ちゃんはなんて言ってるの?」

「なにも……」


「え~っ、なにも言わないの?」

「うん……」


「そっか。どういう付き合いだったのか、聞いちゃったほうがすっきりするような……でも怖いって気もするような。なんとも言えないよね」


 沙耶はため息を着いた。

 私のお弁当を戻して。


「とにかく落ち込んでても仕方ないし、今日帰りに久々にどこか行こうか? 女同士でさ」

「でも、部活は?」


「うん、沖野君に言っとくから」

「ありがと、沙耶」


 

 ******



 私達は一緒に教室を出た。

「どこ、行こっか?」


「とりあえずブラブラ。気になるお店があったら入ろう」

「そうだね」


 話ながら校門まできて、私は固まってしまった。

「どうしたの、アリス?」


 校門のところに今一番会いたくない人が立っていた。

 なんで、この人がここにいるの?!


「あらっ、あなた。この前基樹と一緒だったお子様ね。やっばりここでビンゴだったのね」


 今日も派手な格好。

 アニマル柄のぴったりワンピ。

 体のラインがはっきりし過ぎで怖いくらい。


「アリスに何かご用ですか?」

 沙耶が私を隠すように立つと言った。


「いいえ、お子様には用はないのよ。ふふっ」

 嫌な笑い。

 完璧にバカにされてる。


「おーいっ、アリス!」

 背中から基樹の声がした。

 いやだ、今、来ないでよ!


「ヤバイよ、お兄ちゃん……」

 沙耶が振りかえりながら言ったけど、もう遅かった。

 あっという間に基樹がすぐ後ろに来ている。


「基樹~っ!!」

 彼女のその声と同時に私は沙耶に抱きしめられていた。

 な、なに?!


「なにやってんだよ、こんなとこで」

「ご挨拶ね。会いに来たのに決まってるでしょ。今夜あいてるのよ。だから誘いにきたの」


 震えが止まらなくなった。

「かまうなって言ったろ。帰れよ、あかね」


「いやぁよ~、やっと見つけたのに」

「しつこいわよ、あんた! お兄ちゃん、嫌がってんじゃない。さっさと帰りなさいよ!」


 沙耶の声がビンビン響いた。


「あんた、妹なの? かわいらしい顔してきついこと言うわね。まっ、基樹の妹なら、そっか。でもあんたに関係ないことよ。さっ、基樹いこっ」


 私はそろそろ立っているのも限界だった。

「……沙耶……沙耶……」


 沙耶の腕の中で名前を呼ぶのがやっと。

「アリス?」


「……ここに……いたく……ない……」

 搾り出して言えた言葉はそれだけだった。


「わかった。行こう、アリス。お兄ちゃん、そのけばけばしてる女とちゃんとケリつけてよね」


 沙耶が私を抱きかかえるようにして歩き出した。

 足がもつれそうになるけど、沙耶にすがっていくしかなかった。


「アリス!」

 基樹が呼ぶ声がした。

 でも振りかえれなかった。


 しばらく沙耶は黙って私を抱いて歩いてくれた。

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