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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
127/156

no.127

 ******



 出版の話が進む中、学校では、生徒会の引継ぎ時期となった。

 選挙が終わって新役員が決まる。


「とうとう終わりかぁ。なんだかつまんねえな。まだまだバカ騒ぎしてぇのにな」

 基樹が椅子にふんぞり返って言った。


「なに言ってるんですか。特進クラス入ってる宮川君の言葉とは思えませんね」

 大里が笑った。


「本当よ。なんでも医学部志望だって言うじゃない」

 川上が言った。


 基樹、大里、川上は特進クラス。

 高田と山内は進学クラスAに入っている。


 特進クラスとA組は選択科目で一緒になったりできる。

 生徒会が解散しても皆なんだかんだと一緒にいる時間があるんだよね。


 なんだか羨ましいな。


 新役員が揃って、引継ぎが行われた。

 その後、例のごとくカラオケで皆で盛り上がった。


 私はというと、基樹の隣に座ってただジュースを飲んでいるだけ。

 寂しいって思っているのって私だけなのかな?


「今度の新役員、おもしろい子達でよかったじゃない。私達がやってきたこと、繋いでいってくれそうよ。ところでアリス、なんで今回生徒会入らなかったの? あなた2年なんだから引き続きやれたのに」


「やぼなこと聞くなよ、川上。基樹がいなくなるのにアリスだけ続けるわけねーだろ」

 高田が茶化して行った。


 別に理由があったわけじゃない。

 でも確かに基樹がいない生徒会なんてつまらないかもしれないな。


 ふーっ。


「なに、ため息なんてついてんだよ」

 歌い終わって席に戻ってきた基樹が言った。


 隣にドサッと座るとジュースを音を立てて一気に飲む。


 一年前、やっぱりこんな風にカラオケに来たんだよね。

 でもあの時と今がこんなに違うなんて、この1年で本当にめまぐるしく変わったんだなぁと思えた。


「疲れたのか……」

 基樹に耳元で言われた。

 私は首を振る。


 高田と山内が笑いながら歌っている。

 隣では大里と川上が楽しそうに次の曲を選んでいた。


 もっとずっとこのメンバーで一緒にいられたらよかったのに。

 私が変われた一年を一緒に過ごしてくれた人達。

 なんだかんだと企てて、ドキドキさせてくれた人達……。


 うっ……ふぇ……。

 こんなとこで泣いたらおかしいのに、涙が止まらなくなった。


「アリス」

 ふわっと頭を抱え込まれた。

 泣いてるの気がついたんだ基樹。


「どうしたの?」

 川上が聞いてきた。


「いや、なんでもない」

 基樹が答えた。


「ふぅ~ん、なんだ。センチになっちゃったんだ。アリスらしい。しっかり抱きしめててあげたらいいわ」

 

 結局解散するまで私は基樹の腕の中にいた。

 実は眠ってしまっていたのだった……。


「こらっ、アリス。起きろ。帰るぞ」

「本当にこの状態で眠れるってすごいわよ」


 基樹の声に続いて山内の呆れた声が聞こえた。

 うぅ~ん?


「よほど居心地がいいのよね。まったく見せ付けちゃって」

 川上が私の顔を覗いていた。


「覚めたか、アリス。帰るぞ」

「う、うん」


「本当に先輩とアリスって仲いいんですね」

 向かい側に座っていた新生徒会の一人が言った。


 ボッ。


 そっかぁ。

 今までのメンバーは私達が結婚したことを知っているけど、新メンバーは知らないんだ。

 もっとも公認カップルってことで特に驚く様子もないけれど。


「おまえらも仲良くなって、これから頼むぞ」

「わかってます。任してください! せっかく築き上げた先輩たちの生徒会、しっかり引き継がせてもらいます」


「そうそう。楽しいこと一杯やりますからね」

「今度は俺達が楽しませてもらう番だな。期待してるよ」


 そうだね。

 今度は楽しませてもらう番なんだ。


 みんなと別れて、二人で帰る。

「もうみんなで生徒会室に集まることもないんだね」


「アリス、今度は参加して楽しませてもらおうぜ、なっ」

「うん!」


 私は基樹の腕にしっかり抱きついた。

 寂しいって思うより、これからは楽しませてもらおうって思わなくちゃね。


「あらっ、基樹じゃない、基樹!」

 後ろから女性の声がして、振りかえる。


 ショーウィンドーからの明かりの中にショートカットで派手な化粧をした女性が立っていた。

 胸の開いたTシャツに超ミニタイト。

 長い足がすらりと伸びていてブーツがよく似合ってる。


「やっぱり基樹だ。久しぶり!」

「あかね……」


 いきなり基樹に飛びついた。

 私は飛ばされるようにして基樹から離れる。


 な、なんなの、この人……。


「やだぁ、制服着てる。もしかして真面目にガッコ通ってたりするわけぇ?」

 基樹を見上げた。


 なんて表情してるんだろう。

 眉根を寄せて、基樹は固まっていた。

 こんな困った顔、初めて見る。


「今夜、仕事が休みなのよ。これから付き合わない?」

 えっ?!


「俺、連れがいるから……悪いな」

 そう言って私を引き寄せた。


 なんだか胸が苦しいよ。

 どうしてかな。

 この女の人、怖い……。


「なぁに、この子が連れなの? 随分お子様だこと。お子様タイムはもうお終いにして、大人の時間よ。私と付き合ってよ。昔みたいに、楽しもう?」


 昔みたいに……? 


「付き合う気はないよ。俺にもう構わないでくれ。じゃな。アリス、行くぞ」


 そう言って引っ張られる。

 誰なの、あの人……。


「あたし、忘れてないから、あんたとのこと。また付き合ってもらうわよぉ」

 背中で叫んでる声が突き刺さってくるようだった。


 また付き合うって、それじゃ、付き合ってたことがあるってこと?

 でもずっと年上に見えた。

 今夜は仕事が休みって言ってたってことは、もしかして夜の仕事してるってこと?


 頭の中にクエスチョンが一杯になった。

 でも怖くて何一つ聞けない。


 結局、家に着くまで二人とも何も話さなかった。

 今までに付き合った人がいてもそれはおかしくない。

 でも気になって……その夜は、眠れなかった。

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