表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
122/156

no.122

 ******



 家にたどり着いたのは夜。

 ドアの前で緊張しちゃう。

 チャイムを鳴らすとバタバタと中で走ってくる音がした。


「お帰りなさ~い。アリスちゃん、基樹くん!」


 ママがドアを開けるなり私に抱きついた。

 何もそこまでしなくても……と焦っているとママが言った。


「すごいことになったのよ。アリスゃん、あなたって本当にすごいわ!!」

「な、なに?」


 訳がわからない。

 基樹の顔を見たけれど、基樹も訳がわからないといった表情。


「ママ、なにしてるんだい。とにかく中に入りなさい」

 パパが出てきて言った。


「やだ、ごめんなさい。もう嬉しくて。早く入って」

 私達は荷物を玄関に入れるとそのままリビングに引っ張って行かれた。


「ママ、どうしたの?」

「あのね、出版社から連絡があって、あなたの書いた童話が大賞になったって。大賞よ、大賞!!」


 えっ、なに?


「もしかして、聖道出版のですか?」

 基樹が訊ねた。


「そうそう、そのなんとか大賞。アリスちゃん、出したんでしょ?」


 も、もしかして、沙耶から教えてもらって出したあの童話のこと?

 いろんなことがあって、すっかり忘れていた。


「えっ、え~~~~~っ!!」

 大賞ってそんな……。


「それでね、授賞式があるから出てくださいって。とにかく明日にでもここに連絡してちょうだい」

 メモを渡される。

 電話番号と金倉という名前が書いてあった。


 なんだかいない間にとんでもないことになっている。


「ママ、お茶。ところで旅行は楽しめたかい?」

 落ち着いているパパはソファに座っていた。


「はい。とてもいいところでした。のんびり過ごしせて」

「それはよかった。島まで行くと自然が残っていて、綺麗なんだろうね」


「はい。手付かずの自然って感じでした。シドニーもよかったんですが、やっぱりリザート島は最高ですね」

「そうか。アリスは?……アリス?」


「えっ?」

 二人の会話は耳には入っていたけれど、手に持っているメモも気になって上の空。


「アリスはどうだった、旅行」

「あっ、うん。最高だったよ。もっともっといたかった。夕陽がきれいでね。海も。泊まったところも。また行きたいな」


「いいわねぇ、ママも行きたいわ」

 お茶を持ってきたママが言った。


「ママはこれからアメリカだよ。あっちもいいよ」

「そうね」


 二人とも気持ちはアメリカかぁ。

 二人がアメリカにいる間に遊びに行けたらいいなぁ。


「あっ、そうそう、2階、早く行ってごらんなさい。ふふっ」

 ママが意味深な笑いをつけていった。


 一体何をしたのかなぁ。

 基樹と顔を見合わせた。


「君達が使い易いようにね、ちょっと直してみたんだよ。気に入ってくれるといいんだが」

 私達は2階にあがった。


 廊下からは特に変化なし。

 何をどう変えたんだろう。


 まず私の部屋から覗くことにした。

 ドアを開けて……な、なに、これ?!


 中が全然違っていた。

 慌てて出て、隣の基樹の部屋に入る。

 右向いて、向こうに見えるドアから入った基樹がこちらを見ている。


「きゃ~~~~~っ、繋がっちゃってる!!」

 今まであった壁がない。


 私の部屋と基樹の部屋の間にあった壁がなくなってる。

 ひとつの部屋になっちゃってる。


 基樹のベッドがあったところにダブルのとんでもなくフリフリのカバーがかかったベッド。

 壁際にチェストと私のタンス。

 壁があったあたりにソファセット。


 そして私の机があったところにもうひとつ机が並んで。

 その向こうに本棚二つ。


 そして鏡台とチェストがもうひとつ。

 その上にドールやぬいぐるみが置かれてる。


「な、なんか、すごいな……」

 基樹が言った。


「ママ、なに、これ?」

 後から入ってきたママとパパの顔を見た。


「あのね、パパとベッドを買いに行ってね。そしたらやっぱり部屋は広くなくちゃって思えて。大急ぎで二部屋を一つにしちゃったの。ここにカーテンがあるから、どちらかが遅くまでお勉強するって時なんかはこれを引けばいいわ」


 ベッドとソファセットの間に厚手のカーテンが引けるようにレールがついていた。

 たった数日でこんなことしちゃうなんて……。

 私も基樹も言葉がなかった。


 荷物を部屋に運んで、食事はしてきちゃったからシャワーを浴びる。

 パパとママにお休みを言って、部屋に入った。


 基樹はシャワーを浴びていて、一人きり。

 ソファーに座ってぼんやり。


 なんだか落ち着かない。

 家に帰ってきたのに、全然違うんだもん。


 溜め息をついていると基樹が部屋に入ってきた。

「どした? 溜め息なんてついて」


「だって、なんか違うんだもん。ヘンな感じ」

「まっ、そのうち慣れるよ。いいんじゃないか。今までと変わったって感じで」


「そうだけど……」

「俺はこのほうがいい。なんてったって一緒に寝られるもんなぁ」


 基樹は隣に座って私を抱きしめた。

「もぅ、そんなことばっかり」


「じゃ、アリスは今までみたいに別々がいーのかよ」

「えっ、こんなこと言ってないでしょ!」


 一緒がいいのはもちろんなんだけど……。

 なんだか勝手に色々やられちゃってってとこがすっきりしないのかも。


「お父さんもお母さんも考えてくれたんだろ。いーじゃないか、な」

「うん……」


 悪気がないことはわかってるから。

 この部屋を作るのに、パパとママであーでもないこーでもないとやったんだろうな。

 

 ママの好みでピンクで統一された今までの部屋とは違って落ち着いた雰囲気になっている。

 ベッドだけは、フリフリだけど……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ