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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
119/156

no.119

 ******



「こんな若い花嫁さんのお支度を手伝えるなんて、とても幸せだわ。素敵ですよ。新郎さん、呼んできましょうね」

 私の支度をしてくれた係りの人が部屋から出ていった。


 入れ違いにママとパパが入ってくる。

「アリス、きれいよ。本当に。こんな風にあなたが結婚する日をずっと夢見てきたの。ママ、本当に嬉しい」


「……ママ……」

「パパとしてはちょっと寂しいが、でも宮川君……いや、もう基樹君だな。彼にならおまえを任せられそうだから」


「うん、パパ……」

 涙が出てきそう。

 でも我慢我慢。


「新郎様がいらっしゃいましたよ」

 係りの人が宮川を連れてきた。


「じゃ、ママ。僕達は教会のほうに行っていよう。そろそろみんな来るだろうから」

「そうね。じゃ、宮川君、じゃ、なくて、基樹くんね。アリスをよろしくね」


「あっ、ちょっと待ってください」

 宮川は二人が出ていくのを止めた。

 私に耳打ちする。


「ちゃんとお父さん達に挨拶できた?」

 私は頭を振った。


 そう。

 昨夜、宮川に言われたのだ。


 ちゃんと今までのことを感謝しないといけないって。

 安心してアメリカに行ってもらうためにもって。


 でも……言葉にしたら、涙がとまらなくなりそうだった。

 考えただけで涙が溢れてくるのだから。


「じゃ、俺が代弁する。おまえの気持ちはちゃんとわかってるから」

「えっ?」


 宮川の顔を見上げる。

 優しい瞳がまっすぐに私を見つめていた。


「うん」

 手を握ってくれる。


「お父さん、お母さん。アリスを生んでくれてありがうございました。今まで育ててくれてありがとうございました」

 宮川が深く頭を下げる。


「あの、基樹くん、そういうのは弱いから、いいのよ、ね」

「いえ、ちゃんと言わなくちゃ。俺達、いや、アリスの気持ちだから。それから俺、絶対にアリスを離しません。二人で幸せになります。見守ってやってくだい」


 もうだめ。

 溢れた涙が頬を伝って落ちた。


 本当に生まれてきてよかった。

 先輩に出会えてよかった……。


「アリス、基樹君。僕達はまだ君達の世話をやかせてもらうから。これからもよろしく頼むよ」

 パパは笑顔だ。


「はい。よろしくお願いします」

 宮川がまた深く頭を下げて、私もそれにつられるようにして頭を下げた。


 ふぇ、ふぇ……うっ……。

 止まらない涙。

 幸せの涙。


「アリスったら、泣いちゃったらお化粧とれちゃうでしょ」

「だって……だって……止まらない……」


 ママがハンカチを差し出してくれた。

 ぐしっ……。


「アリスは幸せね。みんなに愛されて、みんなに祝福されて、あなた達をみんなが見守ってる。今までもこれからもよ」

「うん……うん……」


「じゃ、ママたち、先に行ってるから。基樹くん、よろしくね」

「はい」


 二人が出ていくと宮川がしっかり私を抱きしめてくれた。

「アリス……きれいだ。今までで一番。このまま鳥かごに入れて飾っときたい」


「鳥かごはやだっ」

「あははっ。でもずっと思ってた。おまえだけは誰にもやらないって。おまえだけは手放せないって」


「私もこんなかっこいい先輩、絶対誰にもあげない。私だけの先輩だもん」

「ね、アリス。もう先輩はなし。基樹でいいよ」


「でも……」

 それって口にするとちょっと危ないかも……。


「いつまでも先輩じゃ、俺、旦那になれないけど」

 それもそうなんだけど……。


「だから今日からは名前で呼べよ」

「……基樹……」


 言っちゃったけど……大丈夫……かな?

 私はそっと宮川の腕の中から彼の顔を見上げる。


 うっ、やっぱヤバかったんじゃ……。

 私の一番大好きな表情。

 でも今はちょっとまずいって……。


 焦る私の気持ちなんてお構いなしに宮川はキスをする。

 やっぱり~~~っ。


 私だって、止められないんだからね。

 もう……。


 額に……頬に……耳に……首筋に……キスの嵐。

 でもこれ以上は……やっぱりまずい!!


「せ、先輩!」

 意を決してって感じでやっと声を出して、宮川の胸を押した。


「今はダメだよ。先輩!!」

「ん? あ~~~~~っ、ヤベッ!」


「えっ?」

「口紅、こっちのほうについてる!」


 きゃ~~~~~っ。

 だからダメなのにぃ。


「ちょ、ちょっとアリス、そのハンカチ貸してみろ」

 ママに渡されたハンカチを宮川は取ると、額をごしごし。

 んなことしたら化粧、落ちちゃうんだけど……。


 コンコン。

 係りの人が入ってくる。


 二人で固まっちゃった。

 まだ全部消えてないよね……タラリ。


「あらあら、もう一度やり直しですね」

 笑われてしまった。


 鏡の前に座って……恥ずかしい。

 口紅があちこちについてたりして……。


「ぶーっ、先輩のバカ!」

「花嫁さんはそんなこと言わないんですよ。とってもかわいいんですものね。仕方ないわ」


 宮川が背中を向けているのが鏡に写ってる。


「新郎さんも口、拭いておいてね」

「えっ?」

 慌てて口をごしごしやっている宮川の後姿が笑えた。


「お若いカップルだから本当に微笑ましいわね。仕事をしていてこんな楽しいのって始めてよ。さぁ、これでいいわ。もうだめよ、ね」


「は、はい……」

 恥ずかしいなぁ、もう……。


「それじゃ、時間になったら係りのものが来るから」

 そう言ってまた二人にされてしまう。


「とうとう結婚するんだな」

 そう言って宮川は後ろから抱きしめてきた。


「先輩、もうだめだよ。もう名前呼んであげない……」

「そんなのねーよー。許してくれって」


「式が終わるまで……」

「ん?」


「そしたら呼んであげる」

「ありがとっ、アリス。ちょっと立って」


 私は言われるとおり、宮川の前に立った。

「よく見たい。しっかり見ておきたいから」


「うん、私も」

 二人で見つめ合う時間。


「アリス、甘ったれでわがままでかっわいいおまえのままでずっと俺の側にいろよ」

「じゃ、ずーっと甘えててあげる」


 ツンッと額を指で押された。

「聞いてやれるわがままにしてくれよな」


「う~んとわがまま言っちゃうもん」

「覚悟してるよ」

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