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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
117/156

no.117

 部屋に戻ってすぐに夕食が運ばれてきた。

 テーブルに一杯になるほどの料理が並べられた。


「すごいね、先輩。こんなにたくさん」

お料理はどれもこれもおいしくて、食べ過ぎてしまうほどだった。


「ほんとにこりゃ、みんなに感謝だな」

「うん!」


 食事の後、また温泉に入った。

 今度は露天風呂だけにしてさっと上がる。

 待たせてばかりでも悪いから。


「あれ、早かったんだな」

「うん。さっきゆっくり入ったからね」


 部屋に戻ってきてから、ママたちの部屋に電話をしてみた。

 ママたちも食事がすんで今から温泉に行くと言っていた。


「パパはちょっと飲んじゃったから、あとで入るんだって」

「あ~っ、俺も飲めばよかった」


「だ~め。未成年は飲んじゃいけないんだよぉ」

「いーじゃねーか。別に。俺、結構強いんだぜ」


「そういう問題じゃないでしょ」

 私はそう言いながら明日着る服をハンガーにかけた。


「先輩、明日着るもの出して。ハンガーにかけといたほうがいいから」

 宮川が出した服もかけて……。


「喉渇いたな。アリスはなにか飲むか?」

 冷蔵庫を開けた宮川の後ろから覗く。


「うん。ウーロン茶」

「OK!」


 宮川はウーロン茶をグラスに注ぐと私に手渡した。

 私は椅子に座ってそれを飲む。


 コーラを注ぐ音。

 シュワシュワと泡の音。


 耳にとても響いてきた。

 静かになるとこんな音も大きく聞こえる。


 なんだかドキドキ。

 考えてみれば二人きりなのだ。


 前に座った宮川から視線を外に向けた。

 もう真っ暗でなにも見えない。

 かえってガラスが鏡の役目をして宮川の浴衣姿が目に付いた。


 また慌てて視線をそらす。

 テーブルの上にあったガイドマップを見つけて、ホッ。


 それを手にして見る。

 ホテル近辺の観光などが出ていた。


「あっ、先輩、牧場もあるよ。ここ、いいねぇ。パパに言って明日連れていって……きゃっ」

 いきなり電気が消えた。


「せ、先輩、先輩!!」

「ここにいるよ。俺が消したの」


「えっ? 真っ暗で怖いよ」

「待って……」

 そう言ってテーブルが置いてあるほうの小さな明かりをつけてくれた。


「もぅ、いきなり消さないで、びっくりした!」

「アリス……」


「ん? ちょっ、ちょっと……」

 宮川は椅子に座っている私を抱きしめた。


「もう限界……」

「せ、先輩……」


「家でだってずっと我慢してきたんだよ。もういいだろ?」

「えっ、でも、あの……」


 ドキドキ。

 心臓が爆発しそう。


 抱き上げられて布団に連れていかれた。

 キスされる。

 体が熱くなった。


「クリスマスからずっと……よく我慢できたって自分でも思う。ご褒美をもらわなくちゃな……」

「私はご褒美なの?」


「そう、最高のご褒美……」

 首にキス……。


「もらうよ……」

 浴衣の帯を引っ張られた。


 ドキンッ。

 ちょっと怖い、かも……。


「どうしたの? まだ怖い? 震えてる……」

 目の前に顔を近づけてじっと見つめられた。

 答えられない。


「名前呼んでて。大丈夫、アリスは俺の宝物だから大切だから……優しくしてあげるよ……」

 そう言ってキスの嵐が始まる。


 ゆっくりと確かめるようなキス。

 される度に体温が上がっていくようで……。


 でもその熱さの中にいるのが気持ちよくなっていく。

 不思議な感覚。


「……基樹……基樹……」

 優しく私の体をなでていく大きな手もくちびるも、すべてが基樹のもので、暖かさが伝わってくる。

 もう怖くなかった……。



 ******


 目が覚めたのは夜中だった。

 まだそんなに眠ってない。


 宮川に抱きしめられたままの格好で……。

 ふっと思い出して恥ずかしくなる。


 でも目の前にある宮川の胸、手のひらをそっと当ててみる。

 鼓動が伝わってくる。


「アリス……」

 宮川の声がした。

 驚いて顔を見るとじっとこちらを見ている。


「えっ、起きてたの?」

「いや、うとうとしてた」


「じゃ、起こしちゃったんだね。ごめんね」

「いや、いい。眠っちまうのはもったいないよな」


「でも、眠くなっちゃう。気持ちいいんだもん。こうしてくっついてると……」

 あっ、なんか厭らしいかな……こんなの。

 恥ずかしくなって視線を逸らす。


「俺も……。早く結婚したいな。そしたらずっとこうしていられる」

「えっ、ずっと?」


「そう。ずっとずっとアリスを抱きしめていられる」

「うん……」


「アリス……」

「うん?」


「俺、また元気。もう一回ご褒美欲しい」

「えっ……」


「いい?」

「でも……眠いよ……」

「寝てていいよ……」


 そ、そんなことできるわけない、でしょ……。

 キスされたらもう体中の神経が倍になったような感覚なんだから……。


「アリス……愛してる……」

「ん……私……も……」


 私達の息遣い以外ほかに何も聞こえない静かな夜。

 熱い吐息が、熱い夜に変えた。

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