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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
114/156

no.114

 ******



 宮川も宮川で結婚のこと、援助のことを考えているらしい。

 二人でいても特に話をするでもなく、本に目をやるけど上の空だった。


 ふぅー。

 溜め息が出た。


 何かやりたい。

 それだけじゃ、なんの答えも出ない。


「アリスは結婚するのは嫌か?」

 本から視線をそらさずに、宮川が言った。


「えっ?」

「俺と結婚するのは嫌か?」


「そんなことないよ。ただいきなりだから……」

「そうだな」


 会話が途切れた。

 結婚してなにが変わるだろう。


 今までこうして一緒にいて、結婚してもこのままのような気もするし。

 なんだか段々気持ちは沈んでいくばかりで……。


「先輩はお医者さんになるんだよね」

「ああ、なりたい」


「沙耶はお花の先生になりたいって」

「へー、そうなのか」


「沖野君もなりたいものが実はあるって。みんな、ちゃんとなりたいものがあるんだよね」

 宮川がじっと見つめる。


「で、おまえは?」

「わからない……」


「今まで何かやりたいって思ったことはないのかよ」

「……ない……。あ~~~~~ん、ほんとうにないの。なんで私だけないの。このままなんて嫌だよぉ」


「ちょっとアリス。おまえ、もしかしてそれで悩んでたわけ?」

 手にした本を音を立てて、閉じると、宮川は私ににじり寄った。


「うん。だってこのまま先輩と結婚して、先輩はお医者さんになって、沙耶はお花の先生になって、沖野君はバスケの選手になって……私だけ何もないの。そんなの嫌なの。何かしたいの」


「はーっ。俺、なんだか疲れた……」

「えっ?」

「ちょっと来い!」


 腕を掴まれてリビングに降りる。

 リビングにいたパパとママに宮川はまっすぐ向かう。


「な、なに?」

 私は訳がわからなくて、どぎまぎ。


「お父さん、お母さん。アリスを俺にください。アリスと結婚します。それからアリスとできるだけたくさん一緒にいたいです。だから援助もお願いします」


 ちょっ、ちょっと先輩!


「そうか。よかった。その答えが聞けて、僕らも安心してアメリカに行けるよ」

「ありがとうございます。それじゃ、俺達、話がまだあるので。アリス、来い」


 今度は部屋に連れ戻される。

 な、なんなの。

 訳わかんないよ。


 こんないきなりな展開……。

 なんでどんどん決めてっちゃうの?


「座れよ」

「なんで、なんでそんなにどんどん決めていっちゃうの? 私、もう着いていけないよ。周りばっかり動いて、私一人振りまわされて。嫌だよ、こんなのばっかり」


「いいから。座れよ」

 ものすごく、ものすごく優しい声だった。


 座っている宮川に手を差し伸べられて、体が自然に言うことを聞く。

 宮川に肩を抱かれて座った。


「アリス、おまえ、結婚するのが嫌なんじゃない。だだ自分を試したい何かが欲しいだけだろ。つまり将来の夢ってやつ」

「うん……」


「結婚してもそれ以外の何かがないと寂しいわけだろ?」

「うん……」


「俺、アリスが悩んでるみたいで、マジ焦った」

「なんで?」

「結婚すんの、嫌なのかと思って」


「そんなことないよ。私、先輩のことしか見えてないもん。結婚ってまだ考えたことなかったけど、パパに言われて、なんだかそれは全然嫌でもなんでもなくて、そうなるんだって思ってたし。ただいきなりで驚いたけど。でもね、結婚してだだお嫁さんやるのかなって思ったら、なんだかわからなくなって」


「まぁ、実感はわかないしなぁ。で、周りがどんどん動いていくのに、また取り残されたって感じてたわけだよな。みんな、将来の夢持ってて、それに向かってるのに自分だけ流されてるって」


「多分……」


「バカだな。将来の夢なんてそんなに焦らなくていいんだよ。まだアリスは高1だぞ。俺、その頃何も考えてなかった。これからゆっくり考えればいいんだよ。焦ったって答えは出ないよ。それに結婚したからって、夢が持てないわけじゃない。俺、アリスが何かになりたいって言ったって、反対しないよ。ちゃんと応援するから」


「先輩……」


「そういう時のためにできるだけおまえの側にいてやりたい。なんでも話を聞いてやれる二人の時間を持っていたい。俺のプライドなんて簡単に捨てられる。一番大切なのはアリスだから」


 抱きしめられた。


「焦るなよ。大丈夫だ。ゆっくり考えろ。自分は何がやりたいか、自分に何があってるのか」

「うん……うん」


 そうだよね。

 いくら今考えたって、答えは出ないもんね。


 周りが急に動き出して、怖かったんだ。

 でももう大丈夫。

 きっといつか夢が見つかるよね。

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