no.111
「いつまでやってんですかぁ、会長!」
「いやいや、せっかくハメられたんでね。楽しませてもらったよって、笑って言えるかぁ、おまえらっ!!」
やっと腕を離されて……。
でも力抜けてへなへなっと座りこんでしまった。
「アリス!」
「おいっ、大丈夫か?」
「……大丈夫じゃないよ~」
「ほらっ、立て。おまえはまだ仕事が残ってんだぞ」
そんなこと言われても力入んない。
「ったく、おまえはっ」
そう言って肩に担ぎ上げられた。
「おおーっ、これは以前見た光景と同じですなー」
「ほんとっ」
動物の格好をしたみんなに言われたくないよ。
もう力抜けて叫ぶ気力もない。
「じゃ、アリス。私達着替えてくるね」
「ちょっ、ちょっと待って。私も」
みんなさっさと教室に行ってしまう。
「あっ、アリス。着替えてる時間ないからそのままやって。クイズで時間押しちゃったから」
川上に言われた。
「そんなぁ~」
最後の挨拶、宮川と二人でまたステージに出なくちゃならないのに。
この格好なんて最悪……。
「ほれっ、立て。最後の仕事だ。がんばれっ」
「はぁい……」
膨れっ面で答える。
むにぃ~。
いきなり両手で頬をつままれた。
「いちゃいよぉ~」
「笑ってろ。行くぞ」
大里からマイクを持たされた宮川は、私の手を引っ張ってステージに出る。
う~ん、やっぱりこのライト熱い……。
「これにて出し物は終了です。卒業生の皆さん、楽しんでいただけたでしょうか」
「お~っ、おまえらのが一番よかったぞ~」
なんて叫び声が聞こえたりして、どんどん体温上昇しちゃうよ。
「ありがとう、先輩方! 俺らはこの学校が好きです。楽しいです。この一年、多分楽しんでもらえたんじゃないかと思います。これからも楽しい学校にしていきます。先輩たちが卒業したことを誇りに思えるような学校にしていきます」
ボーッとしているとマイクを渡された。
「ほらっ、ちゃんと話せ」
あっ!
「えっと、卒業おめでとうございます。今日はありがとうございました。卒業生の皆さん、これからも頑張ってください!」
それだけ言うと宮川と二人、袖に入る。
終わったぁ。
もうだめ……。
と思った瞬間、思いっきり滑って転んだ。
しかも顔面は床と衝突。
「アリス!」
はにゃにゃ……。
宮川にまた担ぎ上げられてる。
「俺、こいつ保健室連れてくからあと頼むなっ」
「いってらっしゃ~い。ごゆっくり」
もぅ、イヤ……。
保健室に行けば行ったで。
「おや、今日は猫ですねぇ、お姫様は」
う゛~~~っ、この医務の先生、苦手。
「ちょっと休ませてやってよ。ノビちまった」
「猫がノビたか。あははっ。そっち使って。ごゆっくりどうぞ。私はちょっと職員室に用があるからさ」
そう言って医務の先生は出ていってしまった。
そっとベッドに横にされる。
「アリス、顔、大丈夫か?」
「いちゃいです……」
「ぷっ、おでこ、真っ赤。ちょっと待ってろ」
宮川はカーテンの向こうに消えて、すぐ戻ってきた。
「これで冷やせ」
濡れたタオルを額に乗せてくれた。
冷たくて気持ちいい。
はぁ~っ。
「それにしても衣装はみんな手作りなのか?」
「うん。女子が手分けして作った」
「おまえも?」
「私は猫娘できなくて、和美にずっと練習させられてたの」
「ははっ、そっか。これ、なかなかだぞ」
そう言って宮川は私の服を指した。
「私のは今日できて、嫌も何もないんだもん。ところでなんで先輩があそこでいきなり出てきたの?」
「山内に押された。どうせおまえのクラスの奴らとグルで嵌めたんだろ」
「今回はなしかと思ってた」
「俺も気付かなかったな。まっ、いーんじゃねーの。悩殺ポーズやんなくてすんだんだから」
そりゃそうだけど……。
話が途切れた。
じーっと半分閉じた目で見つめられた。
な、なに?
うわぁ~、近づいちゃだめ!
でもこの表情を見せられると動けなくなっちゃう。
キスされてしまった。
「こういうのもなかなかいいな」
良くない!
「だめだよ、先輩。誰か来……」
話してるのにキスしないで!
「にゃあにゃあ、泣いてたから」
「あ、あれはお芝居で……」
またキスされた。
ちょっと……!
う~~~っ、く、苦しい。
離して。
「おっ、久々のじたばた。お仕置き~」
うひゃ~~~~~っ!!
耳、舐められてしまった。
「休んでろ。今、着替えもらってきてやるから」
そう言って宮川は出ていってしまった。
しんと静まり返る。
ふぅ~。
行事の度、毎回これじゃ、本当に身が持たない。




