no.108
******
大騒ぎしたあとは、いつものごとく静かな日々が続く。
毎日、なんとなく集まる生徒会室。
今日も皆集まっていた。
「な~んか、つっまんね~な」
宮川が机に足を乗せて言った。
「ホントだよなぁ。3学期は行事なしなんだろう。なんにもすることないのかよぉ」
高田が同調している。
皆、すっかりお祭り好きになっちゃったんだよねぇ。
なのに何もない3学期。
「なんか、やるかー」
「なにを?」
宮川が言うと川上が顔も上げずに言った。
「3学期……卒業……おーっ、いいアイディア!」
「だからなんですか?」
川上の横で大里が少々不安げな表情を見せた。。
「3年生を追い出す会、いや、送る会!!」
まぁ~た、何を言い出すかと思ったら……。
「何、するの?」
山内が身を乗り出して訊ねた。
「そーだなー。体育館使って出し物。参加したいものが参加。あっ、3年は客ね。1・2年がなんかやるわけよ。クラス単位でもいーし、部単位でもいーし、仲間でもいーだろ」
「でも3年になると2月くらいから自由登校になるんじゃなかったですか?」
「だからさっ、一日くらい皆に来てもらったっていいだろ」
「来るかしら?」
「来るだろ。これまで行事楽しんだ奴らなら」
「そうですねぇ」
そんなこんなで結局、3年生を送る会が行われることになった。
もう、学校中がお祭り好きになった感じがする。
まずは参加グループを募集。
「ちょっと待て。なんだよ、これ。全クラス参加。ほとんどの部が参加。ほかにもグループ参加もあるじゃないかよ」
申し込み殺到だった。
やっぱり学校中がお祭り好きになってる……。
「全部は到底無理ね」
川上が溜め息をついた。
「どうやって絞るかだよな」
「よし、じゃ、それぞれ何をやりたいか企画書出してもらう。おんなじようなものは重なっても意味ねーしよ。あと時間の兼ね合いもみないとなんねーからな」
やるとなると毎回本当に早回し……。
私はいつもそんな皆を見てるだけ。
結局、簡単なお芝居をクラス全員でやる私のクラス1-Aと軽音部、カラオケをやる2-C、クイズをやるクイズ研究会に決まった。
「おまえらのクラス、すっげーな。芝居かよ」
我がクラスの出し物を見て、宮川が言った。
そうなのだ。
もうみんな大騒ぎ。
全員参加できる芝居を作ろうっていうんで、まず脚本作りからだもんね。
本格的。
「40分枠でちゃんとやるようにしてね」
川上がニヤリとむする。
それはもうわかってると思うけど、でも内容が怖い。
クラスのお調子者たちが集まってワンヤワンヤやってるからなぁ。
一体どんな脚本ができてくるやら……。
******
そして1週間後。
出来上がった脚本を見て、皆、愕然……いや、お腹を抱えて大笑い。
「マジでこれやんのかよー」
「でもおもしろそーじゃない」
皆それぞれ言いたいことを言っている。
タイトルは『ここに生息する動物達』。
なんなんだぁ。
クラスの10人くらいがコーラスに回る。
他は全員動物に仮装。
内容はあんまりない……。
コーラスでなんとなく話が流れるって感じ。
まぁ、私達はこんなに楽しいよぅ、だから先輩たちも学校のこと忘れないでねぇ、みたいな感じというか……。
あっという間に配役決め。
「沙耶は何になるの?」
「あっ、私はうさぎ」
「えっ?」
「和美がそれで決まりだって」
「そっかぁ、私なにしよう……」
「あ~っ、アリスももう決まってんの!」
私たちの会話を聞いていたのか、前の席の和美が振り返った。
決まってるってなんでよ……。
そうそう脚本作り、和美もやってたんだった。
なんせ演劇部だもんね。
「アリスは猫よ」
「猫~?!」
「そっ、一番かっわいいんだから!」
「な、なんかやだなぁ」
「だって他に適役ある?」
台本に目をやる。
キリン・象・リス・ねずみ……。
ない……。
「あたしさぁ、アリスには着てもらいたい衣装があるのよ。だから思いっきり猫娘よろしくね」
「あ~ん、沙耶ぁ、私、猫娘なんていやだぁ~」
「仕方ないでしょ。クラスの出し物なんだから、全員参加!」
「そうよ。ほとんど皆、それぞれのキャラクターに合わせて、動物も決めたんだからね」
ほぇ~。
ワイワイがやがやと配役が決まり。
明日から練習ってことになった。