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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
106/156

no.106

 部活を休んで早めに帰ってきた沙耶と沖野。

 4人でいても言葉が見つからない。

 重苦しい空気があるだけ……。


「俺、これ、返してくるから」

 宮川が封筒を持って立ちあがった。


「私も行く」

 沙耶も立ちあがる。


「俺も話したいから」

 沖野まで立ち上がった。


 それじゃ、私も……。

 と、立ちあがったけれど、宮川に肩を掴まれた。


「アリスは待っててくれ」

「お兄ちゃん、私達、先に外に出てるから」

 沙耶と沖野が部屋を出ていった。


「アリス、もうこんなことで苦しまなくていい。おまえは泣くな」

「でも、そんなこと言われても……」

 宮川に抱きしめられた。


「待ってろ。ちゃんと話着けてくる。おまえを守ってやるって言っただろう。おまえを苦しめるものすべてから……」

「先輩……待ってる。だけど無理しないで、お願いだから」


「ああ」

 宮川は私の額にキスをして出ていった。


 一人でいるのが怖くてリビングに行く。

 ママは黙ってコーヒーを出してくれた。

 パパがいつもより早く帰ってきた。


 家族ってあったかいものだよね。

 普段、気付かないけど、皆それぞれ大切に思ってて。

 憎しみあうなんてダメなのに……。


 涙が込み上げてくる。

 目の前にパパがいるのに。


「アリス、なんだかこのところガタガタしているようだが、話してみないか」

 優しくそう言われてもう涙を止められなくなった。


 今まであったことを話す。

 こういうこと話していいのかどうかわからない。

 でももうどうにもならなくて。


「そうか、まぁ、世の中にはそういうこともあるだろう。不思議なことじゃない。僕達で何かできることがあればどんなことでもしよう。もう他人事じゃないからね」


「パパ……」

「そうよ、アリス。宮川君はうちの一員なんだから」


「ママ……」

 うっうっ……。

 ママがそっと抱きしめてくれた。


 

 ******



 宮川達は1時間くらいで戻って来た。

 玄関に飛び出して宮川に抱きつく。

 怖くて怖くてどうしようもなかった。


「おまえさぁ、一体何してきたの、あいつのところで」

 ものすごく呆れた感じで言われて私は慌てて宮川から離れた。


 私、また余計なことしちゃった?

 どうしよう。

 黙っているとママに促された。


「上がって」

 皆でリビングに集まる。


「ねぇ、アリス、パパと何があったの?」

 沙耶が言った。

 どうしよう、どうしよう。


 ふぅー。

 宮川が大きく息を吐いた。


「ご、ごめんなさい。私、我慢できなくて、喚き散らしてきちゃったの。ごめんなさい!!」

 いきなり隣に座っていた宮川が私の頭を抱き寄せる。


「謝るなよ。ありがとう、アリス」

 えっ?


「ほんとうにありがとう、アリス」

「俺からもありがとう」


 沙耶と沖野君まで……なんなの?

 話が全然見えなかった。


 コホンッ。

 パパのいつもの咳払い。

 宮川は慌てて腕を外した。


「一応、話はアリスから聞いた。どうなったか、聞かせてくれるかな?」

「はい」

 宮川が話し始めた。


 3人は会社に乗り込んだ。

 宮川は手切れ金を突き返して、私とは別れないと言ったそうだ。


「先輩……」

「当たり前だろ。それと沙耶も沖野と別れるつもりはない」


 宮川が沖野と沙耶を見て言った。


「俺、沙耶と別れないって言って、でもどうしても沙耶と結婚する相手が会社を継ぐ人間でなくちゃダメなら、俺が会社を継ぐって」


「え、ええっ~~~~っ」

「ずっと考えてたんだ。どうしてもそうじゃなくちゃだめなら、会社でもなんでも継いでやるって思って」


 す、すごい……。

 沙耶は幸せそうな顔をして沖野の隣に座ってる。


 これでうまくいくね。

 でも沖野はそれで本当にいいのかな……。


 また俯いてしまう。

 そんな私の頭にポンと手が乗せられた。

 宮川の方を見る。


「安心しろよ。おまえのお陰でなんだか意気込んでいった俺ら、バカみたいだったよ」

「えっ?」


「手切れ金はもう必要ないだろうって簡単に受け取った。それに沙耶は家に帰れとさ。沖野が社長になるかどうかはいずれ決めればいい。今は勝手にやれだと」


 えっ、な、なんで?

「アリスのお陰よ。本当にアリスの……」


 沙耶が涙ぐんで言った。

 なんだかよくわからない……。


「とにかく、話はまとまったということだな」

 パパは、ママが入れてくれたコーヒーを啜りながら言った。


「はい。ご迷惑おかけしました」

 訳わからない私は消火不良……。


 沙耶があと一晩だけ泊まって明日は家に帰るという。

 沖野が帰った後、私と宮川、沙耶は私の部屋に移動した。


「アリス、ほんとうにありがとう」

 沙耶に抱きしめられた。


「あの、ちょっと、全然話がわからないんだけど、どうして急にそうなっちゃうの?」

 沙耶が離れる。


「おまえのお陰らしい。親父が最後におまえのこと、ぎゃーぎゃーうるさい娘だがいい友達を持ったな、だとさ」


 えっ?

 どういうこと?


「アリス、パパと何があったの? 私達のほうが知りたいよ。あんまり急展開でびっくりしてるんだから」

「なにって、佐々木って人に会社に連れていかれて、手切れ金だって渡されて。あんまり悔しいから、なんか色々喚いてきた、だけだよ」


「なんて?」

 宮川に抱き寄せられて考える。


「なにって……えっと、なんだっけ?」

 キレて叫んでたからよく覚えてない。


「ほんとアリスってすっげーの」

「ほんとね」


「な、なんかよくわかんないけど、皆うまくいったんだよね?」

「そういうこと。俺としちゃ、まだあいつを許したわけじゃないけど、変われるかもしれないって気はするしな」


「私もこれで沖野君と付き合えるんだよ」

「よかったぁ~」

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