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ありす☆らぶ  作者: 湖森姫綺
100/156

no.100

 私達に答えが出せるはずもなく、結局それ以上は何も話さないで沙耶の家に着いてしまった。

 前にも何度か来たことがある。

 それにしても立派な家だぁ……。


「上がって、アリス。多分書斎だと思うの……」

「お邪魔します」


 なんか小声になってしまった。

 ドアの前で沙耶が止まる。

 ドアが中から開いて、お母さんが出てきた。


「沙耶ちゃん、帰ってたの。アリスちゃんも」

「こんにちは、お邪魔してます」

「沙耶ちゃん、今はお話中だから……」


 そう言ってお母さんは行ってしまった。

 お盆持ってたから、お茶でもいれたのかな……。


 沙耶が静かにドアを開けた。

「沙耶、今、まずいんじゃ……」

 ドアが少し開いた。


「沙耶は当てにならん。どこの骨ともわからん奴に引っかかりおって」

 中から聞こえてきた声に、沙耶が手を引っ込めた。


 そりゃ、そうだよね。

 こんな言い方されたら。

 ちょっとむかつく。


「あいつにはちゃんと会社を継ぐ人間と結婚してもらうように今まで教育してきたつもりなんだがな。しかしあいつは男と別れるんなら死ぬとまで言った。まったく……」


 沙耶……。

 隣の沙耶を見ると唇をかみ締めて、涙を流していた。


 こんなに追い詰めてるのはあんたじゃない!!

 本当にむかつく。


「あいつはもうそんなだからな、当てにはせんよ。おまえ、帰ってこい。わけのわからん他人の家にいるよりいいだろう。成績もなかなかいいようだし、大学を出たら、入社して……」


 なに、考えてんの、この親父!!


「なぁ、基樹。おまえもなんだ、あんな子供相手に本気じゃあるまい。おまえならいくらでもいい女を相手にできるだろう。いくらでも探してやる」


「……ざけんなっ!! おまえにアリスをそんな風に言う資格なんかねーんだよ!!」

 それまで黙っていた先輩の声がした。


「なにを言ってる、基樹。とにかく家に帰れ。必要なものはいくらでも揃えてやる。会社に入ったら、いくらでも好きなことできるぞ。いずれ会社もこの家もすべておまえのものだ」


 我慢も限界だった。

 私は、何も言わずにドアを勢いよく開ける。


「ア、アリス……」

 沙耶が私の腕を掴んだ。


 もう怒ったもんね。

 沙耶の腕を振り解く。

 部屋にずかずか入って、ソファに座った沙耶の父親に向かった。


「さっきから聞いてれば、会社会社って、会社がそんなに好きなら会社と結婚しちゃえばいいのよ!! 沙耶も先輩もあんたの道具じゃないんだからね。子供は道具じゃないんだから!! ふざけんじゃないわよ!!」


 はぁはぁ……。

 もうなんだかわけわかんない。

 でも叫ばずにいられなかった。


「なに、やってんだよ、おまえ」

 いつの間にか宮川が側にいて抱きしめられた。


「そんなバカな娘のどこがいい。くだらんこと、喚きたてて。もっと大人の女のほうがいいぞ。手がかからん」

 私は先輩の腕を振り解いて、つかつかとソファに座っている親父に近づいた。


「沙耶もバカな男に引っかかる情けない娘だし、おまえまでこんな訳のわからない娘がいいなんていうバカ息子じゃなかろうな」


 バッシ~ンッ。

 いちちっ。

 思いっきりぶっ叩いてやった。


「沙耶はいい子だし、沖野君はバカじゃないし、先輩もバカじゃない!! あんたのほうがよっぽどバカよ!! 子供を道具としてしか見られないあんたの方が……」


 はぁはぁ……く、苦しい。

「アリス、もういいよ」


「いや、言わせて。沙耶の気持ちも先輩の気持ちもちっともわかってない。父親だったら子供の気持ちのほうが大切なんじゃないの! それともあんたの子供は会社なの! 沙耶がどんなに傷ついたかわかる? あんたに好きな人と別れて会社の道具になれって言われたのよ。子供がそんなこと父親に言われたらどんなに傷つくかあんた、考えたことある?!」


 はぁはぁ……。


「それに先輩だって、ずっとあんたに傷つけられてきたんだからね! お母さんが入院したときだって、死んじゃった時だって、あんたは何もしなかったじゃない。それどころか先輩を傷つけてたんだよ。それなのに今度は道具が必要だからって帰って来いなんてあんまり虫が良すぎない?! ふざけんのもいい加減にしてって感じよ、このくそ親父~~~っ!!」


 はぁはぁはぁ……もう息続かない……。


「アリス、もういいよ」

 宮川が私を抱きしめる。


「あんたのいいようにはならないよ。俺も沙耶も。あんたにとって会社が大切ならそれだけ守ってりゃいいよ」

「なに、言ってるんだ、基樹。おまえにはずっと生活費や学費を渡してるだろう」


 この後に及んでまだそんなこと……っと私が身を乗り出そうとしたら宮川の腕に力が入って身動きが取れなかった。


「返しますよ、一銭も手をつけてない。あんたの金なんて使ってないから」

 そう言って宮川はポケットから通帳と印鑑を出して、テーブルに放り投げた。


「な、な……」

「俺はあんたの息子じゃない。もう二度と連絡なんてしてこないでくれ。帰るぞ、アリス」


 そう言って私を連れ出した。

 沙耶も一緒に。


「このままですむと思うな!!」

 ドアの向こうで叫ぶ声がした。


 なんて奴。

 まだわかってない。

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