日常の終わり
つまらない。
退屈だ。
この世界は単調すぎる。
八神冬夜はこの世界を取るに足らないと感じていた。
ただ単純作業を繰り返すだけの毎日。そこにあるのは自立性ではなく、全ては自分より誰か社会的に上の立場のものが設定しただけの意味を見出せない作業を減らすことだけだ。
幼少のときから自分は何でもできると思っていた。……いや、事実できていた。
いつからだろう。
この世界が自分の思い通りにはならないことこそが世界の本質であることに気づいたのは。
全てはルールを社会的概念を設定する側の欲望のままに動いている。
どう仕様も無いくらいに自分勝手で無責任な彼らが勝手につくった決まりを守ることこそが美徳だとされるのだ。
そう気付いた時には高校は行かなくなっていた。
そもそも学校で行うことについて半分も意味があるのだろうか。
いや、意味などないものに意味をつけても仕方がない。
自分にとって意味がないことこそがそれの意味であり、ただそこに存在するのは支配する側がつくった強制的な制約を無条件に肯定するためだけの練習をさせられているだけなのだ。
小さいときに描いた夢も理想も希望もただひたすらに空虚だった。この上なくそんなものは幻想だった。
私腹を肥やす人間と、どんなことをしても絶対そうはなれないがそうなれるという夢を支配者側に見せられているだけの寝ぼけた連中。
それらと同じ道を歩む気はなかった。
学校の成績もそれに対して興味をなくすまではそこそこ優秀だったのだ。
人間的に優秀なのではなく、王様に必死に餌を貢ぐ働き蟻として有能だと言った方がいいかもれないが。
ともかく彼はこの世界をつまらないと感じた。
この世界で自分の思い通りになることになど意味はなく、本当にに大事なものは失われたままである。
しかし、もうダメかもしれない。
この社会システムを崩す方法が思いつかないのだ。
搾取されていることに気づかないようにして無条件に肯定している人間とその甘い蜜ををすする人間。
この世界のルールはその二つを作ることだけに特化していてそこに何の意味などない。
自分はこのままくすぶっていくのだろうかと感じた。
自分の存在意義も見出せず役割も意味も……何より全くどうしようもないくらいにつまらないここで少しづつ何もできずに年老いていうのか。
概念や理屈なんていう言葉遊びに振り回されて埋れて行くのだろうか。
なんて哲学的なことを考えたとしても客観的に17歳にして現在進行形でニートである彼は色々と終わっていた。主に社会的に。それでも自分の快楽のため、遊ぶことに節操などない彼は唯一自身の気を紛らわせてくれるゲームをするために自室のパソコンを起動した──その瞬間。
パソコンの画面に何やら幾何学模様が紫色に怪しく光って浮かんだ。
──あ、と思った時には彼は意識を失った。