表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第12章.引越し

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/95

90.後始末

 銀の腕環を持って、占い師の爺さんの店Ova‐avis(オヴァ・アヴィス)に行った。


 爺さんは、相変わらずニコニコして「まだ、お母さんに会う機会があるみたいだから、念の為に持ってていいよ。引越しの前の日に返してくれればいいから」と、言ってくれた。


 オカンが敵とか、一言も言ってないのに、この人、マジ凄ぇ。


 俺は、その言葉に甘えて、もう(しばら)くデーレヴォを手元に置かせてもらうことにした。


 家に帰っても、誰にも脅かされることなく、平穏に過ごせている。

 父ちゃんと親戚みんなが、俺たちを守ってくれる味方。

 近所の人たちは、姉ちゃんと俺を見守ってくれていた。

 ほぼ接点のない校務員さんも、気にかけてくれていた。


 暴力も、暴言もない。


 ただ、それだけの日々が、こんなに幸せだとは、知らなかった。


 家事の負担が前と同じでも、全然苦にならない。

 (むし)ろ、俺たちの家を自分でちゃんと管理している実感が湧いて、充実した気分だ。


 いい思い出はなかったけど、もうすぐ、この家ともお別れだ。

 それまで大切にしよう。


 テーブルは、警察に確認してから捨てた。


 オカンの持ち物は、もう何も残っていない。

 義一伯父さんが、売れる物は全部売って、残りは捨てた。そのお金でカード利用額の残高を繰上げ払いした。

 オカンは、クレジットカードを毎月一万円払いのリボルビングで使っていて、限度額いっぱいまで、キャッシングもしていた。


 オカンに巻き上げられていた俺たち姉弟の貯金とお年玉、姉ちゃんのバイト代も、花隈家が、田んぼや畑を売って、一括で返してくれた。

 前から欲しがっていた会社が買って、工場を建てるらしい。


 父ちゃんは、浮気相手の龍寿(りゅうじゅ)にも慰謝料を請求して、こちらも龍寿の実家が払った。

 バカな身内が居ると、尻拭(しりぬぐ)いが大変だ。


 オカンがカードで作った借金は、利息が雪だるま式に膨らんでいて、持ち物を売っただけでは返済しきれず、離婚成立後に自己破産させられるらしい。


 自己破産すると、裁判所の許可がないと引越せなくなって、公認会計士とかの資格が要る仕事や、保険の勧誘員とかはできなくなる。

 信用情報が更新されるまで、七年はローンが組めず、クレジットカードも作れなくなって、新しい借金ができなくなる。


 今までのオカンは、生活費や子供の金まで使い込んで、更に借金までして、帝都で派手に遊び歩く生活をしていた。


 これからのオカンは、何もかも取り上げられて、過疎地の実家で、家業の農業を手伝う地味な生活をする事になる。


 まともな神経の働き者なら、当たり前の地に足のついた普通の暮らしだ。

 浪費家で怠け者のオカンにとっては、この世の地獄みたいなもんだろう。


 運転免許を持ってないオカンは、周囲に田んぼと畑しかない実家からは、まず逃げられない。

 裁判の日だけは、帝都に出てくるけど、そのまま逃げないように、義一(よしかず)伯父さんと礼二(れいじ)伯父さんが、ガッチリ捕まえている。


 裁判所で見たオカンは、別人のようにボロボロになっていた。

 地味な服を着せられて、化粧もしていなかったから、もしかすると、これが四十四歳と言う年相応の、素の状態なのかもしれない。

 目だけが異様にギラギラしていて、不気味だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ