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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第01章.新学期
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04.転校生

 自己紹介の順番が近付いてきた。

 前の席の茶髪野郎が、教卓の前に出てこちらに向き直った。


 俺は「選択ぼっち」なだけで、空気が読めなくてナチュラルに友達が居ない訳ではない。


 茶髪が、モデルかタレント並のイケメンで、こいつが前に立った途端教室の空気……特に女子の目の色が変わったのが、わかった。それに対して、男子が一瞬、殺気立ったのも、ひしひしと肌で感じた。


 塩屋さんは一番後ろの席だ。俺の席からは見えないので、反応は不明。

 競争率は高そうだが、好きになるのは、自由だ。

 是非とも、このイケメンに一目惚れして欲しい。


 「巴政晶(ともえ まさあき)です。春休みに商都(しょうと)から引越してきました。宜しくお願いします。それと、髪の色は生まれつきです」

 外見はよかったが、雰囲気は最悪だった。


 ぼそぼそと滑舌が悪く、全身に負のオーラを纏っていて、死んだ魚のような淀んだ目をしている。

 髪の色と男子の嫉妬でいじめられ、女子の醜い争いに巻き込まれて、もううんざり……ってとこか。どうせ転校の理由も、その辺にあるんだろう。


 馬鹿馬鹿しい。


 本人にとっては大変なことだろうし、不幸だろう。

 でも所詮、相手は同年代の子供だ。


 俺みたいに大人……それも自分の母親が敵で、隣人や同級生を守る為に孤独を強いられ、戦わなきゃならない訳じゃない。


 父ちゃんは、単身赴任。

 クソ兄貴は、オカンの味方で、つまり敵。


 祖母ちゃんは、三年前に亡くなった。

 祖父ちゃんは、今年の一月に倒れて入院。今は退院して、愛子叔母さんの家で介護を受けている。

 愛子叔母さんたち……都内に住む親戚には、これ以上迷惑を掛ける訳にいかない。


 俺の味方は、姉ちゃん唯一人。


 巴は少なくとも両親が味方だから、いじめられても、遠くに引越せたんじゃないか。


 「ハーフじゃなくて十六分の一だけど、こんな色です。脱色とかはしてません」

 巴は、ちょっと商都訛(しょうとなまり)のある発音でそれだけ言うと、席に戻った。


 前の学校で何の部活やってたとか、言わないんだな。


 入れ替わりに、同じ出席番号の女子が前に出る。

 本当は全然違うキャラなのに、明らかに巴を意識した「大人しくて優しくて家庭的な女の子」アピールをして、女子に引かれていた。

 普段の姿を知っている男子も、ニヤニヤしている。


 俺の番が回ってきた。

 「友田鯉澄(ともだりずむ)です」

 一応、小さくお辞儀して席に戻る。


 誰とも友達になってはいけない俺には、みんなと仲良くなる為に開示できる情報なんて、何もなかった。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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