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碩学の無能力者  作者: 髙津 央
第02章.日常

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11.可能性

 よろよろ、ふらふら。


 広大な公園にびっしり並ぶブースを、俺は()()もなく、彷徨(さまよ)い歩いた。

 見れば見る程、迷いが出る。


 これで喜ぶ姉ちゃんの顔が思い浮かばず、ブースを離れた。

 どこからか、ラジオの天気予報が流れてくる。


 今日の帝都は、天気に恵まれ、五月中旬並みの気温で云々(うんぬん)……


 道理で暑いと思った。

 人混みを吹き抜ける風が、気持ちいい。溜息をついて顔を上げる。

 業者の爺さんと目が合う。

 心臓を鷲掴みにされたような衝撃を感じた。

 思わず爺さんに駆け寄る。


 爺さんは、芝生の上に直接、半畳くらいの赤い絨毯を敷いて、座っていた。

 売り物はアクセサリー。

 爺さんの胸元では、銀のペンダントが揺れていた。


 挿絵(By みてみん)


 翼の生えた銀の卵……


 「あ……あの……こっこっこ……これっ……」

 緊張で言葉が出てこない。

 震える手で、爺さんの胸元で揺れる銀の卵を指差した。


 爺さんは、人の良さそうな笑顔を浮かべて、首を横に振った。

 「ごめんよ。これは売り物じゃないんだ」

 「あっあの、知ってます。かっ……かっ【可能性の卵】ですよね!?」

 「へぇ、よく知ってるね」

 爺さんは驚いて俺の顔を見上げた。


 魔術師の国際機関「霊性の翼団」は、魔法の専門分野毎の小集団に分かれている。


 【可能性の卵】はそのひとつで、魔力は持っていないが、魔術の研究で一定以上の成果を修めた功績や、知識の量を認められた学者……というか、賢者の集団だ。


 この近くだと、日之本帝国の最高学府・帝国大学の魔道学部教授が、持っている。

 元々は、魔法文明国に(まれ)に生まれる「魔力を持たない人」の目印だったらしい。


 帝大の公式サイトで見た。

 サイトに拠ると帝大には、【舞い降りる白鳥】の先生も在籍している。【舞い降りる白鳥】は、ガチの魔法使いで、術の解析や呪い解除の専門家だ。


 「おじいさん、帝大の先生なんですか?」

 「はははっまさか。(わし)ゃそんな優秀じゃあないよ。若い時分、ディアファナンテに住んでいただけだ」

 「スゲー……魔法の修行とか、してたんですか?」

 まだ、心臓はバクバク言ってるが、少し落ち着いてきて、ちゃんと質問できるようになってきた。


 ディアファナンテは、魔術士連盟「蒼い薔薇の森」本部がある魔法文明国だ。

 魔法文明国は、鎖国政策を()る国が多いが、アルトン・ガザ大陸のディアファナンテは、国際交流に力を入れている。


 近くに科学の大国バンクシアがあり、周辺国は両輪の国と科学の国。その地域の純粋な魔法の国は、ディアファナンテ一国だけ。

 国際政治とか難しくてわからないけど、一国だけぼっちを貫くのは無理だったんだろう。


 でも、そのおかげで、初心者向けの魔術士連盟「蒼い薔薇の森」ができて、現在はネットでも、魔術について色々と調べられるようになっている。

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用語は、大体ここで説明しています。

野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
【関連が強い話】
野茨の血族」 巴君のその後。
虚ろな器」 高校生になった友田君が登場。
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